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起業家精神が生む企業成長 DXコンサルが描く"その先"

顧客の要望と真逆の提案をしたら「本質的」と評価された。

Fabeeeのゼネラルマネージャー(GM)、阿部雅文さんは、そんな経験から、企業の課題解決に深く関われるDX支援の可能性に気づいた、と振り返ります。

コンサルタントとして、メンバーとともに「バンソウDX」を中核事業に育ててきました。思いを問うと、返ってきたのが「組織の中の起業家マインドを高めたい」。

どういうことなのか、その意味を聞きました。

「事業とは何か」。痛感した力不足

撮影場所:SPACES新宿

ー新卒で採用されたIT会社では入社5年目で事業部長に。新規事業を任されますが、自分の力不足を痛感します。

阿部:
就職情報サイトを比較するサイトの立ち上げと運営の新規事業を任されました。短期で利益を出すよう求められる環境で、でも期待に応えられる結果をなかなか出せませんでした。自分はそもそも、事業とはどういうものかすら分かっていなかったんだと痛感しました。

「型」(フレーム)が身についてないから、目の前の数字に届くように行動量でカバーするのが精一杯。創造性や独自性が発揮できるのも、あらかじめ「型」という基盤があってのもの。これを身に着けないことには伸びないと、コンサルティング会社に転職しました。

転職して最初の半年間でフレームに関する研修を受けたので、 それをベースに支援の経験を積んでいけばおのずとスキルも上がると考えていました。ただ、主担当だった自動車販売店のウェブマーケティングや営業の支援は、メーカーが販売の宣伝も主導している構造で、自分の裁量で仕事をしている実感がなかなか持てませんでした。

物足りなくて、ベンチャー企業の事業開発やウェブ周りの支援にも自ら参加しました。こちらのほうが裁量が大きく、ヒリヒリした緊張感で仕事ができたので、ずっと楽しかったです。
ただ、このまま同じことをしていてもこの先広がっていくことはないな、という思いもありました。入社から2年ほど後、次を見据えて転職エージェントに相談すると、佐々木淳CEOを紹介されました。週末、わざわざ僕に会いに来てくれて、2回ほど語り合いました。

僕が当時仕事で手掛けていたことを話すと、「もっとこうしたら? こういう可能性があるんじゃない?」とフレームを超えた助言をしてくれる。当時やっていた、フレームに忠実なコンサルティングと比べたら、発想が自由で新鮮でした。

僕は1社目の新規事業で結果が出せなかったことが、ずっと無念だったんです。だから将来、チャンスがあれば自分で起業したいと思っていました。そのことを話すと、佐々木さんは「資金調達して、新しいものを作ろうと思っている。責任者としてやってほしい」と。佐々木さんみたいな経営者の近くにいられて裁量が大きい環境だし、自分のアイデアを形にしやすいかもしれない。そう考えて、Fabeeeに入社を決めました。

要望と真逆の提案が「本質的」と評価。気づいた可能性

撮影場所:SPACES新宿

ー入社後、会社が事業の軸を模索する中で、阿部さんたちは、DX支援という新たな事業の可能性に気づき、開拓していきました。

阿部:
事業開発の担当として入りましたが、2021年に新型コロナの影響で営業担当に切り替わりました。最初はデータサイエンティストによるデータ分析を売っていくつもりでしたが、反応が今一つ。

そんな時、企業向けのDX推進のオンラインワークショップの依頼をいただきました。ワークショップを主導する中で、デジタルでアイデアを形にしていくDX支援に手ごたえを感じるようになりました。
バンソウDXの柱は大きく二つあって、一つは、DX事業のコンサルティング。僕はコンサルタントとして、顧客企業に常駐し、会議や雑談などを通じて、マーケティングの戦略や新規事業の創出に向けたコミュニケーションとリサーチ、提案をしています。今は九州地方を中心に、老舗から金融機関まで幅広い支援をしています。

もう一つはSalesforceの製品を活用したDX支援です。
バンソウDXチームのプロジェクトマネージャーの冨塚辰、エンジニアの柴田恭輔秦涼人を中心に、顧客企業のビジネスモデルに合わせ、製品を活用したカスタマイズを提案、開発しています。

同社の製品は自社の課題や戦略に沿ってカスタマイズしやすいのですが、ツールを使って自社でどんな課題を解決したいのか、どういう会社になっていたいのか、ユーザー企業でビジョンやゴールを明確に
していないと、せっかく導入したのに効果が得られないことが少なくありません。だからこそ、豊富な知識に基づくコンサルテーションや開発のニーズが高いのです。

僕たちがこの領域に参入したのは、別の狙いがあります。基幹システムの支援を入り口に、その企業の潜在的な事業課題をさらに深く探り、その後のフェーズでの支援につなげることができるメリットが大きいのです。

2024年1月からはSalesforce日本法人のコンサルティングパートナー(※)の契約を結んだことで、同社からご紹介いただいた企業の導入支援がさらに増えています。

とはいえ、僕たちにこうした狙いやSalesforceの知識が最初からあったわけではありません。たまたま紹介いただいた導入企業へのプレゼンテーションで、顧客のもともとの要望とはむしろ、真逆の内容を提案しました。その方法がこの会社にとって合っていると考えての提案だったのですが、「そんな本質的な提案をしてくれたのはあなた方だけです」と評価とともに、発注をいただきました。

