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#8 上限値がなければ、水道の蛇口で塩素は残り放題なのか

それにしても、水道法では上限値が決められていないのであれば
実際、日本では残留塩素の濃度はどのくらいなのでしょうか。

全国の水質調査結果を纏めたものはないので、個別に見てみました。
すると、全ては確認できませんでしたが、
多くの県で、厚労省の「おいしい水の水質要件」をもとに
残留塩素の上限の目標値を定め管理をしていることがわかりました。
それによると要件値は0.4㎎/L以下となっています。

都道府県において実際の水質検査結果はどうなのかを見ます。

まず、東京都の蛇口の水質検査結果では、
0.4㎎/Lが64%と最も多い結果でした。
東京都水道局HPにも、目標値は0.1mg/L以上0.4mg/L以下とありました。


また、千葉県を事例にした場合ですが、
残留塩素濃度の推移から、低減を進めていることがわかります。
こちらも0.4㎎/Lを上限値として管理されています。
※全てではありませんが、他の県も確認したところ
 検査結果はほとんどが0.4㎎前後となっていました。

ここまでのところをまとめると
残留塩素の上限値は法令で定められていないものの、
都道府県が目標値を0.4㎎/Lに設定、
実際の測定結果も、0.4~0.5㎎/L程度 
となっています。
とりあえず、残留塩素は残り放題ではないと言えます。

水道局の苦労話として
千葉県の「安全・おいしい水プロジェクト2021-2025」 にこんな記述が。

「集合住宅等にみられる貯水槽水道については、貯水槽水道地域巡回 サービスを実施し、適正管理の啓発に努めていますが、管理状態が良好とは いえない貯水槽水道も見受けられます。管理が適正に行われていない貯水槽水道で は、残留塩素濃度が大幅に低下し、水道水としての安全性が損なわれるおそれが あるため、残留塩素の低減化は慎重に進める必要があります」

これは、別の言い方をすると
水道水はおいておくと、時間とともに抜けてなくなってしまうので、
マンションの貯水槽などでは、
水道法の基準である残留塩素濃度0.1㎎/ℓを維持しにくい。
(殺菌力が落ち雑菌が繁殖しやすい状況になる)
よって背反だけ見て塩素を少なくすることは難しい 
ということです。

前の章で、欧米各国のミネラルウォーター消費量は
日本よりかなり多いことを見てきました。(イギリス、カナダ以外)
先日、某市役所の水道事業関係者にお話を伺う機会がありましたが、
残留塩素を適正で一定の値に維持するのは、細かい管理が必要である為、
水道水は飲用を中心に考えていない国が多いだろう
ということでした。

一方で、イギリスとカナダなどのミネラルウォーターの消費量が少ないのは
興味深いデーターなので、今後の章で考えてみたいです。

少しわき道にそれましたが、
日本の水道の蛇口レベルでの残留塩素の実態は0.4~0.5㎎/Lなので、
諸外国より一概に高いとは言えない状況です。

Journal of Water Resource and Protection, 2020, 12, 714-728

この章では、末端の水道蛇口レベルのことばかり注目してきましたが、
上流にあたる浄水場で塩素を投入すると、有害な副生成物も発生します。
これも、安心安全のポイントになるので、次の章でみてゆきます。

《コラム》
ポッド型浄水器で塩素を除去した浄水を冷蔵庫に保存しておくと
ぬめりや、冷蔵が長くなるとカビまで発生したことがあります。
買った浄水器の説明書を読むと『濾過した水はナマモノと同じ扱いだから
1日で使い切ってください』
と書いてありました。
浄水フィルターで塩素を除去して放置しておくと、
雑菌が繁殖
してこうなるんですよね。

また、水道法で厳しい基準値が設けれらている有害な亜硝酸態窒素(0.04㎎/ℓ以下)も、残留塩素と接することで検出値限界以下にまで減少することが確認されています。(出所:大阪市水道局調査)
一概に日本の水道水の塩素が多いと言ってデメリットばかりを並べるのは
伸長になった方が良いということがわかりますね。

浄水場から離れたご家庭や、集合住宅などで、
水道水から雑菌が出た!なんてことにならぬよう
水道局の方が努力されていることがわかった2つの章でした。

つぎの記事はこちら


#暮らし #水道水 #おいしい水 #ウォーターサーバー #急速ろ過 #緩速ろ過 #ミネラルウォーター #生物浄化法 #水道事業