ジャズ行脚 19/47 @長崎
ジャズ行脚を始めたころからずっと心がけていたのは、47都道府県をなるべく地域が偏らないように廻ること。そう思って柔軟にスケジューリングしながら過去20地域ほど廻ってきたつもりだったが、ふとnoteのバックナンバー見返してみると九州のジャズ鑑賞だけはこれまで一度も達成していないことに気づいた。
普通の旅行とは違ってジャズ開催日を狙って訪問する必要があり、都合がつかないケースが多発するのは仕方ないといえばそれまでだが、なんとか念願の九州旅行第1回にこぎつけた。行き先は長崎。
長崎は就学旅行以来。当時は団体行動だったので個人の意思が99%制限をかけられた、いわゆるまあまあつまらない形式的な旅行だったわけだが、今回は打って変わって一切束縛のない旅である。友人と枕投げできないのは残念だが、今回ジャズ鑑賞の機会を通じて改めて訪問できたのは嬉しかった。
喜びを文章で表現するのは苦手なので、読者の皆様におかれましては一端のヤロウがニコニコしながら長崎の町を闊歩する姿を想像しながら以下の記事をご覧いただきたい。なんつって。
・出島
最初は駅前のホテルに荷物をおろしに行こうと考えていたが
空港から適当に乗ったリムジンバスが偶然にも出島の近くを通ってくれたので、計画変更で先に出島を訪問することにした。
もともとは海に面していたはずの出島は、周辺の埋め立てが進んだ現在は内陸に所在している。学生のころ歴史の資料集で見た絵画の鳥観図が脳裏に焼き付いていればいるほど、立地場所に違和感をおぼえる。
それでも入場するには表門橋を渡る以外のすべはないので、”孤島”感は味わうことができた。
中は倉敷美観地区のような城下町ぽい雰囲気を醸し出していた。
アトラクションのないディ●ニーに見えなくもない。
建造物の体感9割以上は入館可能。各施設がどのような目的で利用されていたか、展示物の歴史などが分かりやすく紹介されている。
小難しい説明やマイナーな人名とかはほぼ出てこないので、学生時代に歴史が苦手だった私でも十分に楽しめた。
場内の案内ツアーもあるらしい。
入口付近の案内所で仁王立ちでたたずんでいる、笠を被ったお兄さんがガイド役。
たぶん予約なしでいける。
館内の写真はさすがにネタバレなので掲載しない。
お土産屋さんも充実しているので旅の記念に買っていくとよい。
・大浦天主堂周辺
電鉄に乗って石橋電停へ。
長崎の電鉄は便数が多いし安いし本当に助かる。
大浦天主堂までの近道である「国際あいさつ通り」を通過することにした。
そもそも長崎は斜面都市なのでどこ行っても坂だらけ。ここも同じく険しい階段が続く。
道中に「祈りの三角ゾーン」と呼ばれる、神社&寺&教会(大浦天主堂)が接しているエリアもあった。
猫もいたよ。
細道を抜けると大浦天主堂の前に到着。
ここから先は観光ガイドマップでよく見かける風景である。
付近で放水している人たちがいて何事と思ったら消防訓練だったらしい。
一瞬ヒヤっとした。水だけに。
ソフトを買い食いしつつ坂を下りていった。
遠方に海岸も見えて大変美しい場所だった。
はじめは観光地どうしの距離感がつかめず電鉄を利用した。が、案外歩いても負担にならないことが分かったので、大浦天主堂から新地中華街までは徒歩で移動することにした。
新地中華街を抜けた先には観光通と呼ばれるショッピングモールに突入。
今回訪問した長崎市のエリアの中ではここが最も人の往来が激しかった印象。にぎやかだった。
観光ガイドに登場するおすすめの食事処もこのエリア周辺に所在しているものが多いようで、メシにこだわる旅行であれば訪問必須のスポットといってもいいかもしれない。
ちなみに私はコメダに行きました。
駅前に戻ってようやく昼飯。
アミュプラザ長崎のレストランフロアにある『うまや』さん。
鴨南蛮蕎麦と季節の天丼(卵つきで¥1,890)をいただく。天ぷらが美味かった。
斜面移送システム「てんじんくん」も見に行ってみた。
車道から住宅街に向かう道はほとんどが勾配の急な上り坂。地元の方は日々慣れているとはいえ、ご年配の方は上り下りに苦労されていると思う。
定員2名と輸送力のところは目をつぶらなければいけないが、こういった生活の足があるのは素敵なこと。
ただ、調べた限りこういった輸送機は市内に2台しかないようなのでもう少しあったらいいのに、と部外者の私も願ってしまう。
・島原散策
長崎駅周辺を楽しんだ後は島原半島に出てみた。
島原鉄道。年齢バレ防止のため何年振りとは言えないが超久しぶり。
