フジの件、「広告費=みかじめ料」って話
こんなポストがあったので転載。
フジの件、「広告費=みかじめ料」って話が流れてますが、ちょっと分かりにくい話な上に「みかじめ料」なんてカタギの人は普段使わない言葉ですんでピンと来ないと思います。 なので私が知ってる話の中で広告費が大活躍した例を実際にあった話を踏まえて説明しようかと以下長文↓
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![](https://assets.st-note.com/img/1737952110-SECh8q06PQotIW9UuwjmysLc.jpg)
皆さん、「武富士」って会社の「武富士ダンサーズ」のCMを覚えてるでしょうか? キャッチーな曲に軽快なダンスのCMがそれこそ早朝から深夜まで1日中やってんじゃねぇか?って勢いで流れてました。 武富士に限らず消費者金融と呼ばれる貸金業者は昭和の頃からCMを大量に流してて、TVに限らず新聞、雑誌、電車内の吊り広告や郊外の看板など日本国内で生活してたら常に眼にするレベルで広告打ってました。 まぁ要は儲けてた訳でして、バブル崩壊後には特に躍進してまして「不景気の中の優良産業」とか言われて投資家筋には大人気でした。
儲けてるにしても明らかに異常な広告戦略を業界上げてやってた理由が上記の「みかじめ料」でして、本来「敵」になるメディアを味方に付ける為の手段だったのです。
銀行ではない高金利の貸金業はそれこそ大昔からありまして、消費者金融の前身に当たる業者形態は戦後に発生します。 当時の業者はVシネのアレみたいなモロヤクザでしてそれこそ本物の舎弟でもあったので世間の評価はあまりよろしくありませんでした。
そんな折に彼らから借金した家族が一家心中する事件が全国報道されます。 ぶっちゃけ貸金業から金借りた人の自殺なんて太古の昔からある物で改めて大騒ぎする様な事じゃ無かった筈なんですが、 彼らが取り立てする際の「営業行為」をド派手にやり過ぎたせいで今で言う「大炎上」してしまいます。
彼らは普段顧客と1vs1でやり取りしてますんで強めの営業掛けていた方が顧客との交渉で優位になりますんでメンチ切りまくってた訳ですが、「顧客=世論」という視点が欠けていたのですね。 これが60年代の話だったと記憶してます(おっかない話ですが、こういった金融業界の遍歴はあちこちで消えてます、10年くらい前までは過払金関連のまとめサイトがあちこちにあったんですが根こそぎ消えてます) 世論に押されて政府が動く事になりまして、貸金業に関わる法律が大幅に改正される事になり、個人向けの貸金は利息上限を大幅に制限(年利20%迄)法人向けの貸金の場合、条件を付ける事で高金利での貸金を認める。 また、督促の際にもその方法を大幅に制限して恫喝的な督促を禁止しました。 これで高金利に乗じた経営を行ってた業者やパワフルな営業してた業者は軒並み閉業する事になり、生き残ったのは全国チェーン持ってる大手と比較的健全に営業してた業者だけになりました。
じゃあ大手の業者は健全な業者になったのか?と言ったらそうじゃなかったんですね。 その頃から消費者金融は全国紙などを中心に広告を出すようになります。 その頃から普及し始めたTVでもCMを出すようになりました。
それで金融業界が健全になったか?と言われたら答えは「No」です。
ヤクザみたいな社員は居なくなって小綺麗なスーツ着た社員ばかりになり店舗にはカウンターに制服着た女子社員が待ってるパッと見はとても健全なお店に見えるようになりました。 ところが実際の仕事はさもありきでして、政府が決めた新しい法律は気持ちいいくらいにスルー。 金利に関しても相変わらず高金利で貸し付けてて督促にしても以前ほどじゃないにしてもガッツリ力押し。 で、本来はそういった行為を監視・取締りしなければならない金融庁は◯ーパンしゃぶしゃぶで接待されてたりした訳で(アレは銀行でしたが、銀行がやってんのに消費者金融がやってない訳がなく…) 自殺に関しても相変わらずで、業界では「自分の担当3人死なせて一人前」なんていう格言がまことしやかに呟かれてたくらいで、要は大っぴらにやってた以前より悪事が表面化しなくなっただけで以前より凶悪化・組織化されて実質的には悪化する事になります。
