「視覚障害について、何も知らなかったからこそ向き合い続けた」Eye Navi統括部長が「視覚障がい者の歩行支援」に携わりつづける理由
スマートフォンひとつで、道案内と障害物検出、歩行レコーダー機能を備えた歩行支援アプリ「Eye Navi」。
これまで、Eye Naviは視覚障がい者の方を中心に、「誰もがどこへでも、自由に楽しく移動できる社会の実現」を目指して、サービスを提供してきました。
そんなEye Naviを開発するメンバーに、サービスにかける想いを聞く「Eye Naviインタビュー」!
今回は、Eye Naviを開発する株式会社コンピュータサイエンス研究所で営業企画・企画開発統括部長を務める髙田将平さん。
Eye Naviの立ち上げ当初から、メンバーの一員としてサービスの成長を見守ってきた髙田さんに、Eye Naviに携わりつづける理由についてお聞きしました。
視覚障害について何も知らない。手探り状態から開発がスタート
ーーまず、髙田さんが現在やっていることを教えてください。
髙田さん:
株式会社コンピュータサイエンス研究所の営業企画・企画開発統括部長として、営業、企画、開発、広報、総務、人事など、幅広い業務に携わっています。また、Eye Naviでは国の支援事業の統括及びプロジェクトマネージャーも担当しています。
ーー多岐にわたって活躍されているんですね。Eye Naviに関わりはじめたきっかけは何でしたか?
髙田さん:
8年ほど前に、盲導犬の代わりになる歩行支援ロボットの開発プロジェクトが、社内で立ち上がったことがきっかけです。
このプロジェクトは、代表の林が前職のゼンリンに勤めていたときに構想していたものでした。
ただ、僕自身はもともと社内の別のプロジェクトに関わっていたので、正直視覚障害については全然知りませんでしたし、盲導犬も街中で見たことがある程度の認識しかなかったんですよね。
ーーそうだったんですか…!視覚障害について詳しくない状況から、どのようにEye Naviを開発していったのでしょうか?
髙田さん:
最初は、本当に手探り状態からスタートしました。「そもそも、視覚障がい者の方にとってどんなロボットが必要なんだろう?」という根本的な部分から出発しましたね。
弊社はソフトウェアを作る会社だったので、自社だけでロボット開発をするのは難しく、ハード面の課題を解決するためにロボット開発の技術がある他社さんの力を借りることに。
また、現在Eye Naviのアドバイザーをしてくださっている赤松さんから話を聞くと同時に、多くの方からフィードバックをいただきながら、開発する日々が続きました。
ーーこれまで世の中になかったものを開発するのは、骨が折れそうです。
髙田さん:
実際、リリースまでに7年の歳月がかかっており、決して平坦な道ではなかったです。でも、ゼンリンで盲導犬ロボットの開発に実際に携わっていた研究者2人が、Eye Navi立ち上げの際にプロジェクトを引っ張ってくれたことは、とても心強かったです。
僕はそんな研究者や協力者が作りたいものを実現できるよう、補助金の取得に奔走していました。
しかし、いざ開発が始まっても、法規制や通信技術の課題などをクリアできなくて、なかなか実用的なロボットの開発が進まず…。
「盲導犬ロボットを作っていて、本当に喜んでくれる人はいるのだろうか?」という不安な気持ちを抱える日も正直ありました。
「iPhoneアプリへの移行」と「深層学習(AI)の導入」が、Eye Naviのターニングポイントに
ーーそんななか、Eye Naviの実用化に至るまでのターニングポイントはいつでしたか?
髙田さん:
Eye Naviには、大きくわけて3つのターニングポイントがあったと思います。まず最初のターニングポイントは、ロボットからiPhoneアプリへの移行が決まったタイミングです。
そもそも盲導犬ロボットが難しいなら、スマートグラスやネックスピーカーにしてみようと実験を重ねたのですが、なかなか実用化できるようなものは生まれず…。
最終的に、誰もが持っているスマホ1つで歩行支援ができれば、多くの人を助けられるんじゃないかという発想に至ったんです。
ーーそれはとても大きな変化ですね!
髙田さん:
そして、2つ目はアプリ開発に最も大きく貢献したのは、「深層学習(AI)」の導入でした。それまでの画像解析では精度に限界があったのですが、AIを使うことで性能が格段に上がったんです。
アプリの実用性が高まると同時に、視覚障がい者の方と一緒にβ版の体験会を実施するように。そこで受け取ったフィードバックも、Eye Naviを大きく進化させる3つ目のきっかけになったと思いますね。
ーーβ版の体験会では、どんなフィードバックがありましたか?
