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文章を書くときは、「自分の言葉」に置き換える。

文章を書くときに私が一番気を付けていることは、自分の中に「その感覚がない」言葉は使わないようにしているということ。理解できてない言葉は、使わないようにしています。

たとえば、「エモい」という言葉が出てきたとき、私はその感覚がよく分からなかったので、使いませんでした。

というか、使えなかった。

どういう場面で、どんな風に使ったらいいのかが分からなくて。今でもまだあんまりしっくり来ないので、ほとんど使うことはありません。

原稿を書くときも、耳障りはいいけど、実は何を言っているかよく分からない言葉は、使わないように気を付けています。

マンションのチラシのコピーが面白いとライター友だちがよくツッコミを入れているのですが。

たとえば

雄大な風景を望むヒルトップ。
緑(みどり)安らぐ、閑静な住環境をあなたに。

とか。

デザイナーズ・ハイスペックフルリノベーション

とか。

何かを言っているようで、何も伝わってこない耳障りのいい言葉。

緑安らぐとは、どういうことなのか?緑いっぱいの眺めで心が安らぐということ?

ハイスペックフルリノベーションって、何となくは分かるけど、つまりどういう状態?

取材でそんな風に説明してもらったら、具体的にどういうことですか?と聞くこともあるし、自分なりに理解して、改めて自分の言葉で説明をするというひと手間を加えています。

自分の中にある言葉を使う方が、エネルギーが乗る。エネルギーが乗っている言葉を使っているから、相手にも伝わるような気がします。

自分が理解できている、ちゃんと腹落ちした言葉を使う。

かっこよく言うことより、そっちの方が大事なんじゃないかなと思っています。

だから、インタビューや取材では、相手の言ったことを理解できたと思えるまで、しつこく聞いたり、別の言葉に置き換えて、「こういう意図で合っていますか?」「私はこんな風に理解しましたが、どうですか?」といちいち確認したりしています。

そういえば、私は23歳のときに2つ下の妹が亡くなったのですが。

その後、生きていく気がしなくて希望もなくて、ふと「あぁ、絶望って、こんな気持ちのことをいうんだなぁ」と妙に腹落ちした瞬間がありました。

希望が何もない。希望が絶たれるから、「絶望」なのか。なるほど。うまいこと言うなぁと思って、ちょっと笑えた。

「絶望」という単語はもちろん知っていたけど、そのとき初めて本当の意味を分かった気がしたのでした。

そんな感じで文章を書くときも、自分の中にある言葉を使うようにしています。

「説得力がある」とは、借り物ではない、その人の中から出てくる言葉だから説得力があるんだろうなと思う。

いろんな経験をして、いろんな感情を知り、その人のフィルターを通って発せられる言葉。

そういう言葉を使っている人が言うことや書くことはだから、シンプルでも伝わってくることがあるんだと思う。

※この記事は、過去に配信したメルマガを元に編集しています。

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京都在住エッセイスト・ライター、ときどき大学講師 江角悠子
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