崖っぷち「立花孝志」/「執行猶予4年」の身の上に追い打ち/東京地裁が「反社会的カルト集団」判決

本人は「執行猶予4年」の身の上。「サリンをまかないオウム」などと評しても違法でないとする判決が出た理由。

2025年1月号 DEEP

国や自治体の選挙に出ては「NHKをぶっ壊す」と言い続けてきた立花孝志氏。11月27日に党首を務める「NHKから国民を守る党(N国党)」を「サリンをまかないオウム」などと評しても違法ではないとする東京地裁の判決が出た。なぜそうした判断となったのか。立花氏やN国党は、何を目的に活動しているのだろうか。

「違法性を欠く」と結論

「NHKから国民を守る党」のHPより

判決が出たのは、選挙を取材してネットに有料記事を書く「選挙ウォッチャーちだい」(石渡智大氏)がXに投稿するなどした内容は名誉毀損として、N国党が160万円の損害賠償を求めた訴訟。争点は、7月7日投開票の東京都知事選でN国党への寄付者が同党関連候補24人の選挙ポスター掲示板に無関係のポスターを張ったことなどを巡る次の三つの内容が名誉毀損かどうかだ。

▽今日も反社会的カルト集団「NHKから国民を守る党」が展開しているポスター掲示板のショバ代ビジネスについて、無料で記事にしていきます。メデイアや警察の皆さんに…理解していただきたい(6月24日のX投稿)。

▽選挙の取材をやっていて、事件屋の人間からどやされるのは、反社会的カルト集団である「NHKから国民を守る党」しか存在しない。このような…集団が野放しになっていると、これからますます事件が起こる…被害に遭う人が増える(6月30日のX投稿)。

▽物の善悪の判断がつかないんだよ。サリンをまかないオウムと一緒なんだから、ほとんど…サリンをまくほどの知識とか知能はない…(同日の動画配信)。

石渡氏は意見・論評であり、その根拠として、立花氏が過去に①「がんなどで私の生命の限りが発見できた場合はテロします」とSNSに投稿、②NHKの業務用端末に記録された受信契約者等情報50件をビデオで撮影、③NHKに電話し、個人情報を社会に拡散するなどと告げた、④前記の②と③の事実で不正競争防止法違反と威力業務妨害の罪で送検されたと報道されると、動画投稿サイトで自らを犯罪者、反社会的勢力と評して、NHKの業務を妨害し続けると宣言したことを挙げた。

また⑤演説中の立花氏に「うそつき」とやじった男性をN国党スタッフらとともに追尾、罵声を浴びせ続け、選挙妨害として警察官に引き渡すところを撮影し、ネットに投稿、⑥N国党役員会で「法律を守らない政党であることを売りにしたい」と発言、⑦資金拠出を拒み、N国党から除名した東京都中央区議に「YouTubeで叩き続ける」とショートメッセージを送り、投稿動画で区議の妻や母親を「徹底的にしばく」と述べて脅迫したなどと指摘した。

さらにN国党も⑧NHKや委託業者の従業員を撮影し、動画を投稿サイトにアップする活動を行っている、⑨受信料請求書をN国党の顧問弁護士に代理受領させ、不払いしやすくするサービスを開始。同党副代表は、視聴者に石渡氏の自宅住所が容易に特定できる動画を投稿するなどしたという。石渡氏はこれらを含む計18件を意見・論評の根拠として提示したのに対し、N国党は1件を除く17件を事実と認め、一部は評価などを争うなどと応じた。

東京地裁は判決で、17件を事実と認定。石渡氏は立花氏らが犯罪行為や不法行為を次々と行い、法律を遵守しない意思を明確にしていたことなどから、N国党は犯罪行為を平然と繰り返す盲目的な集団・団体と評価し「反社会的カルト集団」「オウムと一緒」などと表現したもので「意見あるいは論評としての域を逸脱したものとはいえない」と判断し、違法性を欠くと結論付けた。

ベテランの司法記者は「石渡氏が指摘した三つの内容はN国党の社会的評価を低下させ、名誉毀損だが、事実に基づく意見・論評で、公共の利害に関し、公益を図る目的による行為なので免責された。当然の判断であり、立花氏とN国党がこの社会にとって、非常に脅威であることを示した判決だ」と解説する。

そもそも立花氏はどんな人物なのか。本人の著書『立花孝志かく闘えり』と新聞報道によると、1967年に大阪府泉大津市で生まれ、府立信太高校を卒業後、NHKに就職した。経理職員だった2005年、週刊文春に「私が手を染めた裏金作りを全てお話しします」と内部告発。停職や出勤停止の懲戒処分を受けて依願退職し、その後はパチプロとなって「年間3億ぐらい入れて、3億5千万出す」生活だったという。

海上保安官がネットに尖閣諸島での中国漁船衝突事故の動画を公開したのを見て、2011年から「立花孝志ひとり放送局」と題してネットへの動画投稿を開始。13年に自らを代表とする政治団体「NHK受信料不払い党」を設立し、N国党に改称した。立花氏は「国民の生活が第一」のように、党名で公約が理解できる名前にしたと著書に書いている。

「執行猶予4年」の身の上

立花氏は大阪府摂津市議選と東京都町田市議選に落選後、2015年に千葉県船橋市議に当選したが、翌年の東京都知事選(落選)に立候補して失職した。この都知事選で「NHKをぶっ壊す」のフレーズや「既得権益と闘う」というメッセージが広まり、19年の参院選比例区で議席を獲得し、念願の国会議員となる。

しかし、同じ年の参院選埼玉選挙区に出馬して失職。2020年以降、立花氏を批判する著述家の菅野完氏に対する名誉毀損訴訟や、NHKが参院議員会館に置いたテレビ受信料2カ月分の支払いを求めた訴訟と集金業務妨害の損害賠償を求めた訴訟、報道ステーション出演中に発言を制止されたことに対し、テレビ朝日に賠償を求めた訴訟で次々に敗訴した。石渡氏が訴訟で指摘した②③⑦の犯罪で、23年に懲役2年6月、執行猶予4年の判決が確定。今年に入り、都知事選の掲示板問題で警視庁から風俗営業法違反の疑いで警告を受けた。

立候補した11月17日投開票の兵庫県知事選では、斎藤元彦氏の再選を支援すると表明。「(斎藤氏の不正を内部告発した)元県民局長は不倫していたのに、メディアは隠蔽している」「斎藤氏は悪くない」などと主張したが、ネットに虚偽の情報を投稿されたとして、県議会百条委員会の奥谷謙一委員長が立花氏を名誉毀損の罪で県警に告訴した。さらに自宅前で「出てこい奥谷」などと街宣したことについては、脅迫罪などで被害届を提出した。

「立花氏は根拠の乏しい言説に基づき既得権益と闘うと称し、社会に不満を募らせている人々を扇動している。都知事選の掲示板問題でも明らかなように実は、金銭目的であり、まさにトリックスターだ。石渡氏が言うように、野放しにしておけない」と評するジャーナリストもいる。自宅住所をさらされるので実名を避け匿名という。

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