愛すべき”ゆるキャラ”たち~彼らの生き様と魅力~
私は『ゆるキャラ』が大好きです。心がしおれそうな日々の中、いつも私のそばにいてくれたのはゆるキャラでした。
彼らは何も言わずとも、そっと私に寄り添ってくれる。彼らのゆるさを見ると、私も肩の力が抜ける心地がするのです。彼らだって、きっとつらいこともあるはずなのに…
日本の『ゆるキャラ文化』は世界に誇るべきものだと思います。これほど多くのゆるキャラを有する国は、全世界でも類を見ないのではないでしょうか?
この国でゆるキャラ文化がこれほどまでに発展したのは、『ストレスフルな日本社会』が背景にあるようです。たしかにそうなのかもしれません。『抑圧社会が生んだ悲しい存在』それがゆるキャラなのかもしれません。
私が特に大好きなのは、地方自治体や各種業界団体のゆるキャラたちです。彼らはただかわいいだけではなく、地域や産業をアピールするという重要な役割をその身に担い、つらそうなそぶりも見せないで地域や業界のために日々頑張っているのです。
そのためゆるキャラのデザインには熱い思いが込められています。なぜこの形なのか?なぜこの色なのか?デザイナーの意図を汲み取るというのは、ゆるキャラ鑑賞者としての技量が試される瞬間です。
ときとして、そのデザインが意図しない方向へ展開を見せていることもありますが…人生とはそういうものではないでしょうか?思うようにことが運ぶことなんてありません…私もゆるキャラも同じです。
前置きが長くなりましたがこの記事は、私が現在、特に愛でている5体のゆるキャラたちを紹介いたします。そのことを通して、『なぜ私たちはこれほどまでにゆるキャラに惹かれるのか?』『彼らの魅力とはなんなのか?』
その真理に迫ろうとする試みです。
エントリーNo.1 なまリンちゃん
なまリンちゃんは『全国生コンクリート工業組合連合会』および『全国生コンクリート協同組合連合会』(全生連)のゆるキャラです。
ご覧の通り、働き者の『アリ』をモチーフにしています。土木建築業界のゆるキャラよろしく、長靴と軍手、そしてヘルメットを着用しています。触角らしきものはヘルメットを突き破っているように見えますが、どうなっているのでしょうか?
体はアリ科の昆虫と同様に頭部、胸部および腹部で構成されているように見えます。しかし腹部に見える部分(後ろに垂れ下がっている部分)は腹部ではなく、コンクリートミキサー車のドラムがモチーフになっているようです。いわれてみると、そう見えるような…?
そしてなまリンちゃんという名前、これは生コンクリートの“なま”とアリの“リ”を合わせて「なまリンちゃん」に行きついたようです…?
突っ込みどころはややありますが、土木建築業界をイメージさせるような装いと、コンクリートのようなカラーリングで、生コン業界を啓発するに相応しいゆるキャラだと思います。今後のさらなるご健勝に期待…!
エントリーNo.2 パゴちゃん
エントリーNo.2は、ひときわ鮮やかなオレンジが目を引くパゴちゃんです。パゴちゃんは、世界遺産『法隆寺』の所在地でもある奈良県生駒郡斑鳩町のゆるキャラでいらっしゃいます。
斑鳩町は、有名な柿の産地です。正岡子規が詠んだ俳句『柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺』は一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?そう、彼のオレンジボディは柿なのです。
よくよく見てみると、足のように見える緑色の部分はヘタでしょうか?つまり彼のボディは、私たちが一般的にイメージする柿のイメージと上下が逆になっています。
そして、頭にかぶっているのが、寺社の「仏塔」ということです。ちなみに東洋の仏塔のことを英語で「『パゴダ(PAGODA)』と呼ぶことから、パゴちゃんという名前が付いたそうです。
イラストでは足が無いのですが、現実世界へいらっしゃる際には、ヘタの部分が伸びて、足の役割を果たします。
これからも斑鳩町の地域振興のために頑張ってください…!
エントリーNo.3 きんとっと&デメッキー
エントリーNo.3はこちらの二匹組、きんとっと&デメッキーです。他のゆるキャラとは一線を画すデザイン、なんだか立体感がありますね…!
