AI時代に本当に必要なスキルはこれだ(1/2回) 知恵のindex化について
・AIの時代が来たら人間の仕事は奪われるのか?
国立情報学研究所の新井紀子さんが書いた[AI vs 教科書が読めない子供たち]の中では
知的読解能力でAIを下回る人々は一斉に仕事を失い世界的な大恐慌が訪れると書いています
これはリーマンショックの第二次世界恐慌を遥かに上回る規模になると予測されています
こんな未来が本当に来るんでしょうか?
自分は初心者向けAI導入支援の資料を作成しながら、自身もAIツールを使って知見をまとめる日々です
生成AIを使用したツールは言語はもちろん、映像等メディア系、オフィスツール系、プログラミング系など毎週の様に衝撃的な発表が行われ、まるで週2でペリーが黒船に乗ってくる様な慌ただしさですw
AI導入コンサルタントの端くれとしてその危機感がどの程度リアルなのかを分析するとともに
今後どうやって生き残っていくべきか、
AI時代に本当に必要なスキルは[知恵のindex化]であるという持論を解説していきます
今日はその前段として、AIが各業界をどう変えるのか?について実際の所感を話していきます
・AIに仕事が奪われるか。の議論はもう終わった
AIの時代が来たら人間の仕事は奪われるのか?
という切り口はメディアで無限に語られていますが、当事者の1人として言うともうその発想自体が古いです
人間の仕事はとっくに奪われ始めています
ただしそれは映画のターミーネーターに出てくるような派手な戦争によってではありません。
もっとひっそりと、目に見えない形でそれはやってきます
・インターネット黎明期との比較
AIによる変化を身近な例えで実感してもらうとしたら、20数年前にインターネットが世界にもたらした様な変化です
個人商店が生き残れなくなり、AmazonなどのEC販売に代替された
テレビなどの大手メディアが弱体化し、YoutubeやSNSからスターが現れた
映画館やレンタルビデオ店が縮小し、家でNetflixなどのオンデマンドサービスが台頭した
お見合いの文化が廃れ、マッチングアプリで恋愛が始まった
オフラインの全てが代替される訳ではないし、一瞬ですべてが変わった訳でもない
しかしある程度の時間を掛けて社会は確実に変化してきました
AIも同じで、これから時間を掛けて徐々に社会は変質していきます
仕事が奪われるという要素は確実にあるでしょうが、
インターネット黎明期にlivedoorや楽天、amebaといった新興企業が現れた様にAIを使う仕事で成功する人も現れます
EC物販で成功するブランドや商店がいたり、Youtubeで成功する元タレントさんがいたりするように
従来の仕事のやり方にこだわらずAIを取り入れる人は仕事がなくなる心配はないと思います
一方で、AIなんか絶対使わないぞ!という方は
絶対ネット見ない!絶対スマホ使わない!みたいな扱いの人になってきます
・業種ごとの変化はどのようなものか
ざっくりとした分類に過ぎませんが、身近にイメージしてもらうために業種ごとに変化を分析しました
[肉体を生かした労働] 影響度 ☆☆★★★
農林漁業は直近で大きな影響を受けないと考えられます
臨機応変な対応が必要なので、完全にAIに代替される未来はまだ遠そうです
ただし、AI搭載ロボットの登場により徐々に影響は大きくなります
スポーツ選手や格闘家なども代替不可能で影響は少ない
ただ育成や運営方針など深層学習が有効な部分では一部影響があると思われます
消防士やレスキューなどは装備面では影響されるものの全て代替される日は遠いでしょう
例外は軍人で、ドローンや戦闘機がAIを搭載する事で求められるスキルは大きく変化すると思われます
[運送業] 影響度 ☆☆☆★★
自動運転車による輸送、荷下ろしもいずれはロボットがメインで行う様になります
技術的にはもうすぐといった感じで影響度星5になりそうなものですが、
今はまだ法令の方が追いつかず5-10年くらいかけて導入されるイメージです
[製造業] 影響度 ☆☆☆☆★
製造業はオートメーション化で非常に大きな影響を受けますが、これは今に始まったことではないですよね
今後ますます効率化と自動化が加速していきます
職人の勘みたいなものが必要だった仕事も、深層学習によりゆっくりとAI搭載ロボットに代替されます
逆に手作業で作ったものは、手で作ったから価値がある。というような逆転現象も発生すると思われます
[サービス業] 影響度 ☆☆☆☆★
コンビニやスーパーのレジが自動化されたのと同じ様に、マニュアル的な対応はほぼ全てが代替されます
近年では配膳や清掃もロボット化され始めました
ただし対面でのコミュニケーションが必要とされるサービス業はむしろ価値が高くなると予想されます
高級店の接客やクレーム対応、夜のお店なども代替は難しいでしょうね
こちらも製造業と同じ様に、わざわざ人間が出てきて対応することに価値が出てきます
