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若様のがっこう【第十話】
#創作大賞2024 #ミステリー小説部門
自分は所謂《問題児》なのだろうーー総次郎にも一応そういう自覚はある。
先だって保護者が学寮へ呼び出しを受けたこともそうであるし、通算三人目になるという鶴寮の寮監督の顔をぶん殴ってしまったことも自分の記憶には新しい。
それ以来鶴寮には寮監督がいないのだから、事態は自分達が思う以上に深刻なのだろうと総次郎には思われた。
思えば、自分はそもそも学寮
若様のがっこう【第九話】
#ミステリー小説部門 #創作大賞2024
剣術の上覧試合が行われることが決まってから、授業の予定がいつもとは少し変更になったよ。
いつもより剣術の授業が増えたんだ。僕らは中食を食べて再び道場へ戻った。
「うーん……稽古はずいぶんしてると思うんだけど、やっぱりまだまだ総次郎には勝てないよなあ」
稽古を終えた僕は竹刀を見つめて呟いた。何度か素振りを繰り返して首を捻る。
「当たり前だろ、くそちび
若様のがっこう【第一話】
#ミステリー小説部門 #創作大賞2024
【あらすじ】 物語の舞台は慶長十八年、江戸の街。
江戸城・西の丸に設けられた学寮は徳川治世下の諸藩の若様達が集められた若様のための学び舎。上杉千徳は米沢藩からここへ出仕している上杉家の若様。同寮の蒲生忠郷は織田信長のひ孫で徳川家康の孫。総次郎は仙台藩主・伊達政宗自慢の次男坊。実家同士の禍根もあり千徳ら鶴寮の三名は日々喧嘩が絶えない。千徳は従兄弟の長員
若様のがっこう【第八話】
#創作大賞2024 #ミステリー小説部門
その日の夜、僕らは消灯時間の前に準備をしておいた。
南の御殿の蟹の寮の生徒から借りてきたフランシスコのロザリオと、今日、僕らが見つけたロザリオの珠を一緒に僕らの寝所に置いた。一緒に総次郎が持っていた小さな絵も置いたよ。僕にはよくわからなかったけど、総次郎が言うにはキリシタンが好きそうな絵だっていうからさ。
忠郷は《マリアさま》の絵じゃないかって言っ
若様のがっこう【第七話】
#創作大賞2024 #ミステリー小説部門
「ねえねえ、玉丸? 覚えてるかい?」
「何を?」
外廊下の上から逆さまになって客間の縁の下を覗き込みながら僕は尋ねた。目はいい方だと思うけれど如何せん探し物は小さいから見逃せない。
「あの幽霊さあ、この部屋から消える間際にどこか指していただろ?」
ああ、そう言えばそうかもしれない―—僕は身体を起こして頷いた。火車は外廊下をぴょんと飛び跳ねると宙に浮い
若様のがっこう【第六話】
#創作大賞2024 #ミステリー小説部門
朝露煌めくよく晴れた皐月のとある日、江戸城の西の丸の庭には茶席がひとつ設けられていた。
学寮に出仕している大名家子息らの中でも、特に"問題あり”と見なされる生徒らの保護者が集められる茶席——いわゆる《呼び出し》である。
呼び出されていた客人は、
蒲生忠郷の実母(会津藩主生母)
伊達総次郎の実父(仙台藩主)
上杉千徳喜平次の育て親(米沢
若様のがっこう【第五話】
#創作大賞2024 #ミステリー小説部門
「どうも胡散臭え話だと思ってたが、これではっきりしたぜ……」
僕はなるべく音を立てないように注意しながら廊下を早歩きで総次郎に追いついた。
「ちょっとちょっと、総次郎。どうしたのさ、一体」
総次郎は勢い良く振り返ると、僕が持っていたロザリオを指した。
「お前が見た幽霊の生徒……自害したなんてのは嘘っぱちだな」
「どうしてそんなことわかるのさ?」
総
若様のがっこう【第四話】
#創作大賞2024 #ミステリー小説部門
その日、僕ら鶴の寮の三人は僕が寮へやって来て初めて消灯前の自由時間をいっしょに行動していたよ。
そう! みんなで幽霊の噂を確かめに行くのだ。
「火車はね、うちにある脇差しにくっついてる化け物なんだよ。こいつはむかし悪さをして僕の父上に脇差で喉元を切りつけられたの」
僕は声を抑え気味にして二人に説明をした。御殿の廊下はすっかり暗い。だから生徒の人影
若様のがっこう【第三話】
#創作大賞2024 #ミステリー小説部門
学寮での僕ら生徒達の一日の行動は特別な行事がない限りはだいたいいつも同じだよ。
午後の授業や稽古が終わると食事や湯浴みの時間があり、その後は就寝まで自由時間だ。だから鶴寮の僕らは授業以外では一人で好きに過ごしていることが多い。
忠郷は親戚や顔見知りが学寮に沢山出仕していることもあってこうした時間は部屋にいない事が多いけれど、今日は自分の文机の前でう
若様のがっこう【第二話】
#ミステリー小説部門 #創作大賞2024
細川忠利は実技の授業を受け持つ学寮の教師である。
指南役補佐として剣術や茶の湯などの授業の師範代を勤める彼が声を掛けられたのはちょうど午後の休憩時間中のことだった。中奥のお広敷にある自室に戻る途中の自分に血相を変えた小坊主が駆け寄って来たのである。
彼は北の御殿・鶴寮を担当するお部屋番だった。学寮在籍の生徒らの身の回りの世話係である。
「も、申し
note復活! 来るべき令和に向けてこれからちょいちょい書いて行きたいと思いますので、ぜひぜひ読んでやってくださいまし。
短編小説を追加しました!
米沢に行きました!
上杉博物館で開催されていた《上杉家の名刀と三十五腰展》を観に行くためです。
ううっつ・・・・・・とてもよかった!!!!とても!!!!