イワモトユウ

横浜を拠点に活動しているデザイナーです。音楽SNS「Chooning」や、オンライン営業システム「bellFace」をつくっています。 https://ezeroms.com/about/

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マガジン

  • bellFace idea note

    • 22本

    ベルフェイス株式会社で働くメンバーの創意工夫と試行錯誤を集めたマガジンです💡

  • 週刊エッセイ

    毎日書きためたメモを週末に整理して、一週間単位で記事にしています。

最近の記事

野良犬と外国人

台湾の町には野良犬がいる。 首輪もつけずに人混みを悠々と歩いている。大抵は台湾犬という犬種で、黒か茶色の痩身の中型犬だ。 滞在が一ヶ月を過ぎても、野良犬との遭遇には慣れなかった。日本では(少なくとも、僕が暮らす神奈川〜東京エリアでは)人間が日常生活を送るスペースにこのサイズの野生の獣が介入してくることはない。だから、台湾での野良犬との遭遇はいつも新鮮で少し緊張する体験だった。夜道を歩くときなどは、心は警戒しながらも、その独特の緊張感に魅了されているところがあった。 野良

    • いわき市の被災状況と、僕たちができること

      今月8日から9日にかけて、関東と東北南部は台風13号の猛威を受けた。その記録的な大雨により、福島県、千葉県、茨城県において浸水や土砂崩れなど大きな被害が発生している。 特に福島県いわき市では、1,000棟以上の住宅が床上浸水に見舞われ、発生から数日が経過した現在もまだ復旧作業が続いている。そこで僕は、いわき市に住む友人で、大学の後輩であるマー君に連絡をした。 彼は被害の発生直後から地元の友人たちと被災地域に入り、復旧作業にあたっている。電話を通じて、現場の状況と必要な支援

      • アメリカ、SNS依存症、本牧市民プール(週刊エッセイ:2023年9月 第1週)

        8月28日(月)薫慧の友だちの女性がアメリカから日本に遊びに来たので、彼女を案内するかたちで恵比寿の香り家の板蕎麦を食べに行った。 彼女はアメリカで生まれ育ったが、ベトナム人と台湾人の両親のもとで暮らしてきたので、アジアの文化にも触れてきている。しかし日本に来たのは今回が初めてで、まだ数日の滞在にも関わらず不思議に思うことがいっぱいだという。 「お祭りを見たとき、男性たちは下着姿だったが(フンドシのこと)あれは大丈夫なのか」 「日本人が英語を発音しようとするとき、独自の記

        • ティッシュペーパー、処理水、カーナビ(週刊エッセイ:2023年8月 第4週)

          8月21日(月)韓国から遊びに来た女性と高円寺の「ネグラ」という店でドライカレーを食べていると、彼女が鼻をかみながら「どうして日本のティッシュペーパーはこんなに薄いのか」と尋ねてきた。 僕はこれまでティッシュペーパーの厚みというものを疑がったことがなかったけれど、彼女は「実に不可解だ」という顔をしている。隣りにいた台湾人の薫慧にも確認すると「たしかに薄い」という。他の国の人と話していると、普段は気にも留めない生活のことが突然特別に見えてきて楽しい気持ちになる。 「えーー、

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        • 週刊エッセイ
          3本

        記事

          台湾まぜそば、グルーブ、船と海(週刊エッセイ:2023年8月 第3週)

          8月14日(月)テキストコンテンツのプラットフォーム「note」を使いはじめた。 手はじめに別の場所で書いた記事をいくつか転載したのだけど、フォロワーがいないのでまったく読んでもらえない。これではさみしいしむなしいので、まずはブログらしく日記を書いていきながら地道に読者を増やしていきたいと思う。 毎日書きためたメモを週末に清書し、それを一週間単位で記事にする。日々を違ったアングルから眺めるために、気になる時事も記帳していくことにした。こういうことをキチンとシッカリ続けてい

          台湾まぜそば、グルーブ、船と海(週刊エッセイ:2023年8月 第3週)