そんな有様なんですがメディアはそういった貸金業の負の部分に対してはせいぜい夕方のニュースや3面の隅っこに申し訳程度に報道する程度で大きく報道する事はありませんでした。
で、当時から週刊誌などでは「グレーゾーン金利問題」なんて書かれてましたがそれ自体がフェイク記事で、契約書や領収書に記載が義務付けられた内容が書かれてなかったりとグレーでもなんでもなく一発アウトな漆黒案件がゴロゴロあり実際裁判になったらあっさり負けていたんですけど、そんな事はTVや新聞は勿論、週刊誌に書かれる事さえ稀でした。 …広告費、凄いですね。
そうこうしてるうちに2006年に例の「グレーゾーンを認めない」判例が出て、消費者金融は真っ黒な企業になります。 過払金に関する事を詳しく書いてたら本が1冊書けるんで詳細はググって頂くとして、要は今迄裁判やっても回収が困難だった過払金が素人でも簡単に、とは言いませんが頑張れば出来てしまうし弁護士や司法書士にはお茶の子サイサイな案件になったので広告売って案件募集出来る様な話になりました。 なので06年以降の10年くらいは「過払金バブル」と言われて弁護士や司法書士が大儲け出来た時期でもありますし、未だに広告出してる事務所もありますね。 その一方で消費者金融業界は最高裁判例出たんだから逃げも隠れも出来ないんですが、それはそれで出来るだけ隠蔽するとか支払い拒否するとかして抵抗してました。
その間にもTVのCMは一日中流れてましたし過払金に関する報道は殆どありませんでした。 そんな中でインターネットでは過払金の回収方法が本職交えて公開されてて、当時の2ちゃんには専門のスレが立って書面テンプレやExcelの計算シート、相手の反論に対抗する具体的な方法や和解交渉の実例、法廷に着て行く服のお悩み相談まで実に事細かに丁寧にレクチャーされてました。 それらの大事な所をまとめたサイトまで出来てて、そらぁいくらTVで広告打っても無理だわなぁ、という感じでしたね。
それまで黙認する形だった金融庁もTV CMのおかげで一切報道されないから60年代の一家心中の様に世論は動かないのですけど続々と出て来る判例に動かざるをえない訳で、有耶無耶になってた金利はガチガチに固められますしそれまで強制されてなかった取引履歴の提出を強制させたりと一切手心が無くなります。 更に会社によってはとてもブラックな就業状態だった訳で、会社が弱ったのを見計らって労働訴訟が多発しましたし株価が暴落したので株主から詰められた挙句にこちらも訴訟沙汰になります。
まぁ、要はやり過ぎたんですね。 普通にやってりゃそこそこ儲かる仕事なんで普通にやってりゃ良かった訳で、何も法律破ってまで利益出す必要はなかったんです。 私も過払金返還請求訴訟やったクチなのですが、当時の裁判所は裁判の7割くらいが過払金返還請求訴訟で忙しくて人手が足りないなんて言われるくらいパンパン。 私は同時に4件の案件を進めてた事があるんですが、裁判所の方から「全部同じ日にまとめて下さい」って言われて4つの案件を10分位でサクサク片付けられたりしてました。