彼らは”全国金魚すくい選手権大会”のゆるキャラでございます。金魚すくい大会が開催されている奈良県の大和郡山市は、全国有数の養殖金魚の産地です。
本来であれば、金魚はすくわれる立場にある生き物です。しかしきんとっと&デメッキーは金魚であるにもかかわらず、まるで彼らのそんな運命に立ち向かっていくように、ポイ(金魚をすくうために和紙を張った網)を片手に勇んでいます。
その姿に、私の胸は激しく震えるのです。
彼らの表情もたまりませんね。かわいさの中に、どこか不気味なものを感じるというか…目の奥が笑っていません。少し恐怖さえ覚えてしまいます。
これは私の推測でしかありませんが、縁日の遊戯として金魚をすくい続け、さらにはすくった金魚の飼育放棄を続けてきた、私たち"ニンゲン"への"怨念"のような情を抱いているのではないでしょうか?『すくわれる側』から『すくう側』に至った、彼らの半生が気になります。
ところで、縁日などで金魚を持ち帰った場合は、必ず責任をもって最後まで飼育しましょうね…!川などに放流してしまうと、金魚は環境に適応せずにすぐに死んでしまいます。それだけではなく、地域の生態系を乱してしまう恐れもあります。
金魚にも命があるので、飼育する場合は最後まで責任と愛情を持ってください!きんとっと&デメッキーも、きっとそれを望んでいるでしょう。
エントリーNo.4 紀の川ぷるぷる娘
エントリーNo.4は和歌山県は紀の川市からやってきた6姉妹、『紀の川ぷるぷる娘』です。各メンバーの名前とキャッツフレーズは以下のとおりです。
①ジュワーッと甘くてビタミンCたっぷりの「かき」の「かきぷる」
②あまずっぱくて緑あざやか「キウイフ ルーツ」の「きうぷる」
③柔らかくてぷにょぷにょの「いちじく」の「じくぷる」
④いい香り甘くてみずみずしい「もも」の「ももぷる」
⑤ケーキの花形、ぷちぷちかわいい「い ちご」の「いちごっぷる」
⑥ちょっぴり苦くてさわやかな「はっさく」の「さくぷる」
紀の川市は『バナナとパイナップル以外なんでもとれる』と言われるほど、果樹の栽培に適した地域です。なんと近年では、バナナ栽培にチャレンジしている果樹農家さんもいるのだそうです…!ぷるぷる娘に『ばなぷる』が電撃加入する日もそう遠くないかもしれません。
どのぷるぷる娘もとっても可愛らしいのですが、私の推しぷるはじくぷる。大人しくていろんなことに興味津々。とってもおしゃれな女の子です。葉っぱの髪飾りがさりげなくておしゃれじゃないですか?その一方、きうぷるは頭の果肉が少し削がれていますが大丈夫なのでしょうか…
そしてぜひ聴いてほしいのか、ぷるぷる娘のテーマソング『紀の川ぷるぷる娘の歌』です。子供たちの歌声が癒される…!だけではなくて歌詞もとても素敵です。
特に歌いだしの「おーい おいでよ 子供たち」という一節、私が愛してやまないフレーズです。声に出して読みたい日本語。
私、実は仕事の関係でこの歌の制作に携わった方にお会いし、お話を伺ったことがあります。紀の川市は『食育のまち』として政策を推進しており、この歌にも、食育に関する歌詞が散りばめられているようです。
地場産業のPRだけでなく、子供たちへの食育にも貢献している『紀の川ぷるぷる娘』、とてもチャーミングな6姉妹です。これからも姉妹仲良く、健康に活動されることを願っています!
エントリーNo.5 つがーるちゃん
エントリーNo.5、最後に登場するのは、青森県つがる市のゆるキャラ、『つがーるちゃん』です。ごらんのとおり、これでもかというほど主張の激しいキャラとなっています。
『紀の川ぷるぷる娘』は、地域の特産品である果樹を1人ずつに振り分けているのに対して、『つがーるちゃん』はすべての要素を1人に盛り込んでいます。結果として、ご覧の通りカオスな様相を呈しています。もはや説明がないと何がどうなっているのかわからないでしょう。いや、説明があってもいまいちピンとこないのですが…
『お互いが中途半端に歩み寄ると誰も幸せにならない』といういい例です。ですがそれがある意味、日本的で微笑ましくもあります。つがーるちゃんをデザインする時に、「この特産品も盛り込んでほしい!」という要望が各団体から挙がったのだろうと思料されますね。
それでも、なにより地域の魅力を余すところなく伝えたい!という行政サイドの熱い思いが伝わってくる、とても味のある素敵なゆるキャラだと思っています。ご当地ゆるキャラの魅力は、ゆるキャラに込められた思いにあるのではないでしょうか。その思いが時に思わぬ方法に行ってしまったとしても、それがまた愛嬌になっているというか、親しみやすさにつながっているのかもしれませんね。
つがーるちゃんは市民にとても愛されているゆるキャラです。つがる市のイベントに参加するだけでなく、消防士としてつがる市の安全を守っています。つがーるちゃんは本当につがる市とつがる市民のことが大好きなのでしょう。だから市民にも愛される。
きっと彼女は、これからもつがる市のために全力全身全霊で頑張っていくのだと確信しています。それがきっと、つがーるちゃんの幸せでもあるのですから。
おわりに
いかがでしたか?ゆるキャラたちは、決してスマートなキャラクターとは言えないでしょう。どうしてそうなってしまったんだと、ときに不気味さ、恐怖が垣間見えるゆるキャラも少なくありません。
また、彼らは不器用でときには失敗を重ねることだってあるでしょう。それでも、ゆるキャラたちは、人々のために一生懸命、日々を頑張っています。
彼らを見ていると、自分がすこし重なって見えることがあるのです。理想の自分とはほど遠い今の自分に対して惨めな思いを抱くことはいつもあります。きっと多くの人が、同じ思いを持つことがあるのではないでしょうか?
そんなとき、隣にゆるキャラがいます。
理想の自分ではなかったしても、そんな自分で日々に向き合っていく。むしろ、そんな自分のままで日々に誠実に向き合っていく。そのことが意義深くて素晴らしいのかもしれないと、ゆるキャラたちが教えてくれました。
不器用なままでいい、失敗をしてもいい、醜いままでいい。成功なんてしなくてもいいから、ただ頑張ろう。その姿勢が何より大切なものだと、ゆるキャラたちが頑張っている姿を見ると、強く心に響くのです。
半分は冗談ですが、もう半分は本気です。
つらいとき、うまくいかないときは、ゆるキャラたちに目を向けてみてください。きっと、ささやかでも元気をもらえる…かもしれません?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
あなたの好きなゆるキャラも、ぜひ教えてください!!