星降る夜のセレナーデ 第116話 プレゼント
「じゃあこちらの会議室でお渡しします、用意してくるので少しだけ待っててください」
「アリサちゃんと由美香ちゃんはニコニコしている」
「相談ってこの事なんですか?」
「そうよ、突然表彰の方が嬉しいかなあと思って」
「はあ………………」確かにそうかも知れないと思った。
しばらくすると小池さんが賞状と金色のレコードが見える盾らしきものを持って入って来た。
「さあ、真人くん、これを受け取って」小池さんは俺に手渡す。
「ありがとうございます」俺はゆっくりと丁重に受け取った。
しかし、考えてみると美夜子さんの作詞には何も無いのだろうか?不思議になる。
「あのう…………作詞した人にはないんですか?」
「勿論ありますよ」そう言ってもう一つ賞状と盾を出した。
「では、葵 姫名さんにもお渡ししたいと思います、葵 姫名さんどうぞ!」小池さんとアリサちゃん由美香ちゃんは一斉に力強く拍手した。
すると会議室のドアが開きニッコリと志音ちゃんが入ってきた。
「え〜…………………」俺はただ固まった。
志音ちゃんは俺の前に立つとゆっくりと微笑んだ、そして「ただいま」そう言った。
「……………お……お……お帰りなさい…………」俺は息が止まりそうになる。
「じゃあ私たちはお邪魔だから出て行くね」由美香ちゃんがニッコリすると3人は出て行った。
会議室は志音ちゃんと2人になった。
「葵 姫名さんって?」
「そう、志音の事だよ」少し睨んだ。
「えっ?」
「青い湖、そしてひな祭り、あの日湖に一緒にいた姫の名前は?」
「あ……………志音ちゃんです………………」
「直ぐバレると思ったのに、気づかなかったの?」頬を膨らした。
「ゴメン…………」
「許さない」志音ちゃんは唇を尖らせ睨んだ。
そこには俺の良く知っている志音ちゃんが立っている。
「志音ちゃん、会いたかった………………」俺の目は壊れたダムのように涙が溢れた。
「モヒくんのバカ!」そう言うと志音ちゃんは思いきり抱きついて来る。
俺は出版社の会議室である事を忘れ、思いきり志音ちゃんを抱きしめた。
「「…………………………………………」」長い2年の空白は一瞬で埋まった。
しばらくすると、ドアが遠慮がちにノックされて3人が入ってきた。
「良かったね志音ちゃん、やっと会えて」アリサちゃんと由美香ちゃんは嬉しそうに言った。
「うん、やっと会えた」志音ちゃんは嬉しそうに頷く。
「真人くん、志音ちゃんがいない間は本当に寂しそうだったねえ」ニヤニヤしている。
「小池さん、やめてくださいよ、冷やかすのは」俺は顔があからんでいくのを自覚する。
志音ちゃんは少し嬉しそうだ。
「今回、志音ちゃん、いや葵 姫名さんと浅見真人くんにFIX出版からささやかなプレゼントです」小池さんが微笑んだ。
「ありがとうございます」志音ちゃんは深々と頭を下げた。
そんな志音ちゃんは少し大人になったように見えた。