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隠れ家の不良美少女 199 リハーサル風景

武道館の配信まで2ヶ月と迫ってくる。
SONEレコードのリハーサルスタジオにはロブスターズのメンバーがやってきた。
キナコや未来ちゃんそしてバックバンドのメンバーは嬉しそうに迎える。
俺と友里香さん、長谷川さんも見守った。

特にバックバンドのメンバーは伝説のバンドとの共演に心をときめかせている。

「皆さんこんにちは、今日はよろしくお願いします」和也さんがにっこり手を振った。

「「「「よろしくお願いしま〜す」」」」バックバンドのメンバーはみんな嬉しそうに頭を下げる。

ロブスターズのメンバーはそれぞれ楽器のセッティングを始めた。
バックバンドのメンバーはパートごとに手伝って親睦を図っている。

「お父さん、頑張ってね」キナコが和也さんに声をかける。
和也さんはニッコリと頷いた。

和也さんは準備ができたのを確認すると「じゃあよろしく」そう言ってバックバンドやスタッフたちにも軽く挨拶をすると「ワン・ツウ・スリー・フォー」とカウントを出す。

『ジャキーン♪ダダダダドコドコ・ジャーン』ロブスターズの演奏が始まる。

圧倒的なパワー感、そしてブランクを全く感じさせない演奏は周りを唸らせた。

『俺たちは博多の片隅で〜産声を上げたのさ〜♪』
『何一つ変わらない日常を変えようと立ち上がった♪』
『音楽と愛で何かを変えようと立ち上がったのさ〜♪』
『who〜♪♪♪』  

和也さんの歌声はとても伸びやかでしかも優しい。
リハーサルスタジオの空気を一瞬でロブスターズの色に変えた。

周りは自然と手拍子になった。

未来ちゃんがキナコに耳打ちした。
「やっぱり凄いね」
キナコは「うん」そう言って嬉しそうに和也さんを見ている。
和也さんはギターをかき鳴らしながら力強く歌っている。

「お父さん、かっこいいよ」希和はそう漏らした。

武道館でロブスターズはゲストとして4曲を演奏する。
そして2曲はキナコとバックバンドとで一緒に演奏する。

4曲を演奏したロブスターズに惜しみない拍手が贈られた。
長谷川さんは感無量という表情で目頭を押さえている。
俺は見ないふりをするのが礼儀だと思い目を逸らす。

そこへ希美子さんと美奈さん詩織さんも到着した。
ロブスターズのステージ衣装を作るために採寸したり希望を聞いたりするためだ。

希美子さんはスタジオの入り口で聞いてたらしく、涙を浮かべている。
「こんな日が来るなんて思っても見なかったわ」
そう言ってリハーサルを見守った。

ロブスターズとキナコの共演が始まった。
『ラプソディを君に』のイントロが流れ出す。

歌い出しはキナコからだ、和也さんは優しそうにキナコを見守っている。

『後ろ姿の君は〜♪ 笑顔と違った優しさを見せてくれる〜♪』
『そのままで、そのままで、良いのよと〜♪ 慰めてくれる〜♪』
キナコの歌声はスタジオの隅々まで美しく響いた。

俺は桜とのことを思い出して涙が溢れてくる。
友里香さんも桜のことを思い出し、涙を浮かべた。

希美子さんは歌う二人を見てやはり涙を流している。

それぞれの思いは違っているだろう、しかしこの名曲は色あせることなく心に染みてくる。俺は桜がそばで聞いているような気がした。
横で友里香さんが「ねえ桜、聞いてる………」そう言って両手で顔を抑え肩を震わせた。
俺は桜がそばで微笑んでいる事を感じ取った、いや確信した。

リハーサルは順調に進んだ。

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