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ゴーストバスターズ ~ゴースト障害と○○さんへ~

こんにちは。
時計の話は横に置きまして、毎度月イチのいっぷく話です。

冒頭は、ご経験があった方は、懐かしく思う事象かと思います。
本題は、ひとりの方に向けて、思い出を綴っています。

わたくしごとになりますが、
初秋の夜長にでも、おつきあいくださいませ。



昭和の50~60年代、かじりついて見たテレビ。
ブラウン管に映し出される画面にこんな不思議がありませんでしたか?


ゴースト障害(※)

テレビ画面が、二重、三重にズレて映る現象、障害です。
実際にズレている画面は「ゴースト障害」などの検索で見れると思います。


当時、どこでも発生してましたが、都内のおおかたの原因は、
高度経済成長の勢いから始まった、高層ビルの乱立による電波障害でした。

東京タワーから届く、本来の電波の受信に合わせ、
高層ビルなどの高い建造物で反射した電波も受信され、
その電波間の遅延により、起こる画像の障害になります。


自分の家も、一時期、これに悩まされました。
発生すると、見ててイライラしましたねえ。
テレビのチャンネルをガチャガチャ変えたり、スイッチをオンオフしたり、
頭や横を叩いたり(笑)。
しても変わらず(あたり前)。
うちの原因は、当時建設された池袋のサンシャイン60のようでした。

結構、大きな社会問題になり、造られる建造物の向きや形状の改善、
壁構造に電波を吸収する材料を使うなどの改善が図られました。
ゴーストキャンセラーのような外付け機器もあったと思います。


昭和の時代ならではの出来事。
地デジになった今では、このイライラも笑い話でしょうね。



さて、本題はここから。
今から、40年近く前。

単位が取れただけの単元でしたが、
大学で、このゴースト障害のレポートの作成をしたことがありました。

レポートと言っても、ちょっとした機械を使って、
ゴースト障害が発生している場所を足で巡り、地域別に影響度合いを
まとめるようなことで、調査結果を官民に報告するという内容でした。


このリサーチ、電話のアポはせず、飛び込みでの確認のお願いでしたので、

「データを、取らせていただけますか?」
『なおんねーんだろ』
「今、その状況を調べてまして」
『うちは、けっこう』

のように、たいていは断られます。
くわえて、イヤミを言われることもしばしば。
全くモチベーションが上がらず、いやいや、やってました。


そんな中での大学三年。
取ったデータを、研究室のワープロでもくもくと叩き始めた頃、
研究室にひとりの女の子が入ります。

自分の大学生当時は、理系の大学に入る女の子は多くなく、
女の子というだけで構内で目立つ存在、ちょっと研究室も浮足立ちました。


ですが、自分は、彼女とは調査分野が違うので、関わりは無く、
話す機会も少なく、研究室恒例の飲み会も同席はなかったように思います。

ここから急転、恋バナか!
と、期待された方もいらっしゃるかもしれませんが、残念。
そんな話ではありません(笑)。


そのような、数少ない接点の中、
彼女に、感謝していることがあります。

レポート作成中のある日。
いやいや集めたデータの進捗報告で、教授や助手たちから、
矛盾を突かれ、バッテンをくらい、研究室に戻ったときのことです。


「じゃあ、お前がやれよ!」
と、誰もが若い時に吐くセリフ(笑)をつぶやきながら、
くさりまくっていたところ、

ヤケになっていると見えたのか、彼女が声をかけてきました。

『どうでした?』

「いやあ、ダメ出しばっか、」
「こんなやり方じゃ、最初からダメだと思っていたんだよなあ」(苦笑)
と、資料をほうり投げる自分。


すると、
彼女が、こんなことを言いました。

『最初からダメだと思いながら、やった答えと、』
『やってみて、ダメだったとわかった答えは、違うと思いますよ』


「・・・ !」

「そっか、そーだね!」
「コーヒー買ってくるわ、いっしょに飲む?」

『じゃあ、いただきます』(にこり)


それから、
飛び込み確認のお願いの言葉を、変えてみました。

「データを、取りたいのですが」
『なおんねーんだろ』
「それは、わかりません、だから、データが取りたいんです」

この言葉だけで、だいぶん、データが取れやすくなり、
短期間で、以前以上にデータを集めることができました。

指摘された報告書も、仮説はあれど、わからない、
という視点から、データを照らし合わせてみる、ようなフローに修正。


結果、レポートのウケも良く、他のミッションのメンバより、
自分が、1か月も早くに終われたことが、何より嬉しかったですねえ。


考え方、言い方、その姿勢、ひとつで、大きく状況が変わることを、
初めて実体験した話です。

そして、彼女の『答え』は、
社会人になっても、思い出し、行動するようになります。

自分にとっての、金言のひとつになりました。



○○さん、
大学卒業以来、会ってませんね。
これからも、お会いすることは無いとは思います。

こんな話、憶えていないでしょうね。

あの頃の自分の性格でしたら、声をかけられる前、
「黙って、研究室から消えてやろうか・・」
なんて、思っていたと思います。

そんなバカな考えを、
あなたの、『答え』が、 退治 してくれました。

ありがとう。
今も、お元気でいらっしゃることを祈ります。


※ゴースト障害
 英訳:Ghosting
 Ghosting は「理由も言わず消え去ること」という意味もあります。



長文のおつきあいを、ありがとうございました。
FLH