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遅ればせながら、詩の雑誌「びーぐる」41号: PIW通信「大崎清夏特集」

「ファシズムの夏」と題した日記に「びーぐる」41号の秋山清特集について書いたが、その直後、日本から雑誌が届いた。

表紙の写真はずいぶん昔ミュンヘンで撮ったもので、自分ではすっかり忘れていたのだが、細見和之さんが掘り出してきてくださった。毎回特集の企画を担当する者が、表紙の写真も選ぶというしきたりなのだ。秋山清のイメージとこの写真がどう結びつくのだろうと若干不安だったのだが、手にしてみるとなんとなくハマって見える。デザイン担当の倉本修の腕のおかげだろう。

秋山清についてはすでにこちら(↓)で書いたので、ここでは別の記事について書くことにしよう。

まずはPIW通信。僕がエディターを務めているウェブ雑誌「Poetry International Web」のコーナー、今回が19回目である。「びーぐる」創刊以来、新しいコンテンツをアップする都度書いているはずだから、大体年二回の割合で日本の現代詩を紹介してきたことになる。

今回は「大崎清夏」特集である。友人の栩木伸明から、大学の教え子で詩人になった人がいると名前だけは聞いていたのだが、連絡を交わしたのは「びーぐる」40号で海外詩の翻訳を依頼したのが初めてだった。そして今年の8月、BBCラジオの仕事で富士の樹海を訪れ、一緒に森の中を歩きながら詩を詠んだり、インタビューに答えたりした。

翻訳を依頼したとき、自分の詩の英訳はあるのかと聞くと、ジェフリー・アングルスが何篇も訳してくれているという。早速送ってもらったところ、とても面白い。樹海で会ったときに詳しい話を聞いて、それを元にPIWの紹介エッセイを書こうと目論んでいたのだが、実際に行ってみるととてもそんな余裕はないのだった。

そこで里に戻ってきてから、Face Timeでインタビューを行った。冒頭で「自分のことを叙事詩人だと思いますか、抒情詩人だと思いますか」と訊ねると、迷うことなく「叙事ですね」。我が意を得たりと僕は思った。彼女の作品を初めて読んだときの印象を、ぼくは「PIW通信」にこう書いている。

入力作業を通してこれらの八編を繰り返し読んだが、そこから浮かび上がってくるSayaka Osaki像は、個の内面に深く降りてゆきながら、同時に自分が属する共同体のあり方に思いを馳せ、その両者を重ね合わせるように書いてゆく詩人、であった。その文体はシンプルで乾いている。敢えて言えば、日本の現代詩には珍しいEpic Poet(叙事詩人)で、その点では本誌が今号で特集している秋山清の詩に通じるところもあるだろう。

だがその「共同体」が、3.11の大震災に深く結びついたものであるということには、インタビューをするまで気が付かなかった。だが言われてみれば、「青いビニールシート」を始めとして、徴はあちこちに散りばめられていた。

一時間以上かけて生い立ちから個々の作品の字句にいたるまで根掘り葉掘り訊いた上で書いたのが、以下のPIWの紹介エッセイである。

日本の詩を英訳と併せて読むというのはなかなか面白いものです。一読して英訳が間違っているんじゃないかと思い、何度か原文を読み返すうちに、自分の読み方が間違っていたと気付かされることもある。PIWではひとつの画面で原文と英訳が併記されているので、ぜひ試してみてください。

インタビューの終わりに「実は四元さんとは10年以上前に一度お会いしているんですよ」と言われた。ぼくが早稲田大学の栩木伸明の授業に招かれて詩の話をしたとき、学生のなかに大崎さんもいたのだそうだ。参った、と思った。


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