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CES 2025から読み解く2025年のConsumer Techトレンド~前編~

こんにちは、ExTorch のTomです。
日本でも多くのメディアが取り上げる世界最大のConsumer Electric Show(CES)が今年もNevada州Las Vegas市で開催されました。
私もCES 2025に参加してきましたので、CES 2025の興奮をお届けしたいと思います。

【写真1】LVCC West Hallに設置されたCES 2025のロゴとTom

CESの概要

CESを主催するCTA(Consumer Technology Association)は、1924年に組織されたRMA(Radio Manufacturers Association)を起源としています。その後、技術の進化により組織も変化しながら成長し、2024年に100周年を迎えました。そして今年、CESは次の100年の第一歩を踏み出し、ロゴも一新されました。

会場に設置された新しいロゴ

(1)参加者傾向

CESの参加者のピークは2017年の184,279人です。新型コロナの影響でCES 2022の参加者は約40,000人と激減しましたが、その後回復し、CES 2025年の参加者141,000人以上とCTAは発表しています。
参加登録を見ると、CES 2025の登録者の60%が米国内の参加者ですが、残りの40%は166の国と地域からの登録者だったそうです。登録者の属性としては、Fortune 500 のうちの323社が参加登録して、登録者の58%がVP 以上の役職だったそうです。

CES参加者動向と出展社動向(出典: CTAの情報を元に筆者が作成)


CES 2025の参加者動向(出典: CTA)

(2)会場

 CES 2025も、Las Vegas市全体を会場にして開催されました。CTAの発表によると、CES 2025は12の公式会場で開催され、フロア面積は合計で2.5Msqft(CES 2024より4.2%増)以上だそうです。
 会場は、LVCC(Las Vegas Convention Center)を中⼼にしたLVCC Campus、世界が注⽬するEureka ParkとDigital Health、Smart Home、Food Tech、Sports Techなどが集まるVenetian Campus、コンテンツクリエーター、放送事業者、SNS事業者、コンサルタントが集まるC Space Campusで構成されている。
 市内の交通渋滞がひどく日中の移動には時間がかかるものの、ホテルと会場は無料のシャトルバスが運行され、参加者は自由に移動ができます。

ES 2025 Campus Map
(出典: CTAの情報を元に筆者が作成)


LVCC Campus、Venetian CampusのFloor Map
(出典: CTAの情報を元に筆者が作成)

(3)出展カテゴリー

 CES 2025では、新たに加わったAgTech、Beauty Tech、Construction Tech、Fashion Techを含む49のカテゴリーの製品およびサービスが出展されていました

CES 2025出展カテゴリー
(出典: CTAの発表を元に筆者が編集)

 2023年からのカテゴリーの動向を見てみると、AIは過去三年間で常にトップ3以内に位置しています。Digital HealthはCES 2022のAbbott社のKeynoteをきっかけに注目を浴び、2023年は10位、2024年は5位、そして2025年はついに1位になりました。しかし、2023年のような派手な展示は少なく、今年はAT&T社の展示もありませんでした。一概には比較できませんが、図6を見るとカテゴリーごとの出展社が分散傾向にあるのかもしれません。

CESにおける出展カテゴリー動向
(出典: CISION社、CTAの発表を元に筆者が編集)

注目ポイント

(1)技術トレンド

 CTAによる”CES 2025 Trends to Watch”のセッションの中で、世代別最大人口となったGen-Zの影響、AIによるDigital Coexistence(異なるソリューションを組み合わせて一つのソリューションを提供)、Energy Transition、Food、Mobility、Longevity(長寿)がCES 2025での注目ポイントだと説明があり、CES 2025の会場でそれぞれのソリューションに触れる機会がありました。例えば、農業用トラクターなどを製造しているJohn Deere社は、「電化とAIによる完全自動化が労働者不足、食糧不足、環境問題を解決し、生産性の向上とコストの削減を両立する。」と提案していました。


【写真3】John Deere社のAutonomyに関する4つのCase Studies

(2)注目カテゴリー

 (2-1) Mobility

 CES 2025でもMobilityはElectrification、Connectivity、Autonomyをテーマに注目に値するとCTAは発表しています。

  (a) Electrification

 CTAは、Electrificationに関してはCES初出展となるScout Motors社、EV市場で世界第二位の市場を持つBYD社のBattery、EV Ownerの充電の心配を和らげるBlink社のEV Charger、手軽な移動手段として市民権を得たeBikeを開発しているAIMA社を紹介していましたが、LVCC West Hall、LVCC North Hallでは、CTAが言うほどの盛り上がりを私は感じられませんでした。特にEV Chargerに関しては2018年のWest Gate Hallのような勢いは全くありませんでした。

