グレアム・リネハンさん 英国議会上院での声明文
2021年3月9日、英国のコメディ脚本家であるグレアム・リネハンさんは、英国議会上院において、ジェンダー・アイデンティティ・イデオロギーの席巻が人々に引き起こしている問題について語り、翌日にその全文を自身のブログで公開しました。
こちらの日本語訳文は、APP国際情報サイトさんが訳した連続ツイートを許可の上で掲載しています。
2021年3月10日
私の名前はグレアム・リネハン。ライターです。いくつかのコメディ番組の脚本を書きましたが、その中で最も有名なのは『Father Ted』でしょう。しかし本日、短い時間ながら私の話を真面目に受け取ってくださるようお願いします。と言うのも、これ以上にはないぐらい重大なことが問題になっていると思うからです。
およそ4年ほど前、私はフェミニストたちが自分たちの権利と子供たちの権利のために立ち上がったことで、いじめられ、嫌がらせされ、沈黙させられているのを目の当たりにしました。私はツイッターを通じて、女性たちに対する全面的な攻撃、彼女たちの言葉、尊厳、安全に対する全面的な攻撃と思えるものに注意を向けることにしました。また、私は、弱い立場の子供たちが、深刻な長期的影響をもたらす医療の道へと拙速に追いやられているのを見ました。私の立場はとてもシンプルです。誰もがこれらの問題について話すことを許されるべきだということです。それどころか、私はそうすることが道徳的な義務だと信じています。
私が話しているのは次のような問題です。タビストック〔イギリスの医療機関で国民保健サービスの一部。子供の性別移行治療を推進〕のスキャンダル。ストーンウォール〔イギリス最大のLGBT団体でトランスイデオロギーを推進〕が平等法の本質についてイギリス全土の機関に提供してきた、混乱と誤解を招く助言。女子スポーツに男性が参加する問題。女性刑務所やレイプクライシス・センターにおける男性の問題。これらすべてにつながる基本的な保護原則の破壊。フェミニスト、医者、教師、学者、作家、その他誰であれ、ジェンダー・アイデンティティ・イデオロギーというアメリカ仕込みの流行理論に疑問を抱く人々を、黙らせ攻撃していること。
この議論に参加したことで、私は一連の嫌がらせキャンペーンの対象となりました。その中には、執拗な法的措置、警察のたびたびの訪問、私の立場を歪める多くの雑誌記事、自宅に直接届けられた脅迫状、妻の会社の住所がネット上で公開されたことなどが含まれています。いずれも私を黙らせるためのものであり、このイデオロギーが「性別に基づく諸権利(sex-based rights)」に与える影響について多くの女性が抱いている合理的な恐怖を人々に知らせないためのものです。私は仕事も失いました。私の経済的地位が突然不安定になったことの結果、私の結婚生活は厳しい状況に置かれ、妻と私が最終的に別居することに同意することになりました。
私は喜劇を書きたいのであって、喜劇の中で生きたいのではありません。しかも、これは非常に危険な喜劇です。子供たちの健康と幸福が常軌を逸したイデオロギーの犠牲にされているのに、ミソジニスト[女性憎悪または女性差別をする者]の活動家たちがインターネット上で、女性たちの発言を熱狂的かつ執拗に取り締まっており、各種プラットフォームはそういう彼らに積極的に発言の場を与えながら、その一方で彼らによって攻撃されている女性たちから発言の場を奪っているのです。
しかし、議論を妨げているのはプラットフォームやそのユーザーたちだけではありません。3年ほど前、私は、ストーンウォールに宛てて、セックスとジェンダーに関する対話の毒々しさを緩和させ、このテーマについての意見の多様性を認めるよう求めた手紙の最初の署名者たちの一人になりました。手紙は、同性愛者で長年のLGBT活動家であるジョニー・ベストによって書かれ、これらの最初の署名者の大半は、ゲイ、レズビアン、トランスの人々でした。
私たちが望んでいたのは、女性たちが性別に基づく権利のために立ち上がったことで死やレイプの脅しを受けることに終止符が打たれることでした。この目的のため、私たちはストーンウォールに対し、その現在の方針について議論したり、反対意見を述べることを希望する人々をトランスフォビック[トランスジェンダー憎悪的]として悪魔化するのではなく、落ち着いた議論の雰囲気を醸成することを約束するよう求めました。ストーンウォールはただちにこの訴えを全面的に拒否し、女性が自分たちの権利のために立ち上がったことがトランスの権利への攻撃だという不誠実なレッテル張りをつづけました。嘆願書には1万1000人以上もの人々が署名しており、その多くは同性愛者の男女で、自分たちの名のもとに行なわれていることに絶望しています。
J.K. ローリングは、トランス問題に関するこの原理主義的見解によってひどい目に遭った最近の、そして最も有名な人物にすぎません。部分的にグーグルから資金を得ている『ピンク・ニュース』という雑誌は、彼女を攻撃する記事をわずか1週間で42本も掲載しました。つまり1日に平均6本です。しかし、いじめられ、中傷され、嫌がらせを受けて黙らされているさらに何千人もの女性たちがいます。これらの女性たち――これらの人々のほとんどが女性です――は有名人ではないので、J.K. ローリングや私が耐えてきたような中傷キャンペーンや狙い撃ち的な嫌がらせに対して、はるかに脆弱なのです。
