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大雪山・原始ヶ原ママさんダンプ事件 ファイル3

前回のあらすじ

私が今でも自分の表現として、いわば登山的な、自然の中で体を使う探検を志向しているのは、まず間違いなくこの時の合宿があまりも面白すぎたせいだと思う。(『探検家、36歳の憂鬱』p34)

・・・とあるノンフィクション作家の原点となった合宿

不必要になったママさんダンプは後から拾いに来るという言い訳のもと、原始ヶ原の木にぶら下げておいた。道も何もない原生林の真ん中での話である。きっと今でも同じ場所にぶら下がっているだろう。(『探検家、36歳の憂鬱』p34)

・・・が、その陰で置き去りにされたママさんダンプ

原始ヶ原ルート候補

・・・残されたママさんダンプを探すべく捜索ルートを3つに絞る

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・・・ということで、残雪の原始ヶ原までやってきたのであった。


捜索

机上で考えていても何も始まらないので、とりあえず行動に移してみることにしました。実際に現地を見てみないと分からないことや、現地だからこそ得られる気付きなどもあるかもしれません。

では、どこを捜索するべきか?当時の早稲田大学探検部が辿ったルートを3つ想定しましたが、今回は①の”夏道から原始ヶ原へ出て富良野岳へ目指すルート”を通ったと仮定して、捜索することにしました。とりあえずは、最も”普通”のルートから当たるのが合理的だろうと考えたからです。

さらに、原始ヶ原の中でも登山道の西側の割と平坦な樹林帯に絞ってみます。ママさんダンプを引っ張っていたとすると、当然平坦な場所の方が引きやすいでしょう。登山道の東側にも開けていますが、そちらへ行くと遠回りになるので、わざわざそちらへは行かないでしょう。

捜索範囲

登山道の西側の樹林帯を攻める


古びたリボン

登山道を離れていよいよ捜索開始です。キョロキョロと辺りを見渡しながら歩き始めます。探すのはママさんダンプを象徴する”赤色”です(といっても実際にはママさんダンプは赤色とは限らず、緑色や黄色の商品も存在するのですが)。

歩き始めて間もなく、視線が赤っぽい物を捉えます。何かと思って近づくと、それは古びたリボンでした。

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残された古びたリボン

「もしかして、探検部のものか?」

と、一瞬そんなことを考えましたが、ちょっと考えるとそんなわけないと気づきます。彼らはトムラウシへ縦走するので、ここにリボンを残していく必要はないはずです。おそらく、富良野岳を目指した登山者の誰かが残したもなのでしょう。ただしこれは、富良野岳へ目指す人はこのルートを通るという証拠でもあるので、探検部もここを通った可能性は十分ありそうな気がします。

その後、夏には見ることのできない光景を楽しみながら捜索を続けます。しかし、3時間も歩いたところで、自分のやっていることに本当に意味があるのか疑問を感じ始めました。

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どうしたらこんな折れ方をするのか不思議なアカエゾ

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登山道上からは見ることができない立派なアカエゾ


疑問

「3時間程度で根を上げるとは早すぎだろう」と思われるかもしれませんが、なんとなく「このルート上には無い」と感じてきました。なぜかというと、古びたリボンもそうですが、このルートにはスキーのトレースがいくつも残されていたからです。

つまり、毎年いろんな人が富良野岳を目指したり、スキーをするためにこのルートを利用しているわけです。もし、そんな所にママさんダンプが放置されていたら、とっくに誰かが気づいているはずです。そうすれば回収するなり話題になるなりしているのではないか?

さらに、この原始ヶ原一帯は地元の「富良野山岳会」の方々が積極的に管理に関わられています。この周辺も熟知しているでしょうし、もしママさんダンプを見つけたらきっと放って置いたりもしないでしょう。

そして何よりも、こんな広大な範囲を何の手がかりもなく捜索するのは「さすがに無理」なんじゃないかと思い始めました。

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原始ヶ原は天然のスキー場の様


捜索中止

今回は泊まり込みで、本当はもっとガッツリ捜索する気概でしたが、とりあえず捜索を中止。適当なところにテントを張って、休憩することにします。だんだん暮れていく日を眺めながら、歩きながら考えていたことを整理します。

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夕日を眺めながら考える

実際に現地を歩いてみて感じたのは「このルート上には無い」ということと「さすがに無理」ということでした。そして同時に、自分の中である疑惑が持ち上がってきていました。

それは「本当にママさんダンプは木にぶら下がっているのか?」という点です。(続く)

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今回、当てもなく彷徨った軌跡


参考


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