隠れ家の不良美少女 162 思い出の部屋
希和とガレージハウスへやってきた。千草さんから歌のレッスンを受けるためだ。
夕方お店が終わる頃、希和と天空カフェへ到着する。
新曲をレコーディングするため、新たなレッスンをお願いした。
希和は千草さんのレッスンで自分らしい歌い方を確立したいと学んでいる。
そしてアドリブの入れ方やファルセット(裏声)の使い方など様々なテクニックも学んでいる。
俺は離れたところから聞いているが、確実に上手くなっている事が伝わってくる。
やはり和也さんの感性を受け継いでいるように思えた。
希美子さんの良い声を受け継ぎ、和也さんの感性を引き継いでいる。
俺は希和の持つ強いパワーを感じていた。
「友希さん、終わったよ〜…………疲れた〜」やや疲れたゆるい笑顔をした。
「お疲れさん」俺は希和の手を引いてテラス席へ行くと夕日を眺める。
「希和ちゃん随分うまくなったわよ」千草さんがコーヒーをいれてくれた。
「すみません、忙しいのに」俺は頭を下げた。
「大丈夫よ、明日の仕込みがあるだけだから」
「綾乃さんが手伝えなくて大変ですよね」
「そうね、でも近所の高校生の女の子がアルバイトで来てくれてるのよ」
「そうですか、それはよかった」
「綾乃ちゃんも子供ができたら来れなくなるだろうし、誰か見つけなくちゃあ行けないわ」
「そうですね」俺は頷いた。
ガレージハウスへ戻ってくる。
「友希さ〜ん、今夜はここに泊まるの?」
「そうだなあ………どうしようかなあ……」
「希和ここがいい、今夜はここに泊まる!」
「そうなのか?」
「うん、そして友希さんと結ばれる」
「なに言ってんだよ」
「だって………」
「最近なんかおかしいぞ?」
希和は唇を噛むと後ろを向いた。
「希和は女として魅力ないの?」
「そんな事はない、十分魅力的だぞ」
「だったら…………」
「なあ希和……これからずっと一緒に生きていくんだ、なにも焦らなくていいんだぞ」
「そうなの?ずっと希和といてくれるの?」
「ああ、そのつもりだ」
「友希さん」希和は抱きついてきた。
「希和が初めてここに泊まった台風の夜が懐かしいな」
「そうだね、あの時こうなるって思ってた?」
「いや、全く思わなかった」俺は少し笑った。
「希和はなんか運命を感じてたよ」
「そうなんだ」
「そうだ!今夜は二人でテントの中で寝ようよ」
「そうだな、それもいいか」
その夜は二人はテントの中で眠った。