0710:不実証広告規制の理由表示
通販新聞は業界利益を代表して消費者庁に批判的な記事を掲載することが多い。それは必ずしも難癖というわけではなく、一定の理を突いてくる場合がある(筋が悪いこともある)。
今回、通販新聞が行政不服審査会の付言を報じる形で、不実証広告規制の理由表示への疑義を記事にした。
門外の方には、三点、説明が必要だろう。
まず第一点、行政不服審査制度について。行政処分に不服がある場合、裁判所に訴訟を提起する道と、行政不服審査会に審査を申し立てる道がある。裁判は厳密だが費用もかかる。行政不服審査は行政機関自体(ただし行政処分に関わった部署とは別のところが担当)があらためて処分の過程をチェックするもので、無料だ(もちろん提出する文書を行政書士等の専門家に託す場合はその費用は必要になる)。もうひとつ、裁判所は違法性しか審理しないが、行政不服審査は違法性の他に不当性(法律違反ではないが妥当でないこと)も判断できる点で、幅が広い。
第二点、不実証広告規制について。通常行政処分の根拠となる違法行為の認定のためには、行政側が立証責任を負う。しかし誇大広告については、逆に企業側に広告内容が科学的・合理的に正しいといえる立証責任を負わせ、立証できなければアウトとすることが認められている。この辺りは以前解説したのでそちらをどうぞ。
第三点、「理由表示」について。行政の行うべき手続一般を規律する行政手続法に以下の規定がある。
当たり前の話ではあるが、行政処分のうち処分対象者にとって不利益となる処分を下す場合は、その理由を示す必要があるというものだ。この理由付記が不十分な場合、裁判所によって行政処分が取り消されることもある(結論は妥当であったとしても手続違法なら×ということ)。
これを踏まえ、今回の記事で取り上げられている理由付記を実際に確認してみよう。
https://www.caa.go.jp/notice/assets/fair_labeling_190704_0012.pdf
この文型は不実証広告規制による処分通知の定型句で、他の事例でも「合理的な根拠を示すものであるとは認められないもの」とのみ記載され、具体的に何がどうとは記されていない。「光触媒でウィルス等を化学的に分解する機能を持ったマスク」の根拠がどのように示され、それがどのように合理的と認められないのか、ここから窺えないわけだ。
この点について、記事に引用された審査会付言は「理由が理解しやすく記載されているとは言い難く、記載が具体的でないことで審理手続の長期化を招いた」としている。まあ、そうだろうなあ、と思う。しかし審査会自体「不利益処分の理由の提示」を「満たしていないとはいえない」としているとおり、これが直ちに手続違反となるかどうか、最後は裁判所の判断を待つことになる。
広告が取り扱う商品やサービスは消費者市場の全方位であり、ひとつひとつの行政処分に際して「どこがどう合理的でないか」を言語化することは際限のない悪魔の証明であり記述し難いことは、元実務家としてよく理解できる。その一方で、行政手続法の趣旨を踏まえると、記述が処分対象者に対して処分理由が理解できる(必要なら反論できる)程度に詳細であるのが望ましいとも思う。
大正製薬は訴訟へ進むとのことだが、製品の科学的根拠そのものを問うのか、処分通知の理由付記の手続不備による取消を求めるのかは分からない。個人的には、両方を問うて欲しいと思う。
--------以下noteの平常日記要素
■本日のやくみん進捗
第1話第22回、4,752字から進まず。
■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積311h24m/合格目安3,000時間まであと2,689時間】
実績109分、動画2本と復習2回分。
■本日摂取したオタク成分
『ひきこもり先生』第1話、予想より重たい物語作り。佐藤二朗は名優よのう。『NIGHT HEAD 2041』第3話、本作って微妙にホラーテイスト漂ってるね。黒魔術の呪いが解けないとか、昭和のこっくりさんヒステリーの構図。
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