能曲目『道成寺』のあらすじ
フェリシモミュージアム部と京都観世会館のコラボレーションによって生まれた「幽玄の物語を追体験 能装束リバーシブルハンカチの会」。
〈道成寺〉デザインの元となったお話をご紹介します。
道成寺の鐘供養
昔、紀伊の国に道成寺という寺がありました。道成寺ではある事情で吊り鐘がありませんでしたが、時が経ち吊り鐘を再興することになり、鐘供養が行われることになりました。
道成寺の住職は、鐘供養を始める前に寺の僧侶や寺男たちへこう言い伝えました。
「この供養をする間、どのような女性が来ても絶対に入れてはならぬ。」
寺に現れた謎の白拍子
鐘供養の準備が進む中、一人の白拍子の女性があらわれました。寺男は住職のいいつけどおり、中には入れないと白拍子の女性に伝えますが、女性は寺男にこう言いました。
「鐘供養のため、私に舞を舞わせてほしい。」
この言葉に寺男は独断で供養の場に白拍子の女性を招き入れてしまいます。鐘供養の場に入り込んだ女性は独特の拍子を踏み、舞いながら吊り鐘に近づくと中に入ってしまい、吊り鐘を落としてしまいました。
道成寺に伝わる伝説
ことの次第を聞いた住職は、古くから道成寺に伝わる恐ろしい伝説を語り始めます。それはこのような話でした。
その昔、真砂の荘司という男がいました。
男には一人娘がいましたが、その娘が毎年家にやって来る山伏に恋をしてしまいました。
娘は山伏に夫婦になってほしいと迫りますが、山伏は修行中であったということと、娘に恐れを感じ逃げ出してしまいます。山伏は道成寺に逃げ込み、鐘の中にかくまってもらいました。
山伏を追って道成寺にやってきた娘は、怒りのあまり毒蛇の姿になっていました。娘は吊り鐘の中に隠れている山伏を見つけ、吊り鐘ごと中に隠れていた山伏を恨みの炎で焼き殺してしまいました……。
住職の話を聞いた僧侶や寺男たちは、娘の執念は未だ残っているのだと感じ、ご祈祷をあげました。鐘を引き上げることができましたが、鐘の中から蛇の姿に変身した女性が現れたのでした……。
この後どうなったかは、ぜひ能の舞台でお楽しみください。
フェリシモミュージアム部 × 京都観世会館
#はじめての能シリーズ