【TSMCが進出した熊本に学ぶ】お蔭で見えた、日本の水道水源の実情
まえがき
この投稿は、TSMC進出を肯定/否定する意図で書いたものではありません。
進出によって地下水の汚染の可能性や地下水枯渇のリスクなどが叫ばれていることも認識しておりますが、TSMC進出前からの問題と混在しているものもあります。
今後、正確な情報の把握に努め、冷静に見てゆく必要がありますので、
今回は、これらを中心にまとめたものではなく、あくまで日本の水資源の事情にフォーカスできる事案としてピックアップさせて頂きました。
TSMCの熊本進出の背景
ご存じのように、半導体製造大手の台湾TSMCが熊本に進出しています。
背景の一つに電力と工業用水の入手性があります。半導体産業では大量の工業用水が必要であり、台湾では地下水の過剰なくみ上げで枯渇の問題が起きました。
TSMC熊本の1工場が使う水の量は、1日約1.2万立方メートルであり、半導体の洗浄工程などに使う方針です。単純計算で、TSMC1社だけで菊陽町の全人口3万人が家庭で消費する量を2~3割上回る規模となります。
水を求めてなぜ熊本に進出したのか。なぜ他の地域ではダメなのか。このことを理解するには、日本の水資源は全体で見ると必ずしも潤沢ではないことを理解する必要があります。
豊富とは言えない日本の水資源の現実
日本は水が豊富にあると一般的に思われがちですが、実はそうではありません。降水量が多いものの、急峻な地形が多く、島国であるため、降った雨はすぐに海に流れ出てしまいます。日本では約9割の用水を河川水に頼っていて、水不足になることもあるので、ダムが発達しました。
また、日本は世界の年降水量の約 1.4 倍である一方、年降水量に国土 面積を乗じ全人口で除した一人当たり年降水総量では、世界の一人当たり年降水総量の4分の1程度となっています。
日本では、水道の水源のうち、ダムに貯留された水、及び河川水・湖沼水が約4分の3を占めています。つまり、日本全体でみると降水量に左右される水源に頼っているのが現実なのです。雨が降らないとダムの水位が下がり水不足が問題になる地域があるのはその証です。
そして、その一人当たりの年降水総量が世界平均の4分の1ですので、日本は決して水資源が豊富な国とは言えません。
熊本の地下水の特性
一方で、地下水は水位変動が少なく、安定した水資源として利用されます。TSMCが進出した熊本県は約8割の水道水源を地下水でまかなう全国でも稀な地域です。
※水道水源が地下水に占める割合:熊本地域約100%>熊本県80%>全国平均約20% (熊本地域=熊本市、菊池市の一部、宇土市、合志市、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町の11市町村の区域)
水の量もかなり豊富で、『熊本市や菊陽町などの地下は阿蘇山の火山活動などで地下水がたまりやすい地層となっており、推計で琵琶湖の約1・6倍の貯水量がある』(熊本大の嶋田純・名誉教授(地下水水文学))とのこと。
ちなみに、熊本市の人口は74万人です。この人口の水を地下水だけでまかなっているというのは驚きです。
熊本の地下水のでき方と水道水の魅力
まず、阿蘇火山が約27万年前~約9万年前にかけて4度にわたる大噴火を起こし、火山灰が厚く降り積もってできた土壌は水が浸透しやすいです。
さらに、約420年前、加藤清正が多くの用水路を作り治水事業を行い、
これが多くの水田を作ることにつながった。水田は通常の土壌よりも水の浸透率が良く、白川中流域(大津町や菊陽町など)の水田では通常の5倍~10倍の水を吸収するといいます。
そして、熊本は、全国TOP10に入る降水量の多い地域です。
このトリプル効果により、熊本の地下水は豊富になったのです。
熊本市は「水の都」と呼ばれ、阿蘇外輪で降った雨水が熊本市で地下水として湧き上がり水道水の原水になるまで、約20年の歳月をかけて磨かれながら運ばれてきます。その間に、大地のミネラル分や炭酸分がバランスよく溶け込み、おいしく体にやさしい天然水になります。
JR熊本駅の新幹線口に設置してある水飲み場には「蛇口をひねればミネラルウォーター」とあります。こんなインパクト大の標語を考えついただけでなく、実際に市販のミネラルウォーターと水道水を対決させるという、
真面目な行政がぶっ飛んだ取り組みを行い、熊本市の水道水が市販ミネラルウォーターを凌駕した検査結果が示されています。
水田を活用した地下水かん養(水田かん養)の取り組み
熊本ではTSMCによる大量取水の影響を防ぎ、地下水位を維持するために、水田かん養が官民一体となって取り組まれています。
水田かん養とは、水田に水を張ることで地下水を補充する方法です。
大津町や菊陽町などでは白川中流域の農地に水を張って地下水かん養を進める事業が今年は5月からはじまり、補助金に倍増より今年度から参加する農家が大幅に増加、蓄えられる地下水の推定量が過去最多になることがわかりました。これに伴い、蓄えられる地下水の推定量は2789万トンとなり、去年の1.8倍に増加し、“過去最多”となる見込みです(KKT取材)
このように水田はかん養にとって大切なものですが、もともと熊本では、
国の減反政策の影響で、熊本地域の水稲作づけ面積は30年前の3分の2程度にまで落ち込んでいました。そこで、ソニーのほか、富士フイルム、サントリー、コカ・コーラなど地域の水を使う事業者には、かん養が義務付けられ、地下水取水ルールもあります。(当然、TSMCにも)これが組み合わされて熊本の地下水が維持されていることも、世界が目を付けた水を守る仕組みなのです。
熊本大・嶋田名誉教授は「TSMCの進出で地下水が枯渇することはないが、水田拡大などの保全策にも限界がある。自治体や企業、住民は、経済活動と地下水の維持について議論を深めるべきだ」と指摘している
熊本地下水枯渇の可能性について
日本の水資源の事情について熊本を事例に出して説明しましたが、
結局、熊本の地下水は大丈夫なのかも気になるところです。
この点を端的に分析する為、昨年からの行政・TSMC発表事項を下記の引用の通り纏めました。
地下水枯渇の可能性は低そうですが、今後、汚染が出ないかも含めて
冷静に見てゆく必要がああります。
身近にできること
このように、日本は水資源が豊富ではないという現実を理解し、地域ごとの水源の特徴を把握して大切に利用する必要があります。水の循環を理解し、ただ海へ流してしまうだけでなく、人間が消費することで資源の有効活用を図ることが重要です。
例えば、日本の貴重な水資源である水道水をできるだけ飲用することが挙げられます。ペットボトルの水を買うことに対し、環境にもお財布にも優しく、将来の水道事業の維持にもつながる大切な考え方です。
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