新人理学療法士や学生さんは覚えておきたい,組織損傷と治癒課程(Healing Process)について
3月、国家試験が終わり、理学療法士の卵が旅立ちます.
今回、理学療法士として、臨床で患者さんの治療をするなら覚えておきたい、各組織の構造や治癒過程についてまとめました.
おかげさまで、こちらのnoteは多くの方にご覧いただきました。このnoteも作成から3年が経過しまし内容もさらに充実していきました!さらに多くの未来の理学療法士たちに組織の治療の基礎を身につけていただければと思います!
この知識を頭に入れておくことで,
など考えられることができるかと思います.
少々長いnoteなりますが, ご覧になっていただければと思います.
1.はじめに
理学療法とは,人体の運動学的,解剖学的,組織学的な欠陥を生理学的なアプローチを用いて治療を行なう事である.そして,”治療”には組織の名前や組織の作用だけではなく,組織の機能,構造を理解し,組織に対し効果的な生理学的な知識も必要となる. そこで今回は,理学療法士が治療対象となる組織の構造と損傷後の治癒過程についてまとめた.
2.理学療法士が扱う組織とは
上記のような組織を組織名称で細分化すると,
などが存在しますね.
写真のように多くの組織が存在する.僕たちは、この様々な組織の損傷や障害に対し、正しい生理学的な刺激を入れることで組織の治癒過程を促すことができます。
2−1.組織の機能と構造
①上皮組織
上皮には血管はなく,各細胞が集団になって連なっている.上皮細胞の働きは,表面の保護,栄養分の吸収,消化液などの分泌,ろ過、感覚作用などに関わっています。
■各上皮組織の特徴
それぞれの構造と形を組み合わせ、各組織の上皮組織を表現します
□単層扁平上皮
ろ過や物質交換を行う血管、リンパ、肺胞などにみられます。
血管を流れる血液中の成分には、血管の外へと移動することがあります。
物質が移動する際に、細胞が何重にも折り重なっていては移動が困難なため、物質の移動が起こる組織では「単層扁平上皮」がみられます。
□単層立方上皮
胃や小腸などの消化器官などの粘液にみられます。
□多列線毛円柱上皮
細胞の表面に線毛を持ち、粘液や微細粒子の運搬や排泄に必要な気管、卵管などにみられます。
例えば、気管の上皮にある線毛は、空気中に含まれるホコリなどのゴミを、体外へ排泄します。
□重層扁平上皮
物理的な刺激を受ける皮膚、口腔、食道などにみられる
もしも、皮膚の全てが単層構造であれば、少しの刺激だけで皮膚細胞が壊れ出血をしてしまいます。しかし、実際は裂けることはありません。
これは皮膚組織が細胞がいくつもの重なり合い頑丈にできているからです。
こういった頑丈な組織は「重層扁平上皮」が存在します。
□移行上皮
機能に応じて、形態の変化が必要な膀胱や尿管などにみられます。
尿がたくさん入っていれば膀胱は膨らみ、尿がなければ膀胱が萎みます。
このように伸び縮みする組織に移行上皮がみられます。
②.支持組織
支持組織は発生学的には中胚葉の間葉組織に由来しています
支持組織は血球や発芽細胞などの細胞と細胞間質としての線維と気質からなり,細かな細胞間の線維と線維以外には気質としてタンパク質や糖が含まれ(軟骨),無機物であるリン酸カルシウム塩を含むものまである(骨・歯).
支持組織は
1結合組織,2軟骨組織,3骨組織,4血管・リンパに分類される.
支持組織内の①結合組織では
と4つに分類され,各々の組織は他の組織の構造を支えたり,他の組織の機能の補助を行ったりする.
✍結合組織組織について
結合組織に含まれる組織は,下記の二つの組織が結合組織機能としての働きを担う.結合組織は組織の損傷が起こることでこれら結合組織の元となる血球などの細胞などが主に炎症期の反応や発芽を促す.また,組織を育て増殖し細胞の治癒を担っている.
1結合組織,2軟骨組織,3骨組織,4血管・リンパに分類されている支持組織は,主に下記の3種類の線維が各組織ごとに比率を変化させ存在している.
組織自体の構造や組織の修復に関わる支持組織内の線維は以下の3つに分かれそれぞれの機能に分かれる.
上記の組織のなかでも特にコラーゲン線維は組織に強度と形態を与える機能を有している.
組織治癒にもコラーゲン線維は重要な要素にもなっているが,逆に怪我などによる、機能制限の原因も担っている.
■ 膠原線維(コラーゲン線維)
コラーゲン線維は身体の部位によりその性質が変化する.しかし,人間のほぼすべての部分を形成してしているのがコラーゲン線維である.
以下に,その種類と機能について簡単にまとめている.
■ コラーゲンの形態変化
・弾性:力を取り除くと組織は元に戻る特性がある 高強度短時間の伸張
・可塑性:弾性制限を超えると組織は元の状態に戻らない(可塑性変形)
・Stffness:変形に対する組織抵抗力
・粘性:組織は組成の違いにより加わる負荷や負荷時間に対し異なる反応を示す。
高負荷:弾性反応
低負荷:可塑性反応
臨床の治療場面では,コラーゲン線維の改善には伸張力が感じない範囲の弱い伸張力までゆっくりとしたスピードで伸ばし保持する事で,コラーゲンの可塑性変化を引き起こし,組織が構造的に伸張していく.
■ コラーゲン線維の詳細
Ⅰ型コラーゲン(線維性コラーゲン)
最も普遍的な膠原線維を形成するコラーゲン線維.最も人体に多く存在するコラーゲン線維であり,腱・筋膜・皮膚・骨などに多く見られる.骨に大量に含まれ,骨に弾性力を持たせる働きがある.皮膚や真皮にも多く存在し,皮膚の強度を生み出す働きもある.おもなコラーゲン線維の主成分である.
Ⅱ型コラーゲン(線維性コラーゲン)
軟骨や眼球の硝子体,脊索に存在するコラーゲン線維で原線維として存在するため,線維を形成しているわけではない.
Ⅲ型コラーゲン(線維性コラーゲン)
リンパ組織、脾臓、肝臓、平滑筋(内臓の筋肉)などに見られる細網線維や胎生期そして創傷治癒の初期段階に出現するコラーゲン線維.大量の糖分を含み,Ⅰ型コラーゲンとⅢ型コラーゲンが共存しお互いの働きを助ける。
創傷治癒課程の初期段階で増殖し,傷口の閉鎖に役立つ,正常な治癒過程にのるとⅠ型コラーゲンにリモデリング(変化)し,元の皮膚組織や腱組織(Ⅰ型コラーゲン)に戻るが、Ⅲ型コラーゲンの時期に繰り返し外力を加え続けると、慢性炎症化し、Ⅰ型コラーゲンに変化せず、瘢痕組織(Ⅲ型コラーゲン)のまま治癒する.
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