精神科医が考察するガラージュ⑤ ~カニとカエル~
#1 境界を越える生物たちについて
サブゲームと思いきや、重要なガラージュのサブクエスト、釣り。
そこで釣れるのは「カエルやカニ」と説明されますが、現実のカニやカエルとは全く違います。
きょうは ガラージュを取り巻く環境の話をしていきます。
#2 汚水とは何なのか
汚水は雌機械の排泄物です。
雄機械は捕獲したカニやカエルを雌機械の腹部に入れ、白瓦斯を得ますが、使われなかったものは汚水として雌機械から排泄されます。
雄機械から雌機械は汚水から生まれた生物を受け取り、体内で白瓦斯に変換して、残りかすを汚水として排出します。残りかすの汚水から蟹や蛙が生まれて、また雄機械に捕獲されて雌機械に・・・という、食物連鎖を形成しています。
釣りをするのは、なんともいえない色をした湖沼のようなものですが、水たまりのようなものであるのは間違いありません。ユング心理学では水は無意識を差します。水がたまっている空間、海や沼などは母性の象徴とされ、生命の源と言い換えられます。
#3 なぜカニやカエルなのか。
カニとカエル、この2つの生き物には共通点があります。
カニやカエルは、ふだん水の中に棲んでいますが、陸上でも生きていけることです。彼らはガラージュの海である汚水と、機械の文明である陸上を行き来します。水はユング心理学では無意識を指し、ガラージュの機械の世界を行き来します。
カエルはその質感から女性を暗示します。生命の創造と多産の象徴とされることもあり、豊穣のシンボルともいわれます。オタマジャクシからカエルに育つため、変身や不死の象徴と捉えることもできます。
一方で、カニは骨を持たず、殻で全体を覆っています。カニは硬くて安全な場所にとどまっています。どちらも汚水という無意識の中に留まりながら、そこから離れることができる数少ない生物です。
つまり、ガラージュの世界の無意識と意識を繋ぐのがカエルであり、カニです。ガラージュの世界に主人公を押しとどめようとする白瓦斯はカエルとカニから作られます。
カニやカエルは主人公をこの世界につなぎ止めるために必要な拘束具なのです。
#4 喋るカエル ワンスイ
喋るカエル ワンスイは、完全版になって役割が変化しています。
1999年版ではスタッフの愚痴などを話すオマケ要素だったようですが、完全版では、その後のストーリーに繋がるキーキャラクターになっています。
ワンスイはユング心理学のいう、老賢人にあたると考えることができます。彼は、ガラージュの世界と外の世界を繋げる初めの一歩の役割を持っています。さっき話したように、カエルは水と陸を行き来できますから、ガラージュと現実の世界を結びつけるには適役です。
フロイトなら釣り具やワンスイの外見などから男性らしさの象徴だといい、後半の物語は、ワンスイと出会ってからの展開は男性らしさを取り戻してからの物語だというかもしれません。フロイトは先の尖ったものや伸び縮みするものは男性器を暗に意味すると言っていますが、物語の解釈としてはやり過ぎだと思います。
#5 最後に
今日はガラージュの世界を彩る不思議な生き物について解説してきました。ガラージュのカニやカエルは、現実世界のカニやカエルと同じ形をしていませんが、カニとカエルという名詞だけ共通していると考えれば辻褄があうようなき気もします。
そういえば、白瓦斯の英語表記が「Milky fuel」でした。
白瓦斯のことですが、描写だけ見れば、雄機械が雌機械から給油を受けているようにも見えるのですが、プレイヤーの側から見ると、雌機械が尖ったものを寄せるようになっています。フロイト的な考えに従うと、描写に矛盾があるようにも思いますが、どう考えるかは、画面の向こうのみなさまに任せることにします。
精神科医が考察するガラージュは今回で一旦一区切りです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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