          『奇奇怪怪』の少年ジャンプ的な冒険心、あるいは上品さについて

          昨日は仕事を早めに切り上げて、代官山蔦屋書店に行ってきた。発売を心待ちにしていた『奇奇怪怪』という本を手に入れるためだ。 この本は、TaiTanと玉置周啓という二人のアーティストによる同名のPodcast番組を書籍化したものだ。映画、音楽、小説、漫画や日常の出来事を切り口に、文化や経済、社会を横断しながら縦横無尽に広がるトークが人気を博し、番組のフォロワー数は一万人を超える。 この番組が本になるのは、今回が初めてではない。去年の二月の出版に続く書籍化第二弾だ。したがってこ

          『奇奇怪怪』の少年ジャンプ的な冒険心、あるいは上品さについて

          最高の演奏によって数々の問題を振り払った物語(映画『BLUE GIANT』感想文)

          映画は終わったはずなのに、心の中にまだ音楽が鳴り響いていた。帰り道の高揚感はまるでライブ会場から帰るときのようで、音楽に包まれた世界で息をするような感覚からずっと抜け出せない。映画『BLUE GIANT』は、僕にとって音楽ライブそのものだった。 今年の二月から上映している本作は、同名の漫画を原作としたアニメーション映画だ。音楽と人間の物語を楽しみながら、ジャズ界の独自の価値観や挑戦についても理解を深めることのできるものになっている。 主人公の宮本大は「世界一のジャズプレイ

          最高の演奏によって数々の問題を振り払った物語(映画『BLUE GIANT』感想文)

          「うちらはずっと一緒」を乗り越えて、この世界を磨いていくために(ドラマ『ブラッシュアップライフ』感想文)

          「主演、安藤サクラ! 脚本、バカリズム!」 この人が演り、この人が書く。それだけで視聴者の期待を集めてしまう、日曜ドラマ『ブラッシュアップライフ』について考えてみたい。 先週末で全十回の放送を終えたこのドラマは、冬ドラマの中でもトップクラスの視聴率を獲得し、TVerの総合ランキングでも毎週『星降る夜に』とのデッドヒートを繰り広げた。押しも押されぬ今期の代表作だ。 物語の内容は、主人公・あーちんこと近藤麻美が、自分の人生を何度もやり直し、そのたびに生き方をブラッシュアップ

          「うちらはずっと一緒」を乗り越えて、この世界を磨いていくために(ドラマ『ブラッシュアップライフ』感想文)

          僕たちが東京とうまくやっていくための参考書(小説『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』感想文)

          プロフィールに「1991年生まれ。」とだけ記されたTwitterアカウントの投稿が「タワマン文学」と呼ばれて人気を集めているーーー本書は「麻布競馬場」という正体不明のアカウントが、2021年から約一年の間にTwitterに投稿したショートストーリーを集めて書籍化したものだ。 全二十編の物語は、毎回出自や性別の異なる人物が登場し、基本的に各話独立したものになっている。主人公が一人称視点で生い立ちから現在に至るまでを独白する形式が多く、その経歴に共通するのは、年齢が三十歳前後で

          僕たちが東京とうまくやっていくための参考書(小説『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』感想文)

          優れたユーザー体験をデザインするコツと、そのための訓練について

          「UXデザイン」という言葉がある。「User Experience」の略で、そのまま「ユー・エックス」と読む。Webサービスやスマートフォンアプリの開発に関わる人たちには広く知られた言葉だ。 「Webサービスをデザインする」というと、デザインの対象はパソコンやスマホに映る「画面の見た目」だと思われることが多い。間違ってはいないが、それよりも「その画面で経験されることを作っている」といった方が正確だ。だから、僕たちデザイナーは「UXデザイン」という言葉を頻繁に使う。それは作っ

          優れたユーザー体験をデザインするコツと、そのための訓練について

          玩具の世界に広がる粗雑な争いと未熟な解決策(映画『バービー』感想文)

          8月11日の夜、109シネマズプレミアム新宿で、映画『バービー』を観てきた。アメリカの玩具メーカー・マテル社が生み出した着せ替え人形・バービーを題材としたコメディ映画である。 日本での公開はアメリカから3週間遅れとなった。そのたった3週間の間に、この映画は興行収入10億ドルを突破し、早くも世界歴代興行収入ランキングで45位に入り込むという勢いを見せていた。日本でも高い注目を集めている今作だが、その背景には玩具としての絶大な人気と豊かな歴史、そして社会的な議論が広がっている。

          玩具の世界に広がる粗雑な争いと未熟な解決策(映画『バービー』感想文)