この時、僕たちも、企業の本質的な課題に関われるDX支援の可能性に気づいたんです。これが「バンソウDX」の先駆けです。

※編注:Salesforceに関する豊富な知識と経験をもとに、コンサルティング、システム設計、導入、システムインテグレーション、定着化などのサービスを提供するパートナー。パートナー契約にあたっては、認定資格の取得などが必要。「インプリメンテーションパートナー」とも呼ばれる。(同社資料などを基に作成)

「考えもしなかった」提案で関係築く「チャレンジャー」

撮影場所:SPACES新宿

ー顧客から言われた「本質的な提案」とはどういうことか。阿部さんは「チャレンジャー・セールスモデル」という言葉を引き合いに語ります。

阿部:
顧客企業に向き合う中で、「チャレンジャー・セールス・モデル」というアプローチを大事にしてきました。

「チャレンジャー・セールス・モデル」とは、営業担当者を5つのタイプに分け、その営業成績を比べた調査で、最も高い成果を上げていた「チャレンジャー」(論客タイプ)のことです。このモデルでは、顧客と仲良くなり、ニーズを理解して契約につなげる従来型の「リレーションシップ・ビルダー」(関係構築タイプ)をも上回る成果を上げていました。

「チャレンジャー・セールス」が他の営業担当より抜きんでている要素の一つが「指導」です。顧客自身が気づいていない価値を見出し、時には顧客の仮説を覆すような、「考えもしなかった」と言われる視点を示すことで、対等な関係と深い信頼を構築していくとされています。

先ほどお話しした、顧客企業の要望と真逆の提案が「本質的」と評価をいただいたのは、まさに「チャレンジャー・セールス」の実践が功を奏したのだと思います。顧客と密接に連携しつつ、顧客と異なる視点を持てるほど深く考えたからです。時には厳しい決断を迫ることも辞さない覚悟が求められますが、正解がない中で具体的な「変革」をもたらすためには欠かせない姿勢だと考えています。
この「チャレンジャー・セールス」に共感できる人が、僕たちと一緒に働いてくれたら嬉しいです。

顧客を気にせず好きにやっていいという話ではありません。ただ、自分なりにこうしたほうがいいと考えて顧客に向き合い、提案、挑戦ができる、主体性のある人と一緒に働きたいのです。

試してみて、うまくいった、いかなかった、という経験も大事です。失敗し、顧客からクレームを受けることもあるでしょう。そういう時は、僕たち役職者が解決します。

Fabeeeで働く人は、そういうことをやっていいんだ。提案していいんだ。やりたいって言っていいんだ。ミスをしてもいいんだ。そう思って、来てほしいです。

「バンソウ」で育みたい組織の起業家マインド

撮影場所:SPACES新宿

ー「バンソウDX」で、顧客の事業だけでなく、組織の成長にもつながってほしいと、阿部さんは言います。

阿部:
DX支援の大半は、人や組織に深く入り込む、泥臭いプロセスです。僕たちはあくまで外部から支援する「黒子」に過ぎません。

ただ、お客様と一緒にDXを推進していく過程で、事業だけでなく組織の成長にもつながってほしいと考えています。さらに言えば、先方社員の方々が「起業家マインド」を持つようになってほしいという思いがあります。社外の、しかも若輩者の僕たちがこう考えるのはおこがましいかもしれませんが、社内で起業家マインドを持った人たちから新しいアイデアやプロジェクトが生まれれば、最終的には企業全体の成長につながると信じています。

ここでいう「起業家マインド」とは、刻々と変化するビジネス環境でも諦めずにコミットし続けることです。決まったレールにそのまま従うのではなく、自分でレールの方向を考え、選び、チャレンジする。DX支援を通じて、そんな行動を取る人が増えるように支えていければと思っています。

僕たちの思いはまだ道半ばですが、手応えを感じたこともあります。
1年ほど前から支援している創業90年を超す消費財企業で、幹部の肝いりで新しいマーケティング戦略を展開しています。一緒にゼロから変革を進めてきた担当の方々が、最近要職に相次いで抜擢されました。

僕たちがこの企業に支援に入った当初は、変革に消極的な空気が強く、行き詰ったこともありました。一方で、膠着を打破するために、あちこちに掛け合い、前進に汗をかいてくださった方々がいました。彼らの姿勢や実績が評価され、要職に抜擢されるという結果につながったのだと思っています。こうして変革に向けて主体的に動く、起業家マインドを持つ方々が組織や社会で評価されることも、僕たちのミッションの一つだと改めて感じました。

これからは、価値をしっかり出せるよう、顧客に必要なリソースや手段をすべてFabeeeで提供できるようにしていきたいです。優秀な人や企業でも、カネ、ヒト、モノがないと新たなチャレンジはできませんから。

撮影場所:SPACES新宿

【略歴】
阿部 雅文:北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業に入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後戦略コンサルティングファームで多業種のデジタルマーケティングや事業開発のコンサルティング業務の経験を積む。2021年5月にFabeeeに入社、商社やメーカーのDXコンサルタントと事業開発支援を担当。


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