起業を成功させる定石(2)あなたは何業か
これから事業を始める人も、既に始めてしまった人でも、自分の事業を何と定義するかについて、しっかりと向き合うことが大切です。
「あなたの事業は何業ですか?」
このように聞かれた時に、あなたは何と答えますか。
飲食業、菓子製造販売業、機械製造業、鉄製品加工業、・・などなど、産業業種分類のたぐいに分け方で一括りにしてはいけないと考えます。
起業する際には、事業のコンセプトをはっきりとして自事業を定義することが求められます。
その理由は、競争要因(新規参入の競争の渦の中に入るわけですので、既存事業をしのぐ「強み」を明らかにする)が必要になるからです。
競争要因を明確にするためには、まず第一に「顧客にとっての最重要便益」を中心に考える事が大事です。
またさらに、「抽象化度を高めることにより事業戦略の選択肢が増やせる」というこも念頭に置いておく必要があります。
まず、「顧客にとっての最重要便益」について考えてみます。
例えとしてよく引き合いに出されるのが、次のような事です。
ある、ドリルメーカーの例:「顧客はドリルが欲しいわけではなく、『穴』が欲しいからドリルという手段の一つを選択する」ということです。
すなわち、ここでは「お客が必要な時に、穴を空けたい場所に、穴を空けたい素材に対応できる」これが、顧客にとっての「最重要便益」であり、外してはならないニーズですね。
こうなるともはや、その事業(ドリルメーカー)は「穴あけ企業」となるわけです。
顧客が欲しがる穴を最も最適に提供できる会社ということになりますね。
トンネルをつくる!井戸を掘る!これも穴を作ることですね。ドリルメーカーが、一気にトンネル掘削機、井戸掘削機の刃を作るメーカーに変わるチャンスが自事業の定義の見直しによって、生まれました。
これは例えばエアコンを欲しがる人にも同じことが言えます。「顧客はエアコンが欲しいわけでなく、○○の状態を手に入れたい」ということですね。
この○○は・・・・
そうです「快適な空調空間」ですね。
そう考えると、顧客が求める便益に即した事業を展開していこうということになります。
果たして、「快適な空調空間」を提供するわが社のマーケットは「快適な空調空間を求める」人になります。
さらに、深めていくと、「快適な(仕事、勉強、あるいは家庭、あるいは暮らしの)環境を求める人」とも言えます。
さて、エアコンメーカーから「快適な環境を求める人のための商品・サービスを提供する会社」になりましたね。
そうです、このように思考を展開していくこと、言い換えれば、さらに上位概念に自事業を定義しなおすこと、これこそが、第二のポイントであった「抽象化度を上げる」ということになります。
同様のことは、実際の映画業界の衰退時期についての事例でも検証されています。戦後映画業界がテレビの普及やレジャーの多様化により衰退していった時期がありました。それは、自事業を「映画を作って、映画館で観覧させる事業」という狭い事業観にとらわれていたことが原因であると言われています。自事業を「映画を作る事業」ではなく「生活者の増えた余暇時間を消費させる『娯楽提供事業』」と定義しなおしたら、大きく変わっていたと言われています。
それまでの映画業界が持つ資産、人材、機材、スタジオ、広い映画館のスペース、敷地(当時はドライブシアターで、車に居ながらにして外で大スクリーンを観るという場所もたくさんありました)を活用して、新たな娯楽スペースと娯楽コンテンツを提供すると戦略を転換していたら、時代に乗ったビジネスになっていたと考えられます。
顧客のニーズ・最重要課題として求める便益に対して、自事業の強みを向かわせる。自事業の定義をより抽象化度を上げて把握する。
このことにより、新しい発想や、市場観が生まれます。
事業を展開する際には、この点をしっかりと確認し、他社にない、ユニークな事業、ブルーオーシャンを狙っていきましょう。