ここに在席しておられる方の中で、そもそもJ.K. ローリングの発言のどこがトランスフォビックであるか言える人はいますか? どなたか、彼女による何らかのトランスフォビックな発言を示すことができますか? できません。なぜならそんなものは存在しないからです。家庭内虐待のサバイバーとして、彼女は、弱い立場にある女性や子供たちにとっての女性専用スペースの重要性について感動的に書き、市民生活の多くの分野で「女性」という言葉が抹消されていることに不満を表明し、私たちがかつてなくミソジニックな時代に生きていることを(私見によれば正しく)指摘しただけです。
彼女がトランスフォビアである証拠を出す代わりに、何百ものユーチューバー、ツイッターのトロール、BBCを含む主流メディアは、毒々しい嘘をまき散らしました。その目的は彼女の名前を汚すことであり、勇気を出して彼女の懸念に共感するかもしれない他の多くの女性たちへの警告になることを意図したものです。
女性たちに対するこの沈黙の押しつけは、私がこの闘いに参加した主な理由です。ジェンダーの話題が厄介であることを重々承知していましたが、もともと政治的な性格なので、このような悪質なミソジニーに直面して黙っているわけにはいかなかったのです。他の人たちも、何が起こっているかを知れば声を上げるだろうし、われわれの相手が必死に避けたがっている討論を引き起こすことができるだろうと、私は考えていました。
しかし私は今、自分が思っていたよりもずっと巨大な野獣に直面していたことに気づきました。これらのプラットフォームは議論に枠をはめ、自分たちのルールに従うことを拒否する者を差別者として追放します。その結果、多くの人々が私のことを偏狭な差別者だと思い込んでいます。これらの人々は、J.K. ローリングをはじめ他の多くの左派女性、リベラル派女性、進歩派女性たちに対しても同じように思い込んでいます。
もしJ.K. ローリング――その仕事と財産の多くを弱い立場の人、いじめられ忘れられ虐待された人のために捧げてきたこの女性――をトランスフォビックだと信じているなら、あなたは魔法にかかっているのです。男性が接触型スポーツを含むスポーツで女性と公平に競争できると信じているなら、あなたは魔法にかかっています。一部の男性が女性や子供たちに近づくためにどんな極端なことも辞さないことを信じられないなら、魔法にかかっているのです。3歳という幼い子供たちが、その自然な思春期を停止して生涯にわたる医学的措置――性別違和の治療としての有効性に関してほとんど何の科学的エビデンスもない措置――に自分を置くことになる行為に本当に同意することができると信じているなら、あなたは魔法にかかっているのです。
SNSは、考える能力をすべての人々から奪っている一種の「鏡の国」をつくり出しました。ツイッターで私の最後となった発言は、ラクダの背中を折った最後の一藁のようなもので、それは単に「男は女ではない」というものでした。「男は女ではない」がヘイトスピーチになる世界は、カオスの瀬戸際にある世界です。公の言論がシリコンバレーの一握りの男性グループの気まぐれに依存しているこの逆さまの世界では、フェミニストは炭鉱のカナリアのようなものです。アメリカの大学で始まったジェンダー・アイデンティティ・イデオロギーは、大衆メディアによって無批判に広められ、SNS企業とそのユーザーたちが強力に推し進めているのです。
人々は、自分たちがこのイデオロギーにどれだけ洗脳されているかを理解していません。それに反対する女性たちは、必死に声を上げようとしています。今日、私といっしょにここに来ているヘレンはその数千人の一人にすぎません。
自分のセクシュアリティがトランスフォビックのレッテルを貼られるのを恐れている若いレズビアンたちの話を聞いたことがありますし、子供たちの大好きな作家〔J.K.ローリング〕が自分たちの死を望んでなどいないことを、取り乱した子供たちに伝えられないセラピストの話を聞いたことがあります。トランスの若者グループにおいて若い女性たちが年上の男たちにグルーミング[親切にふるまって相手を信頼させ性的な行為に誘導すること]されているという、脱トランスの人たち(detransitioners)の話を聞いたことがあります。
私が聞いてきたこれらのことをあなたがたが耳にしていないのは、議論がトランス権利活動家たちによって形成されているからです。理性的な議論や民主的な討論の代わりに押しつけられているのは、「議論はいっさいしない(No debate)」「トランス女性は女性です」といったマントラであり、議論抜きでこっそり通された諸政策であり、トランスの殺害が蔓延しているというインチキな統計であり、政治的目的のために卑劣に利用されている自殺の脅しです。
議論は崩壊しています。女性の権利は剥奪されつつあり、子供たちは安全ではないのに、それについて話すことが許されていません。
本日、このような機会を与えてくださったことに改めて感謝申し上げます。ここで私が提示した問いに答えてくだされば幸いに思います。
出典:https://grahamlinehan.substack.com/p/full-text-of-my-house-of-lords-statement