星降る夜のセレナーデ 第86話 溜まり場
俺は昔、屯《たむろ》していたバイク屋さんの店から、かなり離れた場所に車を駐車させる。
「あそこが溜まり場だったバイク屋さん」指差した。
「もっと近くに行ってよ」志音ちゃんはフロントガラスに近づいて眉を寄せ見ている。
「ダメだよ、やばい先輩がいるから」俺は強く拒否した。
「だってよく見えないもの」志音ちゃんはドアを開けて出ようとしている。
「ダメだってば、危険すぎる!」俺はドアをロックして阻止した。
志音ちゃんは不服そうに、ドアのノブを何度も引っ張っている。
「さあ、次に行こう」俺は車のキーを回そうとした。
「あれ?真人じゃないか!」後ろから聞き慣れた、しかも最も聞きたくない声がした。
俺は今、オープンカーを買ってしまった事に激しく後悔している。
「アッ!小笠原さん……………」俺は固まった。
「なんだよ、最近ちっとも顔を出さねえな、バイクはしっかり手入れしてるか?」
「はい、大切にしてます!」固まったまま答えた。
「彼女が出来て忙しいってか!」車の前へ来て2人をジロッと見た。
「えっ!……………………」小笠原さんは志音ちゃんを見て固まった。
どうやら言葉が出てこないようだ。
「ま・ま・真人くん、元気だったかい。たまには顔を出してくれよ、それに彼女が出来たなら紹介してくれよ〜」子供の棒読みみたいな喋り方になっている。
これまでに見た事もない優しい表情で、志音ちゃんにペコリと可愛いく会釈した。
「あのう……………」俺は言葉を無くしてフリーズした。
「初めまして、白河志音です。真人さんと仲良くさせていただいてます」志音ちゃんはニッコリ微笑んだ。
「そうですか、真人はいいヤツなんですよ、これからも是非よろしくお願いします」そう言って敬礼した。
「はい」志音ちゃんも敬礼して微笑んだ。
「あのう、これから用事があるのでまた……」そう言ってエンジンをかける。
「真人くん、事故には気をつけてよ」小笠原さんはニコニコ手を振ってくれた。
しばらく車を走らせると、俺は堪えきれず吹き出した。
「プッー!!……………」肩を震わせた。
「どうしたの?モヒくん」志音ちゃんは不思議そうに俺を見ている。
「だってあの怖い小笠原さんが、志音ちゃんの前だと子猫みたいになっちゃったんだよ」
「そうなの?怖い人なの?」不思議そうに瞬きしている。
「志音ちゃんが凄く綺麗だから、その魅力で骨抜きにされたんだね」俺はクスクスと肩を揺らした。
「そうなの?そんなに怖い人には見えないけど………」志音ちゃんは納得していないようだ。
俺は改めて志音ちゃんの可愛いさ、いや綺麗さが只者ではない事を納得した。
「そうだよなあ…………優様の娘だもんな…………」独り言が漏れる。
「えっ?なんて言ったの」志音ちゃんが聞き直す。
「なんでもない……………」俺は志音ちゃんをチラッと見た。
「そう…………次は?どんな所?」志音ちゃんはニッコリしている。