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2024/2/4作品作り、キャスティングについての私見

「セクシー田中さん」の原作者である芦原妃名子さんが亡くなった事は、大きな波紋を呼び、連日ニュースやネットではその話題が加速し続けている。昨今、漫画を原作とするアニメや映画、ドラマや舞台などが多くその作品を愛する作者やファンはその出来栄えに一喜一憂しているが、その中に命で訴えなければならないような事はあってはならない。

作品と産業が同居しようとすると必ず生まれるパワーゲームは、表面に見えている部分と表面からは窺い知る事ができない部分がある事は多少は知っているつもりである。

今回の件で『ブラックジャックによろしく』、『海猿』の原作者である佐藤秀峰さんがnoteで書いておられる漫画家と出版社の関係と私が知っている世界の話は違います。
佐藤さんはnoteの結びに「いい編集者やいいテレビマンもいると思います。」と業界全体を悪と決めつけず、あくまで自分に起こった事として『海猿』の件を語り、芦原さんの死を悼んでいます。

私も佐藤さんに倣って自分の思った事や自分の見聞きした事のみを語ることとし、業界の噂話的な事は排除したいと思います。

キャスティングを分かりやすく言うと、「この役を誰に演じてもらうか」を決める作業です。主役から端役までの全ての演者を決めます。
主要登場人物はある程度選びます。
これは売れる、スケジュール、予算などにもかかわるため、プロ野球のオールスターのような感じはいきません。
またここに主演俳優との相性、スキャンダル、事務所やスポンサー、制作会社の意向などが加味されます。
同じようにスタッフ(脚本、演出、音響、照明とか)も決めていきます。
本当に作りたい作品とどんどん離れていく事の方が多いです。

私のいた業界の場合は動くお金は大きいのですが、手元に残るお金は少ないのです。「お金はできるだけお客さまに還元したい」と言う思いと、「少しでもいい作品を作りたい」と言う思いから多少利益を削ってでも作品のクオリティを上げたいと思っていたからです。
しかしそれも業界全体が同じ考えではなかったため、一方は赤字で一方は大儲けみたいな事が頻繁に起こっていました。

自分がどっちの立場になるかと選べれば、いい作品を作って大儲けできれば言う事ありません。しかしパワーゲームに巻き込まれて誰かに赤字を押し付ける立場になっている事もあります。

端役のキャスティングであれば、候補はいくらでもいます。
力量が変わらなければ誰を起用しても作品に与える影響は殆どありません。
しかしここにも主要俳優や事務所、大御所スタッフのごり押しはあります。
その結果、力不足の俳優をキャスティングするなんて事もあります。
端役なので作品には影響しませんが、忸怩たる思いです。

演者も必死です。
でもお客さまには関係ないのです。
いい作品を上手い俳優で観たいのです。

漫画や小説が好きで、映画化されると楽しみにして見に行きます。
終わって「大好きな作品をこんな映画にしやがって」と思う事が多々あります。映画の宣伝では美辞麗句ばかりが並びます。宣伝ですからね。
世界的に評価の高い作品や、栄誉ある賞を獲った作品でも、原作者やファンが望み満足しない作品は駄作だと思います。
その評価や受賞が純粋な作品に対する評価だと言う保証はないからです。

お金を払って作品を楽しみにしているお客さまこそが最大の評価者であり、目指すべき場所だと信じています。

改めて芦原妃名子さんの死を残念に思います。
我々にまっすぐに作品を届けてくれる作者がいなくなった事を重く受け止めたいと思います。