本当の「CM女王」は「川口春奈」ではない? 「放送時間最長」優良企業ばかりがバックに付く女優とは

2024/12/17(火) 17:11配信

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恐ろしく低い助演のギャラ

(左から)川口春奈、広瀬すず、綾瀬はるか

 民放連続ドラマのギャラが驚くほど低水準のまま、上がる気配を見せず、俳優たちの生活に深刻な影響をおよぼしている。俳優の独立ラッシュの背景にもギャラの安さがある。一方で以前にも増してCMの仕事が貴重になっている。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】 【写真23枚】「さすがに大胆すぎるって…」“真のCM女王”はレッドカーペットで「谷間ドレス」を披露した“綾瀬はるか”だった? 話題をかっさらった綾瀬はるかの「妖艶な衣装」を見る  ***

 民放連続ドラマの制作費が約10年、据え置きになっている。割を食っているのは助演俳優たち。5番手俳優、6番手俳優になると、「ギャラは10万円以下」(芸能プロマネージャー)。このところ、助演俳優が連ドラに掛け持ちで出演するのが目立つが、その一因にもなっている。  所属事務所から独立する助演俳優が増えている理由でもある。少ないギャラの何割かを所属芸能事務所に天引きされると、一定の収入を維持するのが難しいからだ。  プライム帯(午後7~同11時)の連ドラの制作費は1回当たり3000万円前後。花王や日本生命など優良スポンサー4社に支えられているTBS「日曜劇場」は例外的に約4000万円の制作費があるが、一方で制作費が2000万円強の連ドラもあった。一流俳優が1人として出演せず、映像もチープだった。無論、低視聴率で終わった。 「この連ドラの制作費は6000万円くらい」といった景気のいい報道があると、そのたびにドラマ制作者や芸能マネージャーたちは「ありえない」と苦笑する。連ドラ界の金欠は深刻なのだ。  制作費が減っているのは各局の決算資料に目を通したら簡単に分かる。たとえばテレビ朝日の場合、2016年度の制作費は約908億円だった。ところが、2023年度には791億円に激減してしまった。視聴率下位局の減り方はもっと酷い。  制作費が減ったのは各局とも売り上げが大きく減っているから。たとえば日本テレビのCM売上高は2016年度に約2557億円だったものの、2023年度には約2192億円に落ちた。これでは制作費を増やせるはずがない。ウェブ広告の躍進と動画配信サービスの台頭による視聴率低下が大きい。 「連ドラの主演俳優のギャラの上限は1回当たり300万円」(ドラマ制作者)。これは約10年同じ。  上限のギャラが得られているのは役所広司(68)や堺雅人(51)、米倉涼子(49)らトップ俳優。ただし、どんなに高視聴率を得ようが、これ以上のギャラが出ることは決してない。スポンサー料はあらかじめ決まっており、視聴率に応じて支払われるわけではないのだ。 「上限以上のギャラを出すドラマがあると誤解している人がいるようですが、それではドラマが間違いなく赤字になる。プロデューサーが次の連ドラをつくれません」(芸能事務所代表)  CMが高く売れず、民放界に金がない中、まったく新しい方法で資金調達を行ったのがTBS「日曜劇場 VIVANT」(2023年)だった。1億円以上の制作費を調達するため、同局系列の動画配信サービスU-NEXTから資金援助を受けた。  さらにドラマの拡大部分には「日曜劇場」とは異なるスポンサーを付けた。それでも赤字に苦しんだのは知られている通りである。

