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隠れ家の不良美少女 226 武道館

準備は全て調った。
間も無く配信が始まろうとしている。
企業やマスコミも期待して待っている。

花道の付いたステージの後ろには巨大なスクリーンが設置してある。
その両端には少し離れて縦長のスクリーンが設置してある、これはコメントの書き込みを表示させるためのスクリーンだ。さらにその横には中型のスクリーンが縦に2台ずつ設置してある。両サイドで4台のスクリーンは見ている参加者を表示させるためのスクリーンだ。応援してくれてる人達や、仮装して見ている人たちを映し出す予定だ。
会場にはステージに向けて100台ほどのモニターが設置してあり、まるで観客がいるように見てくれてる人たちを出演者は見ることが出来る。
そしてラインアレイスピーカーが吊り下げられ、数えきれないほどの照明が仕込まれている。

武道館は今、緊張感に押しつぶされそうになっている。

「友希さん、待機してる人たちがもう100万人を超えてますよ」奏太くんがモニターで確認している。

『間も無く本番です、全員持ち場について下さい』インカムから橘さんの声が響いいた。

武道館の空気がピキッとなった。

『本番です!』橘さんの声が響く。

巨大スクリーンにカボチャのランプが数台表示される。
レコードの擦れたようなチープで頼りないハロウインの音楽が流れ始めた

会場には少し不安そうな雰囲気が漂う。
やはり配信だから音は小さいのだろうと思ったようだ。

ステージ中央のスクリーンの下からからキナコが飛び出してくる。
黒いドレスに金色の蜘蛛の巣模様があしらわれている、とんがった黒い帽子は魔女を連想させた。

「ハッピ〜ハロウイン、みんな見てる〜?」キナコは手を振ってステージの前に出てくる。

「今日このライブを一緒に作ってくれるみんなを紹介するよ〜、音響オペレーター『恒松圭司!』照明オペレーター『吉瀬淳一』」
二人がステージの両端から出てくるとキナコとハイタッチして花道を手を振って歩きオペレータ席へ着いた。
音響ミキサーのスイッチをポンと押すと音は迫力のあるいい音に変わった。照明スイッチを操作するとムービングライトが従王無人に動き出しやがて光はキナコに集まる。
「映像オペレーター『榊奏太!』奏太くんがニッコリしてスイッチャーを操作した。ステージ後ろの巨大なスクリーンには配信を見ている仮装したフアンが次々に映し出された。映し出された視聴者は驚きの顔で手を振っている。
メインスクリーンの両サイドにある縦長のスクリーンに次々とメッセージが表示され上がっていく。

『凄い、こんなの見たことない』
『俺が映ったぞ〜』
『キナコちゃん可愛い』
『ついに始まったねえ』
多くのコメントが上がっては消えて行く。

「それじゃあバンドのメンバー紹介、『ドラム!東昌也』ステージ後ろの一段高くなったバンドのひな壇にドラムが登場し、スティックをクルクルと回したあとドコドコドン、チャッ・・チャッ・・16ビートを刻んだ。
『ベース、相川誠!』ベースが登場するとベンベケボンボンとチョッパーベースを披露してリズムを刻んだ。
『ギター永田健志!』ギターが登場するとギュ〜ンジャキーンとアームプレイで短いソロを演奏してカッティングを始める。
『キーボード、田崎聖』ピラリラリン♪鍵盤を端から端までひいてパッパーとシンセブラスの音を出す。

シーケンスと生バンドの良いとこどりで、迫力がありキレの良いサウンドが武道館の隅々まで響きわたる。
バックバンドの衣装はキナコカラーの黄色いジャケットだ、ラメの襟がキラキラと光っている。