ヘルパーや保育など、ロボットに代替させる事が感情的な不安を招く分野も代替は難しい
ただしベッドや歩行器具、見守りカメラなど多くの備品がAI化されることになります
業務範囲によって影響度が様々ですが、着実に変化は起こります
[タレント・アーティスト] 影響度 ☆☆☆☆☆
こちらは制作、表現共に非常に大きな影響を受けます。というより既に大幅な変化が始まっている
音楽、映像、イラスト、脚本まで高度にAI化され、人間が作ったものとの区別は難しくなります
最も議論が紛糾している分野でもあり、日々追いきれないほどの変化が起き続けています
CMタレントがAI化された事例も話題になりましたが
今後は実写と区別がつかないレベルの映像や、言語学習モデルで人格を付与されたキャラクターなどが現れます
今でこそ話題になりますが、いずれ当たり前の存在になっていきます
この辺りは自分の専門分野でもあるのでまた詳しく解説します
[士業] 影響度 ☆☆★★★
こちらは社会的な理由によって直近の影響は小さくなります
元エンジニアとしての体感から率直に言って日本のAI導入スピードは非常に遅いです
マイナンバーカードの騒動などからもわかる様に、これは技術以前に体質の問題なのでAIがどれだけ凄くても日本のITインフラはそう簡単には変化しない
それに加えてLLMと呼ばれる言語学習モデルは、学習データから可能性の高い候補を出力しているだけであり正確性には依然として問題があります。よって最終判断は責任を負う主体が必要となる
信頼度が必要な士業ではAIが主流になる日はまだ遠いと考えられます
社会的な変化には10年以上の猶予はあるんじゃないでしょうか
ただし簡単な法律相談や書類関係のオペレーションには既に導入が始まっています
[オフィスワーカー] 影響度 ☆☆☆★★
大きな影響を受けるものの、その対応力で変化を吸収してしまうと思われるのがこの分野です
単純な計算や書類作成などは業務に使うツール単位で導入され自然に組み込まれていきます
スマホやネットを使いこなすのと同様にAIツールの習熟が求められるでしょうが
混乱が起きるのも少しの間で、研修や自己学習によってAI社会に対応していくと考えられます
変化は大きいが、自覚症状は少ない。といった業界になると思われます
ただ一人当たりがこなす業務量がAIのサポートによって増える、というイメージです
[IT・情報サービス業] 影響度 ☆☆☆☆☆
当然ながら直撃で大きな影響を受けます
日々の業務から開発、マーケティングや分析などあらゆる分野にAIが入ってきます
個人的に注目度が高いのはdevin.aiという自立型プログラム支援ツールです
言葉で指示するだけで自主的に情報を調べてプログラミングしてデバッグまでしてくれるという鬼の様なツールで、プログラミングの概念自体が大きく変わってしまうインパクトを秘めています
他にもcursolやcreate.xyzなど口語でプログラムできるアプリケーションは既に発表されていて、aiツールをどう使うかの研究は世界中で行われています
正直言って今すぐこれでプログラマーの仕事が今すぐなくなるかと言ったら全然ありません
実際プログラマーの仕事は意外とソースコードを書く以外の時間が非常に長い。顧客からのヒアリング、上司とコミュニケーションして進行を決めたり、仕様書や設計書を書いたり(加えて保存管理)、エラー時の緊急対応や謝罪wなどなど、、現状全てをAIで代替することは不可能です。
よって一部業務が効率化されたり、新しい形のエンジニアが現れるだけで全てが代替される訳ではない
と、現状では考えられていますが数年後にはまったく状況が変わっているかもしれません
・予測は覆される
以上が非常にざっくりとしたAI導入コンサルによる予測所感になります
が、しかし実際のところこれらの予測は現在時点からの静的な予測に過ぎません
明日にはどうなっているかわからないのがAIの進化スピードです
2023年にChatGPT3が発表された時はAI研究者ですら動揺するほどの衝撃で未来予測が一気に書きかわりました
実は冒頭で書いた[AI vs 教科書が読めない子供たち]は2018年に発行された本で、この時点で測定されていたAIの能力はChatGPT3よりも遥かに低い性能でした
仕事を失うのは言語能力の下位20%程度の人々と予測されていましたが、GPT4以降のAIの言語能力は20どころか50%以上の人を上回っている様にも思えます
自分は新井先生が言う大恐慌ではなく、もっとゆっくりとした社会変化を予測していますが
次に発表される人工知能が数年で社会をすっかり変えてしまう可能性は否定できません
はっきり言ってそれは誰にも予測できない。できるのは備えることだけです
そういった現状を踏まえつつ、次回はAI社会を生き残る方法としての[知恵のindex化]について書いていきます