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隠れ家の不良美少女 189 姉妹

「ねえお父さん、美和ちゃんと約束したの、武道館で二人は姉妹だって言っても良いでしょう?」
「ああ、美和から嬉しそうにその話を聞いたよ、私は良いけど問題ないのかなあ」少し心配そうだ。
「友里香マネージャーが週刊誌に先に書かれるより良いって言ってたよ」
「それはそうかも知れないけど…………長谷川さんキナコのイメージが悪くならないですか?」
「大丈夫だと思いますよ」長谷川さんはにっこり頷いた。

「あのう…………」奏太くんが申し訳なさそうに割り込んでくる。
「実はもう、武道館の予告編で『重大発表』と宣言してるんですよ」
「えっ、そうなんだ」和也さんは少し眉を寄せる。
「それでお願いがあるんですが……」奏太くんは不安そうに聞いた。

「武道館の配信の後、キナコさんのドキュメンタリー映画を放送する予定なんです、そしてそれに出演していただけないでしょうか」
「えっ、私がですか?」和也さんは不思議そうに聞いた。
「おそらく武道館で姉妹の発表をすると、視聴者は『どうして母親が違う姉妹なのか』と考えてしまうと思うんです、ですからその経緯を話して頂けませんか?」

和也さんは考え込んだ。

「出来れば奥様にも、そして相沢希美子さんにも出演していただき、キナコちゃんがあなたの歌を歌った事で全てが動き出し、色彩を持って今がある事を話していただきたいんです」

和也さんは黙って何度も頷いた。

「事実を知った人達はきっとキナコちゃんとあなたの娘さんを愛しく思われるのではないでしょうか」奏太くんが呟く。

「そうね、希和と美和ちゃんの為にもしっかり話した方が良いかもしれないわね」希美子さんは頷いた。

しばらく考えた和也さんは「解りました、ぜひ協力させてください」そう言って奏太くんを見た。

「ありがとうございます」奏太くんは深々と頭を下げる。

「家内には私から話しておきますので、よろしくお願いします」和也さんは少し笑顔になる。

「やっとあの過去が、あの事件が思い出に変えられますね」長谷川さんも笑顔になった。

「そうだ!アレンジャーさん、お願いがあります」キナコはスタジオにいたアレンジャーさんを呼んだ。

「蛍の光をピアノ曲で譜面に書いてもらえませんか、そして2コーラス目からみんなで歌えるようにカッコいいアレンジで作って欲しいんですけど」
アレンジャーさんは目をぱちくりさせる。

「妹の美和ちゃんはピアノが弾けるんです、だからアンコールの後ステージに上がってピアノを弾いてもらって、そして2コーラス目からは出演者全員出てきて歌うんです」

「なるほど、わかりました…………そうだな、2コーラス目からはリズムをレゲエ調にして楽しく締めくくるのはいかがですか?」

「いいです、それとってもいいです」キナコは喜んだ。
希美子さんも大きく頷いた。

「お父さん、美和ちゃんに一緒に武道館に出ようって伝えてね」キナコは和也さんの手を握りしめる。

「分かった、美和に話しておくよ」
「和也さん、美和ちゃんの衣装は私に任せてね」希美子さんが微笑んだ。

長谷川さんは嬉しそうに何度も頷いた。

「奏太くん、ありがとうな」俺は奏太くんの肩をポンポンと叩く。
「いえ、俺の方こそ感謝してます、こんな感動的な映画を作らせて頂いて」頭をかきながら微笑んだ。

「それでは皆さん、レコーディングの終了を祝って打ち上げをしましょう、最もコロナなので盛大には出来ませんが」長谷川さんが提案してくれる。

その夜、和やかな打ち上げが模様された。

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