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女性の権利を否定するイギリス緑の党

トランスジェンダリズムが深く浸透した結果、英国の緑の党は今、生物学的女性(female)の権利を否定する方向に、大きく急速に動いている。

ジュリー・ビンデル
『スペクテーター』2021年3月8日

 この週末に開催された緑の党の春季大会で、性別(sex)に基づく女性の権利保護を党の方針に導入しようとする動議(E01)が否決された。なんと、521人中289人の代議員が、被抑圧集団を記す党のリストに生物学的な女性を含めない、と投票したのである。

 この動議の目的は、緑の党の「私たちの権利と責任に関する方針」に単にあるパラグラフを追加するだけのものだった。動議の内容はこうだ。

「現在、私たちのポリシー・ステートメントは、他の8つの特性(年齢、障害、ジェンダー適合、性的指向、人種、妊婦/母親であること、宗教/信仰、結婚/市民パートナーシップ)をサポートしているが、主として女性を対象とした性差別(sex discrimination)についてはサポートしていないので、これは性別(sex)という保護特性を含めるためのものである……」。

 この動議が否決されたのは、要するに、女性が生物学的女性であることを理由に男性の抑圧の対象となっていることを認識することが「トランスフォビック」であるとみなされたからである。

 ロンドンを世界で最も「トランス・インクルーシブ」な都市にしたいと宣言している緑の党の党首シアン・ベリーは、これを勝利と捉えているようだ。投票後の一連のツイートの中で、ベリーは次のように述べている。
「動議E01は敗北した。私の党はインクルーシブ(包含的)な女性の権利に賛成投票した。誰かが大泣きしている。ありがとう緑の党!」。 
 ベリーは「インクルージョンと優しさに一票を!」と締めくくった。

 しかし、この動議を否決することで、緑の党は、生物学的な性別を保護特性に含めた2010年の英国平等法に事実上反したことになる。緑の党は、「インクルーシブ」になることを急ぐあまり、人口の51%を排除することになってしまったのだ。

 この会議で可決された反女性的な動議としては、トランスの人々が医療介入の必要なしに自らを異性として宣言できるようにするセルフIDの支持や、トランスである両親が子供の出生証明書に父親、母親、あるいは単に親として書き込むことを認められるようにすること、などがあった。フレディ・マコーネルのケースのようにである。フレディはトランス男性で、自分が生んだ赤ん坊の法的な「父親」になることを望んでいる。

 女性の権利に関する緑の党の記録は、不名誉なものだ。2019年にその地域評議会(GPRC)は、2人の新しい共同議長の任命を発表したのだが、その際、彼らを「自認が非男性の共同議長(女性)」と「自認が非女性の共同議長(男性)」と記述した。

 同党は、「共同議長が『男性』と『女性』でなければならないと規定することは、ノンバイナリーやその他のアイデンティティを持つ人々を排除することになる。私たちはその地位が誰にでも開かれたものであってほしい」と説明した。レズビアンを排除しないよう、「非男性・非異性愛」という表現も入れるべきなのではと私は質問したが、回答は得られなかった。

 緑の党の指導者たちは、長い間トランス・タリバーンに屈してきた。緑の党の元党首であるキャロライン・ルーカスを例に挙げよう。2016年以前のルーカスは、売買春への需要を生み出すのを抑止する方法として、セックスへの支払い(買春)を犯罪とするフェミニストのキャンペーンを断固として支持していた。ルーカスは2008年に私に、性産業は女性を搾取するものであり、平等を阻むものであると理解しているので、性産業を廃絶したいと語っていた。しかし2016年、ルーカスはトランス活動家のパリス・リース(売春廃絶運動をするフェミニストは上流階級で堅物の白人女だという見解の持ち主)に諭され、一転してリースと対面することを自分から申し出て、それ以来、ピンプや売春店のオーナー、買春者を非犯罪化するキャンペーンを支援するようになっている。

 私は、E01が否決された数分後に、緑の党執行部の現役メンバー(名前は伏せるよう頼まれた)と話をした。彼女の話によると、「女性は緑の党から大量に離脱することになるでしょう。かなりの数の人にとって、これは最後の藁だったのです」。

 「地球は燃えているんだ〔地球温暖化のこと〕」と別の党幹部は私に言う――「いまいましい代名詞の話よりも、そのことにもっと注意を払うべきだと君も思うだろう」。

 別の幹部は、この問題を取り上げてくれたことに感謝しつつ、「あなたのツイートに『いいね!』を押すだけでも党から破門されてしまう」と語った。

 緑の党は、嫌がらせ集団に屈することで自滅しつつある。シアン・ベリーのような人々は、極端なトランスジェンダー・イデオロギーが、進歩的な政治を装った単なる女性差別であることを認識しようとしない。昨年、スコットランド緑の党の国会議員(MSP)であるアンディ・ワイトマンは、私が講演した女性の権利に関する公開会議に勇気を持って出席した後、除名の脅しを受けて党を辞めた。ワイトマンは、党が「合意された路線から少しでも外れることに検閲官のように非常に敏感だ」と非難した。

 緑の党の元候補者で偉大なフェミニストの作家でありジャーナリストであるビア・キャンベルは、衝撃的でおぞましいエイミー・チャレナー事件〔緑の党の副党首候補者だったチャレナーの父親が性犯罪の常習犯だったにもかかわらず、そのことを隠してチャレナーの選挙活動の責任者になっていた事件.  チャレナーはMtFトランスジェンダー〕について黙っていることを拒否したことも一因となり、昨年、懲戒処分を受けて党を辞めた。

 常軌を逸した反女性的なトランスジェンダー・イデオロギーを何年も甘受してきたせいで、他にもかなりの数の女性が離党するに至っている。残る疑問は、なぜ彼女たちがこれまでこんなに長く留まってきたのか、ということだけだ。

翻訳:TB