修学旅行でぶっ倒れて検査のお世話になった島原病院に連れて行ってくれた、恩のある鉄道である。
乗車時は左側に座れば海岸を臨めるし、
右側に座れば雲仙岳を拝むことができる。
海岸付近には鴨が大量に泳いでた。
島原に着くまでの間ずーっと美しい風景のままで幸せだった。
多比良駅。
サッカーボールのモニュメントを見ると平山相太さんを思い出す。
島原駅到着。
駅舎がシャレオツ。
駅からまっすぐ直進すると島原城が見える。
城の周辺には武家屋敷通りや島原図書館がある。
姫松屋さんも立ち寄ったが撮り忘れた。美味しかったのに。。。
島原城から南に15分のところに白土湖あり。
それにしても鴨多すぎなんだよな。
山岳とのコラボレーションが絶景。
ゆとろぎ足湯。
長時間歩いた足を癒すのに最適。
地元のおばちゃんたちとちょっとだけ小話しさせてもらった。
飲み湯もいただいた。
飲んだだけ全身健康体になったような気がする。
思い込みは怖い。
・愛野駅(ジャズ鑑賞)
ジャズの演奏会場に向かう。
島原鉄道の上り方面に乗り、愛野駅で下車。
駅名どおり”愛”にまつわる何某で売り出している模様。
駅の張り紙を見た限りでは、愛をモチーフにした記念の切符が販売されたり、結婚された方の記念撮影にも使われる場所らしい。この勢いのまま大塚愛&はるな愛によるロケも試してみませんか。
駅窓口の営業時間が午前中だけ。
なかなか地元では見かけない時間帯で面白かった。
長崎に来たからにはリンガーハットは外せない。
長崎ちゃんぽん+にんにく餃子3コで980円。
とにかく量に圧倒される。美味いしリーズナブル。
駅から徒歩5分ほどの愛の夢センターへ到着。
愛の夢未来センターは図書館や多目的ホール等が併設された言わば市民会館のような役割を担う施設である。
私が訪問したときには入口付近で職業相談窓口も運営されていた。
さて当会場にて、ビッグバンドフェスティバル2025が開催された。
長崎県内で活動する5つの社会人ビッグバンド+特別ゲスト(学生)1バンドによる合同バンドフェス。
旅程の都合で全ては見れていないが、鑑賞できたものだけでも感想を書こうと思う。
▶雲仙ジュニアブラス ~Best Smiles~
地元で活躍されている中学生バンドがトップバッターで出場。
特定の学校ではなく、県内の学生さんが集まった地域クラブである。
バンド名にもあるとおり笑顔がモットーで、非常に楽しそうに演奏しているのが良く伝わったし、プラカードを掲げて踊ったり演奏中にジャンプウェーブを決めるなどエンジョイアブルな演出も凝っていた。
一般的なビッグバンドの形態にはとらわれず、Saxだけでも12~13人いたり、楽器の中にホルンや大太鼓がいたりと、なんとなくマーチング要素も取り入れたオリジナル性の高いバンドという印象。やはり人数が多いだけ演奏も力強く、音量デカめな音楽が好きな私には刺さった。
曲目としてはCaravanのような有名なナンバーも演奏しつつ、エルビスプレスリーメドレーといった(意図的かは分からないが)ジャズにそこまで詳しくない人や年配世代にも配慮したセトリとなっていたのが好感。
ソロが終わったあとの丁重なお辞儀が素晴らしかった。
これからも頑張ってください。遠方から応援しています。
▶佐世保ジャズスタディビッグバンド
パンフレット曰く「ジャズの街」と呼ばれる佐世保のバンドさん。
ハウステンボス近いのいいよね。
県北(たぶん大村よりも上のエリアをさすんだと思う)で唯一のビッグバンドだそう。平戸や佐賀から練習に来ているメンバーもいらっしゃるらしく、バンドのために四方八方から大集結する感じ、マジ最高だぜって思った。
古き良きスウィングジャズ主体のセットリストだった印象で、「●●のジャズアレンジ」のようなお遊び系は一切なし。なんとなくバンドの方向性を感じ取れた。
最も印象に残ったのは1曲目のIt Might As Well Be Spring。
これはあくまで私が思っている聞き手の心理にすぎないので共感されなくて構わないのだが、
掴みの1曲目で享受したインパクトによってそのバンドに対する印象が決まりやすいというか、もう少し言い換えると、2曲目以降に「次はどんな曲を演奏してくれるのだろう」というワクワク度が変わるケースが頻繁にある。
そういう意味で、この曲自体の特徴でもあるスウィング&アップテンポのリズムが聞き手にとって聞きやすい&心地よく、さらに佐世保ジャズさんの各パートの演奏に一体感があり、同バンドの鑑賞に深く入り込めた感覚が今でも強く残っている。本当に素晴らしい演奏だった。