【写真4】Mobility業界のInnovationを推進する4大トレンド

  (b) Connectivity

 Connectivityに関する具体的な展示は少なかったと思うが、今年で100周年を迎えるCATERPILLAR社や(株)小松製作所の展示ブースでは、展示ブースから遠く離れば場所の鉱山のショベルカーを展示していました。CATERPILLAR社の関しては、Las Vegas市から400マイル離れたArizona州の鉱山のシャベルカーをリアルタイムに遠隔操縦できるデモを行っていました。CATERPILLAR社の説明員は、「鉱山にファイバーを敷設し、そこから無線APを設置して遠隔操作を実現している。」と説明してくれました。

  (c) Advancing Mobility

 CESにおけるMobility分野の新たなトレンドは、CTAが“Advancing Mobility”と呼ぶ産業系Mobilityです。Jone Deere社、CATERPILLAR社は数年前からCESに出展しているが、今年は、Oshkosh社、(株)小松製作所、(株)タダノなど、産業系Mobility大手が出展していました。
 また、Volvo GroupはKeynoteを務め、運輸業向けトラックのEV化を積極的に進めると発表していました。Volvo GroupのPresident & CEOのMartin Lundstedtさんが「商品の70%をトラックが運んでいる。」という通り、トラックのEV化が実現できれば、二酸化酸素の排出量を大幅に削減できると思います。その一方、既存のEVのフル充電での走行距離、長い充電時間は大きな課題として立ちはだかっていると思います。

 (2-2) Longevity

 高齢化社会の問題は日本だけではありません。米国でも高齢化社会に向けたソリューションが多く誕生しています。AgeTechへの注目の高まりを受けてCTAは、CES 2025に“Longevity(長寿)”を新カテゴリーとして追加しました。
 AIを活用した創薬、遠隔医療における画像診断、治療の効果を検証するDigital Twinsなど、LongevityにおいてもAIは欠かすことができない基盤技術となっています。また、一人暮らしの高齢者の転倒検知や行動分析もAIを活用した事例の一つです。CTAの一般消費者を対象にした調査によると、80%の人がSmart HomeのソリューションとしてAgeTechのソリューションの導入を考え、52%の人が人気トップ10の高齢者向け製品を少なくとも1つは持っているそうです。
 CES 2024では新たなカテゴリーとして注目を集めた”Inclusivity”は、CES 2025では”Accessibility”として注目を集めていました。”CES 2025 Trends to Watch”のセッションの中でCTAは、Collision 2024で紹介した視覚障害者向けのガイドロボットのGlidance社を紹介しました。Accessibilityについては、後ほど紹介します。

【写真5】AgeTechに関する調査結果(左)と生活を豊かにするソリューション(右)

Keynote

 CES 2025でもKeynoteはCESに華を添えていました。コロナ前はアイスホッケー会場や劇場などで行われるKeynoteがありましたが、コロナ後は全てのKeynoteがVenetian Expo 5階の大ホールで開催されていました。しかし、CES 2025では久しぶりにVenetian Expo以外の会場でもKeynoteが行われました。NVIDIA社Founder & CEOのJensen Huang(以降、Jensen)さんのKeynoteはMandalay Bay Michelob ULTRA Arenaで開催され、Delta Airlines社CEOのEd Bastian(以降、Ed)さんのKeynoteは話題のLas Vegas Sphereで開催され、どちらのKeynoteも満員でした。特に、Delta Airlines社のKeynote会場はLas Vegas Sphereということで、参加に必要なチケットを求める長蛇の列ができていました。
 CES 2025では上記の2社の他に、Accenture社、Panasonic社、SiriusXM社、Volvo Group社、Waymo社(Alphabet順)がKeynoteを務めました。

NVIDIA社

 CESの前日に開催されるKick off KeynoteはこれまでMicrosoft社、Intel社、VolksWagen社、Mercedes社など時代を彩った企業が務めてきました。今年はGPUのパイオニアでGen-AI時代を支えるNVIDIA社がKick off Keynoteを行いました。
 Jensenさんは、CTAのCEOのGary Shapiro(以降、Shapiro)さんから貰ったラメ入りの革ジャンを着て、製品の説明とコンセプトビデオをうまく使いながら新製品、新機能を説明しました。今回のKeynoteでは下記のような新製品・新機能が発表されました。

  • Blackwell GeForce RTX 50シリーズ

  • NVIDIA Llama Nemotron Language Foundation Models

  • NVIDIA社のDigital Twins PlatformのNVIDIA Omniverseと連携可能なPhysical AI向けのFoundation ModelのNVIDIA Cosmos

  • NVIDIA Omniverseを活用したKion社

  • Accenture社と連携した産業向け自動化を支援するDigital Twins

  • トヨタ自動車(株)とのパートナーシップ

  • 世界中の AI 研究者、データ サイエンティスト、学生に NVIDIA Grace Blackwell プラットフォームへのアクセスを提供するPersonal AI Super ComputerのNVIDIA Project DIGITS

【写真7】NVIDIA社のKeynoteの様子
(左: AIの進化、中: NVIDIA社のAI、右: NVIDIA社の業界ソリューション)

次回は...

盛りだくさんなCES2025の模様を、2回に分けてお伝えします。
後編では、ExpoやInnovation Awardsのレポートをお届けします。
次回もお楽しみに🚀

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