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水の生まれる夜に 105 寿司屋会議

高崎の寿司屋に私と専務の森田がいる。二人でお酒を飲みながら昔話を懐かしそうにしていた。

「あの時森さんがあのパッケージのやり方を思いついてくれなかったら今のマサキは無かったよなあ……」

「何言ってるんだ、将さんのひらめきとアイデアが有ったからこそだろう」

一通り昔話に花が咲いた後、森田専務は言いにくそうに話し出した。

「今回は賢一のことを考えてくれたありがとうな」

「あれは新君からの提案でね、私は口添えしただけだよ」

「あの事件以来賢一とはほとんど話が出来ないようになってたんだ」

「賢一君が理由もなしに人を殴るなんて思えなかったんだよ」

「俺も何かあったんだろうと思ったが……あの時はどうする事も出来なかった」
森田専務は少しだけお酒を飲んで遠くを見た。

「新くんに任せてみようじゃないか、きっと何か考えがあると思うんだよ」

「そうだな……この前賢一から電話があった。一年振りくらいかなあ……
あいつ『今度CSR部の橋口さんの元でアルバイトさせてもらおうと思ってます』そう言ってきた……将さんから話を聞いていたから、冷静に『自分が正しいと思ったらそうすれば良い』と答えたよ、そうしたらアイツ『迷惑をかけてゴメン……』そう言いやがった」森田専務は目を潤ませた。

「良かったなあ、森さん、賢一君のことはずっトゲが刺さったように痛みを感じてたんだよ」

「綾乃ちゃんは良い子を連れて来てくれた」

「そうだなあ、綾乃が言ってたが、彼はジワっと周りを幸せにしてくれるんだそうだ」

「そうかい、賢一も幸せになってくれたら良いんだがなあ」

「まあ、しっかり見守っていこうや」

「そうだな」

「もしかしたら、私と森さんみたいに新君と賢一君で会社を引っ張ってくれるかもしれないぜ」笑った。

「そうなると良いなあ」森田専務も笑った。

「どうだろう、いっそのこと新くんを養子に迎えては」

「実は私も考えているんだが……来てくれるかねえ……彼は欲がないんだよ、全くと言って良いくらいに」

「そうなのか、しかしこれからの会社の事を考えると彼みたいな人材が必要だよな」

「会社が始まった頃なら私と森さんみたいに多少強引でも引っ張っていく人間が必要だったが、これからはいい意味で上手く運営していく人材が重要だと思うんだよ」

「全く意義なしだ、その視点から見ると彼は非常に良いと思う」

「綾乃の話だと、実家に両親と兄夫婦がいるらしい、その承諾も得ないといけないだろうし……ただ兄夫婦とは仲がよく無いらしくて実家には帰らないつもりで秩父に別荘を買ったらしいのだが」

「そりゃあ願ったり叶ったりじゃないか、是非進めよう」

二人は美味しそうに酒を飲んだ。

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