ギャラが10万円を切る

 2番手俳優のギャラは平均100万円台。これも上がっていないが、問題は助演俳優。5番手俳優、6番手俳優になると、ギャラは10万円を切る。  にわかには信じられない金額だが、どの制作関係者、マネージャーに聞こうが答えは同じ。これが現実である。どんなに目立つ5番手俳優、6番手俳優であろうが、上積みされることはない。  世間の不況をよそに民放が 好景気だった1990年代までは助演俳優のギャラもそう悪くなかった。 「5番手俳優、6番手俳優でも20~30万円以上ありました」(芸能事務所マネージャー)  しかし、民放の売り上げ低迷の余波を助演俳優たちがモロに受けた。どの世界でも不況の影響は下部の人間を直撃する。  最近、助演俳優が同時に複数の連ドラに登場するケースが目立つが、これは1本だけの出演では一定の収入が得られないことが強く影響している。制作側が掛け持ちに寛容になったからではない。  俳優の独立が増えている背景にもギャラの安さがある。俳優と芸能事務所はギャラを折半するか、4対6、3対7などの割合で分け合うが、安いギャラを芸能プロと分けると、俳優は生活が困窮してしまう。 「俳優側は『それなら個人事務所をつくったほうが得』と考える。個人事務所なら1人か2人のスタッフを雇えばやっていけますから」(芸能プロマネージャー)  今年の主な独立組を見てみると、黒木華(34)、田中哲司(58)、瀧内公美(35)、佐々木蔵之介(56)や佐藤隆太(44)、生田斗真(40)ら。  黒木と佐々木、生田を除くと、助演俳優が目立つ。かつての独立は主演級ばかりだったが、今は違う。  独立に伴う所属事務所側の報復的なことがほとんどなくなったから、独立しやすくなったという声もある。しかし、それより収入の問題が大きい。

NHKはもっと安い

 一方、NHKのギャラは民放の約半分。一部で「NHKのギャラは高い」などと言われているが、誤解である。NHKの制作者に話を聞けば、すぐに分かる。 「俳優には申し訳ないが、うちはギャラが安い分、美術や映像にお金を掛けられている」(同局制作スタッフ)  NHKの受信料は2023年10月に約1割下がった(地上波と衛星波で2170円から1950円)。同局の懐具合も豊かではないのだ。  俳優がテレビで稼ぎにくくなると、頼みの綱はCM。今年上半期(1月1日~6月30日)の契約社数の上位はこうだった。 (1)川口春奈 21社 (2)賀来賢人 15社 (3)芦田愛菜 14社 (4)今田美桜 11社 〃 橋本環奈 〃 広瀬すず 〃 吉岡里帆  川口春奈がトップ。もっとも、一番稼いでいるのは契約者数9社の綾瀬はるか(39)ということで芸能関係者の見方は完全に一致している。  綾瀬の場合、日本テレビ「ホタルノヒカリ」(2007年)など2000年代から連ドラと映画の主演を務めている。キャリアと人気があるため、CM契約金のベースが高い。  しかも契約しているのはユニクロ、日本生命保険、NTTドコモ、P&G、キッコーマンなど大手ばかり。さらにCMが流れた秒数は14万4555秒でトップだ(ビデオリサーチ調べ)。  流れた秒数の長さはスポンサーの体力の表れ。大量のCM枠を買えるのだから。  一方、キャリアが綾瀬より浅い川口は契約金のベースも低く、スポンサーの中には大手と言えない企業も含まれている。だから、契約金総額も安くなる。ちなみに流れたCM秒数は綾瀬より短く、12万7950秒だった。  綾瀬の1社当たりの契約金は推定5000~7000万円以上。俳優の中でトップクラスだ。なぜ、1社当たりの契約金額が定められないかというと、そもそも固定化された俳優ごとのCM契約金ランクなど存在しないからだ。  古くから誤った情報が流布されているが、CM契約金のランク表も存在しない。それを広告代理店やキャスティング会社がひそかに作成することもない。つくりようがないからだ。CMを担当する芸能事務所関係者などと話せば、すぐに分かることである。 「たまにタレント別のCM契約金のランク表が報じられるが、ちょっと考えれば、あり得ないことだと分かる。宣伝費はその商品の価格や売り上げ見通しで決まるので、500万円の高級車と200円のお菓子の宣伝費が同じであるはずがない。同じ俳優が出演しようが、ギャラは商品によって変わる。だからランク表などつくれない」(芸能事務所代表)  CM契約金のランク表が存在しない理由はまだある。 「CMのギャラは、テレビCMのみか、ウェブCM込みか、新聞と雑誌の広告も含むのかでぜんぜん違う。契約期間によっても全く異なる」(芸能事務所代表)  CMの契約金は商品ごとに話し合って決めるわけだ。意外と安いのは女性の俳優が出演する化粧品のCMである。 「化粧品のCMは映像が美しく、イメージアップにつながるから、どの女性の俳優もやりたい」(芸能事務所代表)  それなのに化粧品メーカーが流すCMは数が限られているから、女性の俳優たちは少しくらい契約金が安くても出るわけだ。需要と供給の関係である。このエピソードからもCM契約金のランク表が眉唾であることが分かる。 高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ) 放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。 デイリー新潮編集部

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