ちなみにこの曲はアレンジャーによって様々なバージョンがあるが、今回のはMark Taylorさんという方によるアレンジである。
素敵な曲なのでぜひ聴いてみてもらいたい(↓)。佐世保ジャズさんのバージョンはもう少しゆっくりめだったかな。
他、Fun TimeのPfソロがめっちゃ良かったのと、
ボーカルさんが召されていたドレスの光沢が泣きかけの子犬の涙に負けないくらいキラキラ輝いて美しかったのと、岩崎宏美さんのようなのびやかな歌声が素敵だった。
▶アボイドノート・ジャズオーケストラ
大変恥ずかしながら「アボイドノート(avoid note)」が音楽用語であることを知らなかった。どうやら外れ音?とか不協和音を招く音(使っちゃいけない音、という意味ではない)といったニュアンスの用語らしく、その単語をバンド名に冠している。
名誉のため一応補足だが、もちろん不協和音を狙いまくるバンドというわけではない。インパクトのある名前を、というバンドリーダさんの談話もあった。
リズムの難しそうな曲を中心に演奏していた印象で、
特にHeatlandという曲は3/4拍子、4/4拍子(楽譜持ってないので正確にはわかりません)が交互にやってくる非常に複雑な1曲であった。似たようなリズム感の曲を演奏側で体験したことがある我が身の感覚からすれば、譜面があってもバンド全体でキレイに合わせられるまではそれなりに練習が必要だったりするのだが、実際に聞いた演奏ではパート全体で抜群の統一さが感じられ、アボイドノートさんの裏での鍛錬が垣間見えたというか、むしろこんなん朝飯前だぜくらいの余裕すら感じた。十八番曲なのかもしれない。
また、ソロ(Bass→Ts→Pf→Gt)も大変美しく、広大な草原を歩きながら聞きたくなるような壮大さを感じるメロディで、なんとなく手足の神経にジーンとした感動に近いものが来ていたのを憶えている。
演出面で最も印象的だったのはTsの男性で、
金髪+サングラス+帽子+赤色のパーカーというビッグバンドではなかなか見かけないカジュアルな服装が目に留まった。まるでプライベートでJリーグの試合を見に来て偶然テレビカメラにすっぱ抜かれた奥田民生さんのような雰囲気で、奇抜さ的な良い意味で”アボイドノート”であった。これだけ逸脱した身だしなみってことは演奏もすげーのだろうなと思ってたらやっぱり超すごかったし、聞いてみればどうやら長崎では有名なサックス奏者さんらしい。お名前は忘れた。
演奏のフィニッシュ時に手で空を切る際、普通は斜めにバサーっと切るところを指でV字をつくってキメ顔をしたりとか、曲の途中でシャウトをはさんだりとか(これはおそらくそういう曲なのだろうと信じたい)、型破りなパフォーマンス、そして茶目っけなお人柄が印象に残った。エンジョイ部門ではジュニアブラスに肩を並べて最優秀賞である。
▶諫早ビッグジャズオーケストラ
初っ端でウルトラクイズのテーマが披露されてハイテンション。
家族が同番組でそこそこいい成績まで進んだことがあるとかいう、世代じゃない私にとっては割とどうでもいい武勇伝を耳タコほど聞かされた幼少のころから、何度も繰り返し聴いたこのテーマが好きだった。Youtubeの録音音声で聴いても十分スケールを感じる1曲ではあるが、やはり生音になるとその音が耳だけでなく全身に響くようになるので感動の振れ幅が大きい。
そして最も印象的だったのはLa Fiesta。知らん曲だった。
先述したHeartlandと同じようにこれまた難しそうなリズムで、常時3拍子(6/8拍子?)が続くラテン風味の曲だった。普段から4ビートの曲ばっかり聞いてるとこういう変拍子が耳に残りやすい。
特に最初のリズム隊だけが登場する数小節からの徐々にホーンが入り込んで勢いが増していく部分と、中盤でドデカい大演奏からの急に静かになってまたテーマに戻るという緩急の鋭い部分が結構好きだった。
ちなみに調べてみればこの曲、Four Brothersで有名なWoody Hermanのバンドで有名らしい。曲どうしやアーティストとの関係性が見えると見識や想像が膨らんで楽しいですなあ。
後はAnthropologyのSaxソロでSister Sadieのテーマを演奏していたのに気づいた。他にも有名どころのフレーズを溜め込んでいたかもだが私のデータベースが足りず判断つかなかったので、将来の自分への宿題とする。
観光もジャズも本当に充実した旅だった。
また誰か連れて来たい。それまで何とか健康に暮らします。
以上
(次回 ジャズ行脚 20/47 @広島 に続く)