”黒岳石室と僕たちを巡る話” 第5話 北海道鳥瞰図屏風
黒岳石室コラム1
今回の”黒岳石室と僕たちを巡る話”では、黒岳石室と縁のとある場所へ訪れてみましたので、そのご紹介です。その場所というのは札幌にある「北海道博物館」です。北海道博物館と黒岳石室にいったいどの様な繋がりがあるのでしょうか?
1F
入口から入ると、まず最初にナウマンゾウとマンモスゾウがお出迎えです。ここのテーマは「北と南の出会い」となっています。ナウマンゾウは南から、マンモスゾウは北からやって来たということです。これは動物だけに限らず、高山植物にも言えることで、例えば同じツガザクラでもナガバツガザクラは南方から、エゾノツガザクラは北方から分布して来たそうです。
他にも興味深い展示がありますが、今回のお目当ての展示物は2階にありますので、さっそく2階へ向かいます。
2F 北海道鳥瞰図屏風
2Fへのエレベータを上がった先で最初に出迎えてくれる展示物が今回の目的です。それがこちらの「北海道鳥瞰図屏風」。ここのテーマは「北海道らしさの秘密」です。
北海道鳥瞰図屏風とは1936(昭和11)年に吉田初三郎さんが描いたものです。吉田初三郎さんは大正から昭和初期にこのような鳥瞰図で日本全国で活躍されたそうです。この北海道鳥瞰図は北海道庁からの依頼で、昭和天皇に北海道のことを紹介するために制作されました。つまり、ここに描かれているものは当時の北海道を代表する観光地だったわけです。
大雪山国立公園
北海道の真ん中にはもちろん「大雪山国立公園」が描かれています。登山道もきちんと描かれていて、当時から観光登山が行われていたことが想像できます。詳細に見ていくと現在との違いもあって、例えば当時はまだ無かった三国峠も石北峠を通る道路はありませんし、銀泉台や高原温泉といった登山口もありません。また、登山道はすでにあったはずですが、トムラウシや白雲岳といった山の名前も出てこないところをみると、この時はまだ一般向けではなかった様子が窺えます。
黒岳
では黒岳をクローズアップして見てみましょう。層雲峡温泉から黒岳に登る登山道が描かれています。山頂の奥の方にはなにやら建物のようなものが。おそらく1928(昭和3)年に建てられたとされる「大雪山層雲峡神社奥の院」だと思われます。黒岳山頂を越えて降っていくと白っぽい建物があります。名前は付けられていませんが、これは黒岳石室で間違いないでしょう。白っぽい色で石室を表現しているのかもしれません。
旭岳
旭岳の方も見てみましょう。パッと見、旭岳石室は無いのかと思いきや、よくよく見ると建物っぽいものが描かれています。もしかするとこれが旭岳石室かもしれません。
北海道博物館
いかがでしたでしょうか。大雪山国立公園と黒岳石室も当時の北海道の観光において大きな役割を果たしていたことを感じていただけたのではないでしょうか。これ以外にも北海道の開拓の歴史や自然を物語る展示物もたくさんあります。機会があれば是非北海道博物館で実物を見てみてください。意外な発見があるかもしれません。
▼ 第6話 ▼
参考文献
北海道博物館『東北アジアの十字路 北海道博物館展示案内』