【1話完結短編小説/場面緘黙・聴覚障害/それぞれの声】
プロローグ
選択性緘黙症(SM)を抱える高校生の健太は、人前で話すことができないという深い苦しみを抱えていた。
幼い頃、クラスメートから「声が変だ」と言われたことがトラウマとなり、それ以来、自分の声を他人に聞かせることが怖くなった。
健太は自分の内に閉じこもり、孤独な日々を送っていました。彼の心はいつも曇り空のように重く、どこか遠くを見つめる瞳には寂しさが滲んでいました。
第1章: 新しい出会い
ある日、学校の掲示板で手話サークルの存在を知った健太は、参加をためらっていましたが、心の奥底で何かが変わることを求めていた。
勇気を振り絞って手話サークルの扉を開けると、そこには聴覚障害を持つ明るい少女、咲がいました。咲は微笑みながら手話で話しかけ、健太に温かく接してくれました。
「こんにちは、私は咲。手話を学びに来たの?」と、咲は優しい笑顔を浮かべながら手話で伝えました。
健太は緊張しながらも頷き、手話で「はい、健太です」と返した。
咲の手は柔らかく、温かく、健太の心の奥に静かに触れるようでした。
咲は健太の手話を見て、「一緒に手話を学びましょう。私ももっと上手くなりたいの」と言いながら、彼の手を取る。
その手の温かさに健太は少しずつ心を開き始め、咲の優しさに触れるたびに、心の氷が溶けていくのを感じた。
第2章: 言葉の壁を越えて
手話サークルの活動が進む中で、健太と咲は次第に親しくなった。
連絡手段としてLINEを使い、文字での会話も増えた。
咲の明るさと優しさに触れ、健太は次第に自分の殻を破り始める。
ある日、咲が「なんで話せないの?」と手話で尋ねた。
健太は一瞬言葉を失い、その場を逃げ出してしまいました。
数日後、健太は一生懸命手話を覚え、咲に「昔、声が変だと言われてから、人前で声が出せなくなった」と手話で伝えた。
咲はその言葉を見て、静かに頷き、健太の肩に手を置いて慰めた。咲の手の温もりは、健太にとって言葉以上の慰めでした。
第3章: 遊園地での発表
手話サークルで、遊園地のイベントで手話を使ったパフォーマンスをする機会が訪れた。
先生や咲も楽しそうに準備を進めていた。
当日、咲は観客のおばあさんに「タオルを敷いてください」と手話で伝え、その通訳を健太が行った。
おばあさんは感謝の言葉を伝え、咲は微笑む。
手話サークルの発表は大成功で、健太と咲は共に達成感を味わった。
観客からの拍手と笑顔に包まれ、健太は初めて自分の存在が受け入れられたと感じたのだ。
第4章: 明かされる過去
放課後、手話サークルのメンバーが咲の過去について話しているのを、健太は部室のドア越しに聞いてしまった。
咲は聴覚障害と分かった途端に親に捨てられ、里親に育てられたということを知り、健太はショックを受ける。
彼は咲がいつも明るく振る舞っている裏に、そんな過去があったことに心を痛め、声を出して泣いた。
第5章: 新たな決意
健太は弱々しい声で両親に「俺、声を出して頑張る」と伝えた。それから晴れの日も雨の日も、健太は放課後に声を出す練習を続けた。
「雨の日は声が自分にしか聞こえないんだ」と風邪をひき両親に答えた。
第6章: 咲の悲しみと希望
健太が声を出して練習を続ける中、咲もまた自分の過去と向き合う日々を過ごしていた。
彼女は里親に育てられたものの、本当の家族の温かさを知らずに育った。
それでも、手話サークルでの仲間たちと過ごす時間が、彼女の心を少しずつ癒していった。
ある雨の日、咲は健太に「私の過去を話してもいい?」と手話で尋ねた。その手は震え、目は泣きそうになっている。
健太は頷き、咲の話を静かに聞いた。
「私が聴覚障害だと分かった途端、両親は私を捨てた。里親に育てられたけれど、心のどこかでずっと孤独を感じていたの。手話サークルでみんなと出会って、初めて本当に笑えるようになった」と咲は涙を浮かべながら手話で伝えた。
健太は咲の手を取り、「ありがとう。君がいてくれて本当に良かった」と手話で返しました。咲は微笑み、健太の手を強く握り返しました。
第7章: クライマックス
手話サークルの発表会が成功し、健太と咲は一緒に達成感を味わった。
観客からの拍手と笑顔に包まれ、健太は初めて自分の存在が受け入れられたと感じる。
しかし、その後も健太は自分の声を出すことに恐怖を感じ続けていた。
ある日、次の発表会の練習で、健太は咲に手話で「僕はまだ自分の声を出すのが怖い。」と伝えた。
咲は健太の手を取り、「君の声はきっと素敵だよ。想像だけどね」と手話で励ました。
第8章: 最後の挑戦
健太は咲の言葉に励まされ、再び声を出す練習を続けた。
そして、手話サークルの次の発表会が近づく。
健太は舞台に立つ前、緊張で手が震えていましたが、咲がそっと手を握り、「一緒に頑張ろう」と手話で伝える。
発表会の日、健太と咲は共に舞台に立った。
健太は深呼吸し、観客の前で初めて自分の声を出したのだ。
彼の声は震えていたものの、咲の支えがあったおかげで、自信を持って話すことができた。
舞台が終わり、部室で健太は咲の手を取り、自分の喉仏に当てる。
一瞬の静寂が二人を包む。
そして、目を見つめながら「ありがとう!大好きだ!」と声を出して伝えた。
咲の瞳から涙が零れ、彼女は微笑みながら親指と人差し指をくっつけてそれぞれ、2回上げました。健太はその瞬間、全ての苦しみが報われたように感じた。
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