「じゃあお待ちかね、まなこさ〜ん!」まなこがステージに登場した、キナコと同じ衣装だ。

「みかりんさ〜ん!」みかりんも同じ衣装で登場する。

「そして、サークル雅のみんな〜!」ステージ後ろのひな壇が一段高くなったところに雅の子たちが様々な可愛いハロウィンファッションで登場した。

ステージ後ろのスクリーンにはそれぞれのアップが映し出される。

雅の子たちは雛壇から降りてきて花道を歩く。まるでファッションショーのようだ。
そしてステージに並ぶとキナコやまなこ、みかりんの横にそれぞれが立った。

「ハッピーハロウイン!みんなで手を振った」

「ワン、ツー、スリー」キナコがカウントを数えると雅の子たちはキナコやまなこ、みかりんの袖を一斉に引っ張る。

ハロウインの衣装は真ん中からベリっと分かれて、可愛いレースや羽の付いたシャツと白のミニスカートが現れた。

音楽はニューアルバムのノリの良いダンスナンバーが鳴り響く。
雅の子たちはサッとステージ両端へハケた。
みかりん、キナコ、まなこは並んでキレの良いダンスを踊っている。
照明が白い衣装をカラフルに変えてまるでCGのように見える。

イントロが終わるとキナコは歌い出す。
「白い翼で虹を渡ろう〜♪ 風を味方に高く飛ぼうよ♪ 君と二人ならどこへでもいけるよ〜♪」
「憂鬱だった昨日にさよなら♪未来探しに町を出ようよ♪ 君と二人なら何も怖くないよ〜who♪」

スクリーンの両サイドには沢山のコメントが上がった。
『♪───O(≧∇≦)O────♪』
『待ってたよ〜!!』
『キナコ最高💗💗💗』
『まなこちゃん、好き〜』
『みかりんLOVEです〜!!』

サビになるとみかりんはステージの左端へスキップして移動した。まなこちゃんは右端へスキップして移動した。キナコは花道をスキップして先端へ来る。
三人は右手を高く上げ曲に合わせて歌いながら大きく左右へ振った。

「LOVE LOVE LOVE 愛するパワーで♪」
「LOVE LOVE LOVE 高く飛ぼうよ♪」
「どこまでも〜♪どこまでも〜♪イエ〜」キナコの歌声は優しく美しく響く。

スクリーンには同じように右手を高く上げ左右に振っている多くの視聴者が次つぎに映し出される。
日本中の100万人を超える視聴者は始まったばかりだが、一体となって盛り上がっている。

俺は全身に鳥肌が立った。

そのまま2曲目が始まる。
今度は十人ほどのダンサーがキナコカラーの衣装で登場してひな壇の上で踊っている。みかりんとまなこちゃんはキナコの横で楽しそうに踊っている。
サビになると三人とダンサーたちはキッチリと揃ってカッコいいキレのあるダンスを披露した。
さらにスクリーンには曲を提供してくれたA &Aのメンバーも踊っているのが映し出された。

サビが終わるとキナコは「プリンさ〜ん!」プリンちゃんを呼び込む。
プリンちゃんは3人と同じ衣装だが、プリンらしい濃い黄色の衣装でラップを披露する。ステージから花道を進みながら激しく強くラップした。

「イエ〜、忘れられないことも、過ぎ去ったことも、今じゃ何一つ無駄になってない」
「そうさ、生きるってことは、積み重ねるってことは、今この瞬間の自分を認めることさwho〜」プリンちゃんはセクシーに胸を揺らし激しくラップした。

3曲目のラップの曲が始まる。

大きなスクリーンには曲を提供してくれたD Jドラゴンのスクラッチする映像が流れ、プリンちゃんのラップに絡むようにスクラッチの音がシンクロしている。

最後はキナコ、みかりん、まなこちゃん、プリンちゃんでサビの大合唱となった。

3曲目が終わった。

「みんな〜見てるか〜い?」キナコは叫んだ。
視聴者が映し出され、みんな手を振っている。

「みかりんさん、まなこさんありがとう」キナコは手を振って二人に拍手した。
二人に関するコメントが次々に上がって消えた。

「プリンさん、ラップカッコよかったあ〜」
「本当?超緊張したよ」
「プリンのラップもやっちゃう?」キナコがニッコリ聞いた。
「お願い、それだけは勘弁して、あれは武道館じゃ恥ずかしくて無理〜!」
プリンちゃんは恥ずかしそうにした。
「残念だなあ!」
キナコが口を尖らせるとプリンちゃんは手を振ってステージから逃げるように引っ込んだ。

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