見出し画像

量子コンピュータ


量子の持つ不思議な性質をコンピュータ
に活かす
できるかぎり簡易に解説


〈目次〉
1.はじめに
2.量子は「粒子」であり「波」である 
3.量子の性質を計算に用いる 
4.重ね合わせ
5.量子の状態は観測して初めてわかる 
6.量子もつれ
7.重ね合わせと量子もつれの使い道
8.まとめ


1.はじめに
量子コンピュータを学ぶ上で、根底にある量子力学という物理を知ることはとても大切である。

量子力学とは量子という非常に小さなモノの振る舞いを記述する物理学の分野である。

この「量子」というものは私たちの常識では考えられないような性質を持って不思議な振る舞いをする。

今回は、量子の持つ不思議な性質がなぜ量子コンピュータに活かされているのかについて、できるかぎり簡易に解説してみたい。

2.量子は「粒子」であり「波」である
量子の最も不思議な性質は、粒子と波の性質を両方持つことである。

粒子の性質
として、物体を1つ、2つと数えることができて、同じ場所に複数の物体が共存できないことがあげられる。

量子とは、原子そのものや原子を構成する物質の総称である。そのため量子が粒子のように振舞う 
ことは理解しやすい。

では波の性質とは何か?

空間的に広がっていて1つ、2つと数えられない
同じ場所に複数の波が共存して影響をおよぼし合う(重ね合わせ)。

量子はある時は粒子として、ある時は波として振舞う。この不思議な性質がポイントである。

3.量子の性質を計算に用いる
ではこの量子の不思議な性質をどのように量子コンピュータの計算に応用するのだろうか?

「重ね合わせ」と「量子もつれ」という量子特有の2つの原理を利用することで、従来よりはるかに高速なスピードで計算を行えることが確認されている。

4.重ね合わせ
量子コンピュータではビットの0/1というのは量子の状態で表す。磁石に例えるとS極が上を向いている状態を0、N極が上を向いている状態を1として0/1を表現している。

従来のコンピュータではビットの値は必ず0か1かに決定する(電流がONかOFFか)。しかし量子ビットはなんと0でもあり1でもある状態をとる。このことを状態の重ね合わせと言う。

この現象は先ほど説明した量子が波の性質を持つことに由来する。波は複数の状態の波が同じ場所に共存して影響をおよぼす。そのため波の性質を持つ量子も複数の量子が共存するという現象がおこるのである。

5.量子の状態は観測して初めてわかる
量子の状態は、最終的に0か1かのどちらかである。ではいつその状態が判明するかというと、量子の状態を観測した瞬間に量子の状態が確定する。

先ほども書いたように、量子は波として0の状態と1の状態が重ね合わさった状態でいる。そのため私たちの目には見えない。

しかし量子は粒子でもあるので、私たちが量子を粒子として「観測」しようすると途端に波は1点に集まって粒子として振る舞うのである。

つまり量子は状態を観測するまではどちらの状態も取りうるけれど、観測した瞬間量子の状態が確定するということである。これを波束の収縮と言う。

6.量子もつれ
量子もつれとは複数の量子間に生じる現象で、1つの量子状態が確定すると、他の量子の状態にも影響が及ぶ現象を示す。

従来のコンピュータでは隣のビットが0から1に変わったからといって自分に影響が及ぶわけはないですよね。しかし量子ビットではそのような現象が起こりえる。

7.重ね合わせと量子もつれの使い道
これらの2つの現象は量子力学の公理と言われ、なぜということが説明できない。そういうモノだとして受け入れるしかない。

では重ね合わせと量子もつれによって何が可能になるかというと、一度に何通りもの計算が可能になる。

重ね合わせを利用することで1度に複数の状態を作り出すことが可能となる。例えば2つの量子ビットを考えると、それぞれの量子ビットが0と1の2つの状態の重ね合わせをとることができる。

これが10個になると1024通り、30個では、1073741824通りとなる。重ね合わせを利用することだけでも、ものすごい数の状態を一度に表現できる。この状態で演算を行うことで一度に何通りもの計算が可能となる。

さらに量子もつれを利用することで、一方の状態が確定するともう一方の状態も確定する状況を作り出することかできるため、計算処理を減らすことができると考えられている。

8.まとめ  
いままで説明した内容を簡潔にまとめてみた。

・量子は粒子と波の両方の性質を持つ。

・量子には重ね合わせと量子もつれという量子特有の現象が存在する。 

・重ね合わせとは複数の状態が共存して存在することである。 

・量子もつれとは一方の状態が確定するともう一方の状態に影響する現象である。

・二つの現象は、量子コンピュータの高速計算処理において重要な役割を果たす。


以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?