精神科医が考察する NeverEnding Nightmares② ~侵入的想起なるもの~
#1 はじめに
こんにちは。譲葉エミルです。
今日はNeverEnding nightmaresをプレイしていこうと思いますが、大先輩の名越康文先生が解説しておられるので、正直緊張しています。
Twitterで実施したアンケートでは少なくない票が入る知名度のあるゲームです。気合い入れてやっていきたいと思います。
発売から日が経っていることもあり、いきなりネタバレありでいきます。
未プレイのみなさんはお気を付けください。また、血糊がとぶような描写もありますので、苦手な方は先に進まないようにしてください。
今日は現代精神医学から見た譲葉なりの見解です。おもに、作者が煩っていたという「強迫性障害」と「うつ病」の2つの病気からの考察です。
#2 うつ病と強迫性障害とは何か
一見すると、うつ病の方が重篤そうに見えるので、うつ病の方がメインの病気に考えやすいです。譲葉も、うつ病が主で、強迫性障害が従の関係であると考えて解説を進めます。
というのも、ICD-10という診断基準の注記に「同時に存在する場合はうつ病を一次性と見なす」という記述があるからです。
うつ病は抑うつ気分、興味と喜びの消失、活動性の減退が主体で、精神科医が昔から対処してきた精神病のウチの1つです。普通は楽しいとお思うことに楽しさを見いだせなくなったり、抑うつ気分を自覚するようになります。ちょっと動いただけでも疲れやすくなったり、やる気が持続しなかったり、そういう状態があるとうつ病と診断できるようになります。
強迫性障害という病気の特徴は(おおむね無意識のうちに)「自分で自分を縛るルールを作っていき、エスカレートした結果、それによって身動きがとれなくなること」です。
例を挙げましょう。強迫性障害でよく知られるのは洗浄強迫です。手を洗わないと気が済まない、というものです。これは、「トイレからでたあと、手に様々な菌がついているのではないか」とか「家の外で不潔なものに触ったかもしれない」ということに不安になって何時間も手洗いや入浴に時間を使うというものです。
#3 「侵入的想起」なるもの
NeverEnding Nightmaresの作者は、automatonのインタビューで次のように語っています:
「考えを制御することができなくて、酷いことを頭で思い浮かべては自分をみじめな気持ちに追いやってしまう」ものがあるといいいます。
一方、精神科の診断基準のひとつのICD-10の強迫性障害の項目には、次のようにあります:
彼の言う「侵入的想起」は、ICD-10でいう「強迫思考」と共通しているように思います。同一のものとして考えれば、ゲーム中で唐突に挿話される自傷のイメージは 強迫思考の表現の1つと考えられます。
それらは、ゲーム中では形を変えて表現されていますが、概ね腕に関する描写が多いです。
ゲーム中では場面転換として用いられ、「これで進んだのか?」と首をひねることが多く、困惑させられますが、作者にとっては暴力的に生活の中で急にひらめき、思考に割り込んでくるのでしょう。しかし、内なる暴力的な体験とは対照的に、周囲の時間は穏やかに進んでいる、ということでもあります。
#4 おわりに
今日はゲームのテーマの1つであるうつ病と強迫性障害について話してきました。
現代の精神科的な視点は味気ない考察のようにみえるかもしれませんが、診断基準をベースに話をすると、こういう風になりがちです。
次回は、精神分析的な立場から話をしてみましょう。どうかお楽しみに!