モーゲージ債について調べたこと

AGGの投資信託版が出たよ


先日、SBIグローバルアセットマネジメントから『SBI・i シェアーズ・米国総合債券インデックス・ファンド』が設定されるとのニュースがありました。

これはi シェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF(AGG)の投資信託版とのことで円で米国の債券に広く分散して投資することが出来ます。

米国ETFは多彩なラインナップがありますが、円をドルに換えて投資する必要がありハードルの高い面がありました。近頃はグローバルXの東証ETFなど、ETFや投資信託も充実してきた中で、AGGも円で直接買えるようになったということです。

AGGの構成銘柄は以下のようになっています。

米国債42%
モーゲージ・パススルー証券26%
資本財・サービス 17%

このなかにモーゲージ・パススルー証券というものがあります。AGGに含まれているのは、米国ではメジャーな債券ということなのだと思います。これについて調べたことを記しておきます。

モーゲージ・パススルー証券とは


モーゲージ証券とは、不動産担保証券のことでMBSとも表記します。住宅ローン債権をモーゲージ・プールに束ねて証券化したものです。パススルーというのは、元利金支払いがそのまま証券を購入した投資家に通過させて支払う形式のものです。

債券ですから、利回りと満期があり、残存期間に応じた金利感応度(デュレーション)があります。デュレーションが大きければ、金利が変化したときに大きく価格が変化します。

コンベクシティとは


さらに、債券には、コンベクシティという要素があります。債券の金利と価格の関係は実際には直線ではなく曲線で、デュレーションも金利に応じて変化します。

デュレーションは価格の変化率で、デュレーションの変化率がコンベクシティです。価格曲線の1階微分がデュレーション、2階微分がコンベクシティです。

コンベクシティが正の場合は価格曲線は凹型になります。凹型の価格曲線は、高金利の時はデュレーションは小さくなり価格低下のクッションになります。低金利の時はデュレーションが大きくなり価格上昇を助けます。正のコンベクシティは債券保有者にとってプラスに働いています。

例を挙げると、日本国債は正のコンベクシティを持ち、デュレーションが長い債券はコンベクシティも大きくなっています。

モーゲージ証券は負のコンベクシティを持つ


住宅ローンは繰上返済が出来るという特徴があり、これはすなわちローンを組んでいる人が債券の繰上償還を自由に選択可能ということです。金利上昇時には低金利の住宅ローンを借り続けるほうが有利ですから繰上返済が減り、デュレーションが長くなり価格低下を助長します。金利低下時にはローンを借り換えるほうが有利ですからデュレーションが短くなり価格上昇を妨げます。こういった仕組みでモーゲージ証券は負のコンベクシティを持っていて、金利が動くことが債券保有者に対してマイナスに働きます。

負のコンベクシティに関しては繰上償還が可能なコーラブル債も同じはずです。

モーゲージ証券の性質

モーゲージ証券の価格自体は、米国の住宅ローン金利に影響されます。

また、モーゲージ証券は金利上昇時も金利低下時も、国債などの正のコンベクシティを持つ債券よりも価格下落が大きくなります。一方、他の債券より高い金利を受け取れるというメリットがあります。

この高い金利というのは、繰上返済をする権利(コールオプション)を相手に与える(ショート)ということが根源になっています。コールオプションのショートのプレミアムを受け取っていることになります。

国債等とは違う性質を利用して分散を図るメリットはありそうです。

モーゲージ証券に日本円で投資するにはあまり選択肢がありません。ETFならiシェアーズ 米国政府系機関ジニーメイMBS ETF(為替ヘッジあり)2649あたりでしょうか。AGGの投信版(SBI・iシェアーズ・米国総合債券インデックス・ファンド)も、米国債や社債と一緒になってしまいますが、信託報酬安くて良いですね。

それにしてもモーゲージ証券に関しては、米住宅ローン金利の情報を定期的に取得するハードルがちょっと高いかもしれません。


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