そんな勢いで訴訟起こされる訳ですから消費者金融側はそれまでの利益をゴッソリ吐き出させられる訳で、更に会社によっては社員や株主からも訴えられてましたからそりゃもう結果は明白。 現在、銀行系以外で生き残ってる消費者金融はアイフルだけで、他は大小問わず消えてます。 残ったアイフルと銀行系は変わらず広告出してますから未だに過払金に関する事が報道される事はありませんし、武富士なんて会社が無くなった後にも経営者に対する起訴があったんですが、関わりのない人は武富士が無くなった事にも気付いてないし武富士ダンサーズの CM懐かしいねくらいの認識で止まってます。 「広告費」ってのは、こういった事を全部隠蔽します。 「権力者による横暴」とか「一部の金持ちによる搾取」とか言ってる人達が消費者金融の事を叩いてるのを見た事がありません。 今回のフジの件でも、事あるごとに散々騒いでた女性の権力を守る活動家の皆さんはピクリとも動いてません。 温泉や献血のキャンペーンのイラストと女子アナの性被害、どちらがオオゴトなのか比べるまでもないんですけどね。
で、今迄の流れだと温泉協会や日赤がTV CM始めたらきっとピタリと収まるんですよ。
日本はTV局も新聞も全国ネット持ってるとこは片手で足りるんで、これらに広告打ってれば大抵の事は口止め出来るんですね。 だから全国規模の大手企業はだいたい広告出してる。 米国とかだと報道機関だけでも星の数ほどあるんで全部に広告出すなんてよっぽどの大企業でなければ出来ないからいつもスキャンダルで溢れてる。 我々の国が一見平和に見えるのは、実はこういう事情もある。
今回、フジの件で多くの企業がフジから広告引き上げるし、おそらく他局にも影響し始める。 既に広告による情報隠蔽はネットによって効果を失ってる。 実際、消費者金融は過払金の件を殆ど報道されなかったにも関わらずケツの毛までむしり返された挙句に潰された。 本来の「広告効果」を狙った使われ方しかされなくなるでしょう。 例えば現在の新聞、読んでるだけで老け込む様な老人向け広告ばかり。 ネットに接していないとこんな風になるのかとしか思えない情弱グッズのオンパレードです。
TVにはまだドラマやアニメなどの「動画コンテンツの配信」といった機能があるので生き残れてますが、それも「Net Flix」の様な大手動画配信メディアが登場して来てますから用済みになるのも時間の問題です。 「現在のテレビはネットに疎い年寄りとバカしか観てない」なんて言われていますが、その状況が更に悪化してTVは現在の新聞みたいな年寄りくさい広告と内容のない番組ばかりになるでしょう。
あまりTVに対する依存度の少ない国では視聴者の少ない平日の昼間などは日本でいう夜間みたいにTV番組を放送していない時間帯があるそうです。 日本でも平日午後はTVやってない、なんて状況になるかもしれません。
また、広告費による報道への口止め効果が薄れるので、企業や有名人のスキャンダルが常態化するでしょう。 つまり「ネットと同じ様になる」んですねw これまでは何を炎上させるかはメディアが決めていた訳ですが、今後は視聴者が決める事になります。
TVの価値は情報を統制して世論を誘導させる事が出来た事で、それで誰かを悪人にしたり流行を作ったり出来るので、その機能に対して多額の「広告費」が投入されて来ました。 しかし、その機能はネットの普及によって統制機能を無効化されたせいで既に金を払う価値を失ってます。 下図のグラフの様に既に広告費はインターネットがTVに限らず他のメディアを凌駕していて、インターネット以外のメディアを合計した金額でようやく張り合える状況になってます。
既に形骸化しているTVの広告費は今回の件でガッツリ落ち込んでインターネットに回されるでしょうから今後の差は更に開きます。 TV曲が潰れるかどうか、なんて我々視聴者からすれば観るメディアが変わるだけなので大した事ではないのですね。 それよりも、誰かの意思で内容を誇張されたり偏向されたりされていた事の方が重要。 今後どうなるかなんて誰にも分かりませんけども、日本のメディアにとって大きな変換点になる事は間違いありませんね。
つまりいまでも意味不明なテレビCMを出している企業はブラックなことをしてるから気をつけろということですね。 ちょっと前まで記憶に新しいのは『車を売るなら○ックモーター♪』
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