隠れ家の不良美少女 201 希和の不安
リハーサルが終わるとロブスターズのメンバーと長谷川さんや希美子さんは食事に出かけた。
「希和は一緒に行かないのか?」
「私が行ったら昔話がしにくいと思って」少し寂しそうに微笑んだ。
俺と希和は車に乗ってリハーサルスタジオを離れる。
「どこか行きたいところがあるか?」
「友希さんのお部屋………」そう言った。
「所沢に行くか?」
「うん…………良いの?」
「良いに決まってるだろう」
「桜子さんに嫌われないかなあ…………」
「どうしてそんな風に思うんだ?」
「希和は今日とっても幸せだった、お父さんとお母さんと一緒に歌えて」
「そうだな、とても良い雰囲気だったぞ」
「そう…………」
希和は車の窓から外をぼんやり見ている。
「お母さんが私を産んでくれたからだよ、だから命が繋がった。新さんと綾乃さんも新しい命を授かって命をつなげた、希和は友希さんと命を繋げたい」
「そうだな、俺も希和と暮らして行こうと思ってる」
「ありがとう、希和は幸せだよ…………でも桜子さんだってきっと命を繋げたかったと思うの、その相手はきっと友希さんだと思ってたわ」
「そうかなあ………」
「だって『友希さんと可愛い子供達を作って幸せになってください』そう手紙に書いてあったもん」
希和は涙を流した。
「そうなんだ…………」
「希和は今とっても幸せだよ…………でも幸せ過ぎると桜子さんに嫌われて友希さんを連れて行かれる気がして不安になるの」
「大丈夫だよ、そんな心配はいらない」
「本当?」
「だって桜の手紙には『何があっても新しい恋人と幸せになってね、それが私の心からの願いだから』そう書いてあったぞ、桜はきっと俺たちを見守っていてくれると思う、それに、もし俺が亡くなって桜が生き残ったら俺も新しい恋人ができて幸せになってくれる事を心から願うと思うぞ」
「友希さん…………希和は幸せで良いのね?」
「ああ、希和が幸せにならなかったら俺が桜から怒られる」
「友希さん………希和………希和は……グスン……幸せだよ」
希和は俺の肩にしがみつくようにして涙を流した。
「俺は初めて希和の部屋に入った時部屋の中を見て驚いた、そして何も欲しがらずひたすら寂しさに耐えていたんだと思った、だからこれから先ずっともう寂しい思いはさせたくないと誓ったんだ」
「友希さん……………」
部屋に到着した後も希和はピッタリとくっ付いて離れようとしなかった。
俺はグッと抱きしめてキスをした。