エッセイ/ 「データ」が主導する社会の到来について
DX(デジタル・トランスフォーメーション)、CPS(サイバー・フィジカル・システム)、SOCIETY5.0
〈目次〉
1.「データ」が主導する社会の到来
2.「データ」の活用で全体最適を目指す
1. 「データ」が主導する社会の到来
現在、AI、IoT、VR/AR、3Dプリンター、自律運転、ドローンといった、最新のデジタル技術が、キーフレーズとして近年メディアを賑わせるようになりました。
いずれもデジタル技術を活用して私たちの生活をスムーズ/スマートにしてくれるテクノロジーです。
それらが生活やビジネスに浸透することで、社会全体に大きな変化が訪れ、私たち生活者のライフスタイルも新しいモデルに変化していきます。
このことをデジタル・トランスフォーメーション(DX)と言います。言い換えると、デジタルを活用して「新しいモデル」に変化させることです。
日本の通信行政を司る総務省はこうした社会の変化を「データ主導型の『超スマート社会』への移行」と定義し、「情報通信白書」(令和2年版)において次のように述べています。
■「情報通信白書」(令和2年版)一部抜粋
AI・IoTの社会実装が進むことによって、サイバー空間とフィジカル空間が一体化するサイバー・フィジカル・システム(CPS)が実現し、データを最大限活用した「データ主導型」の「超スマート社会」に移行していくこととなる。
そこでは、デジタル時代の新たな資源である大量のデータから新たな価値創造が行われ、暗黙知の形式知化、過去解析から将来予測への移行、部分最適から全体最適への転換が可能となる。
これにより、必要なモノ・サービスを必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供することにより、様々な社会課題解決と経済成長を両立する「SOCIETY5.0」が実現する。
端的に言うと、「フィジカル(現実)空間からデータを吸い上げ、サイバー(デジタル)空間において、AI等で分析を行なった結果を再びフィジカル空間にフィードバックすることで、よりよい社会を実現していく」と説明しています(図1-1)。
上述の総務省の「情報通信白書」には、直接、DXという文言は登場しませんが、「社会全体でDXを推進する」と考えることができます。
図1-1 サイバー・フィジカル・システムの概要
2.「データ」の活用で全体最適を目指す
DXを推進する上で、データは大きな意味を持ちます。
IoT機器などから取得したデータは、それを貯める段階で目的を明確にし、目指す変革の姿を思い描いておくことが重要となります。
いつから、どのような分析を行なうのかを決め、活用の方向性をイメージしてからデータの蓄積をスタートすることが大切です。
ただ、ひと口に「方向性をイメージする」と言ってもたやすいことではないと思います。
たとえば、ビジネスのデジタル化を目指すのであれば、現場の課題に目を向けることで、目的は比較的容易に見えてくるでしょう。
生産性が低い部分や、もっとコスト削減が実現できる部分は、現場の担当者であれば常に意識しているはずですし、データを見れば課題点を容易に見つけることができるでしょう。
ただ、そこにとどまっていたのでは、部分最適の域を脱することができません。
まず最初に目指すべきは、全体最適の世界です。
かねてより経営者は、業界全体、ビジネス全体について、俯瞰してみることが大切だと言われてきました。
そうすることで、先行きが読めない、たくさんのリスクが偏在している、あるいは、次のビジネスのネタは何か、といった、課題やチャンスが見えてきます。
加えて、なぜ全体最適が必要なのかをあらためて考えてみると、現在の社会では様々なモノゴトがネットワークでつながっているものだからです。
これまで分離していた組織や場所を越えてネットワークでつながって、データが相互にやりとりされることで成り立つ世界において、一部分にこだわっていては、問題は解決しません。
このように、相互に接続された全体最適を狙うという目的に気づき、方向性を見定めると、どういったデータが必要で、どのような分析を行なえばいいのか、その仮説/アイデアが浮かび上がってきます。
収集したデータは現場レベルの部分最適の視点で見たら、単純にコスト削減や生産性向上に資するものにしか見えないかもしれません。少なくとも現場の担当者は、そのような見方をすることが多いでしょう。
しかし、経営者であるなら、ビジネス全体、業界全体、サプライチェーン全体、あるいは、「このデータで課金できないか」「新規のビジネスのきっかけになるのでは」という全体最適の俯瞰した視点でデータを見ることが求められます。
そのような視点を心がけていれば、本格的なDX推進に向けて理想的なスタートを切ることが可能と考えます。
参照元: 「Kato Online」Webサイト
以上
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