浮揚術の実例として、浮かせる技法オンパレードともいえる、ポケモンフィギュアを見ながら解説していきましょう。
僕が手掛けるポケモンは、トミーから『食玩によるゲームの駒』として発売されたものが最初でした。もちろん、ポケモンは当時から山ほどグッズやフィギュアの類が発売されていましたから、それらとは全く違うポーズや能力表現、生き生きした活躍を産み出すのが造形屋としての矜持だと考え、「誰も見たこと無いポケモン立体」であることを心がけてデザインし、造形してきました。
その後も、(株)ポケモンのゲーム駒用に作られたもの、ポケモンカードとのセットとして作られたもの(U.S.A.)、任天堂の本家ポケモンゲームの予約特典用、劇場版ポケモンの来場者特典、セブンイレブンのドリンクの首掛けボトルキャップ・・・など20年ほど(最近も)作り続けているので、触れられた方も多いのでは?
ポケモンはそれぞれが明確な特徴や特殊能力を持っていますから、それを形にするためには、ヴィネット的表現が似合っています。ゲームの駒やボトルキャップのような、狭い土台の上で動きを表現するために、浮揚術が欠かせません。
◆瓦礫浮揚系
前回、前々回で解説した、瓦礫の浮揚は、ポケモンでも結構使っています。
特に、超能力系ポケモンは、その力に伴って周りの瓦礫がぶわっと浮き上がる・・・という演出を加えるパターンを多用します。これは90年代のアニメや漫画における、超能力モノ表現の影響かもしれません。
超能力ではありませんが、宮崎アニメでも、驚いたときに女のコの髪の毛が逆立つかのようにぶわっと持ち上がる不思議演出、ありますよね。
◆死角から支える
浮揚術の一回目で魚を例に語った、浮かせる基本(死角で支える)の実践例です。いつも岩で支えるわけではありません。
前々回でも写真を載せたマナフィとジラーチは、典型的な「背景から支えて浮かせる」パターンです。
◆トリッキーな構図
浮かせるというより、飛ぶ様子です。様々な表現がありえます。
◆浮揚術まとめ
浮揚術といっても、浮かんで見えるとか飛んで見えるとかの不思議を描くだけではありません。むしろ、それぞれのキャラクターが動いているところ・・・グラビア立ちではない、歩き、走り、アクションしているところを描くためには、死角で支えるという考え方が必須であり、応用範囲は無限にあるのです。