髙田さん:
特に印象的だったのは、「少しくらい案内を間違えてもいいから、とにかく周囲の情報が欲しい」「はやくEye Naviを使えるようにしてほしい」という声でした。
それまではアプリを通じて、完璧な歩行支援を実現しなければならないと考えていたのですが、完璧を目指すよりも、多少の誤差や間違いがあってでも情報を提供する方が役立つんだと気づかされたんです。
ーー当事者のリアルな意見が、サービスへの考え方を変えるきっかけになったんですね。
髙田さん:
そうなんです。また、正直それまでのロボット開発では「これは実用的ではない」といったネガティブなフィードバックが多く、心が折れそうな時期もありました。
アプリにしてからは「これなら使えそう!」「早く日常生活でも使ってみたい!」といったポジティブなフィードバックに代わり、開発側のモチベーションも大きく変化したと思いますね。
▼Eye Naviの開発秘話はこちら
たくさんの出会いが「視覚障害のある人の生活を豊かにしたい」という想いに繋がった
ーー7年という長い歳月をかけてリリースされたEye Naviですが、晴眼者である髙田さんが、Eye Naviに携わりつづける理由は何ですか?
髙田さん:
冒頭でもお話したとおり、最初は視覚障害というものに対する理解も深くなかったですし、周囲に当事者がいたわけでもない。自分がなぜ、Eye Naviに携わりつづけるのかと自問自答したこともありました。
でも、Eye Naviの開発を通じて、たくさんの視覚障がい者の方々と出会ってきた。
「出会った人々の生活をより豊かなものにしていくために、Eye Naviを通じて自分のできることをしたい」ということが理屈を抜きにした、僕自身の素直な想いだと気がついたんです。
ーー多くの出会いによって、髙田さん自身も変化していったんですね。
髙田さん:
それに加えて、Eye Naviを続けてこられたのは、やっぱり代表の林の情熱に尽きると思います。
長い開発期間のなかで、売上が立たなかった時期もありましたし、そもそもリリースしたアプリを使ってもらえるかもわからなかった。
先が見えない状況でも、常に10年先を見据えて、Eye Naviを支えつづけてきた代表がいたからこそ、僕も実現に向けてできることに注力できたんだと思います。
ーー代表や会社の仲間、そしてユーザーさんとの出会いによって、Eye Naviは実現できたと。
髙田さん:
そうですね。とはいえ、まだまだ世界には目が見えづらい・見えずに生活に困っている人がたくさんいます。
統計データによると、世界人口のうち約3億人以上が視覚障害があるといわれているんです。
日本だけで見ても、160万人以上の方が何らかの視覚障害を抱えながら暮らしています。まだまだ僕たちが働きかけられる人々はたくさんいるわけです。
『誰もがどこへでも自由に楽しく移動できる社会の実現』を全力で目指すことで、ひとりでも多くの方の人生が豊かになればと思っています。
ーーこれからのEye Naviの発展が、楽しみになってきますね!最後に、Eye Naviを使っている方へのメッセージをお願いします!
髙田さん:
Eye Naviはファンのみなさんによって支えられているサービスです。これからも、そんなみなさんの生活をよりよいものにするために、ただの歩行支援としてだけでなく、毎日開きたくなるアプリにできるよう、さまざまなコンテンツを発信する構想も練っています。
今後もスピード感を持って開発を進めていきますので、ご期待ください!引き続き、応援をよろしくお願いいたします。
(取材・執筆・撮影 目次ほたる (@kosyo0821))
視覚障がい者歩行支援アプリ「Eye Navi」について
Eye Naviは、スマートフォンひとつで、道案内と障害物検出、歩行レコーダー機能を備えた歩行支援アプリです。
2023年4月にリリースされ、リリース開始から4ヶ月ほどで1万ダウンロードを突破しました。
Eye Naviの特徴は、AIを活用した「障害物・目標物検出」と、視覚障がい者に寄り添った「道案内」が組み合わさっていること。
この2つを実現することで、目的地までの方向や経路、周辺施設、進路上の障害物、歩行者信号の色、点字ブロック等を音声でお知らせできるアプリになっています。
Eye Navi公式ページ
アプリのダウンロードはこちらから
株式会社コンピュータサイエンス研究所 ホームページ
お問い合わせ窓口