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星降る夜のセレナーデ 第110話 留学

俺は何も出来ない自分が悔しかった。気晴らしにハーレーを走らせようと思い外へ出て来る。そこへ幼馴染の奈津美がやってきた。タイミングの悪さは世界一かも知れないと思う。

「真人、元気?」

「何しに来たんだよ」迷惑そうに返事する。

「私プロポーズされたんだ、だからどうしようかと思って…………」

「良かったじゃないか、拾ってくれる人がいて」

「そんな言い方は無いんじゃない?」少し不貞腐れた。

「好きにしろよ!」俺はハーレーを車庫から引っ張り出す。

「あの子と上手く行ってるの?確かあの家だよね」先生の家の方を見ている。

俺は無視した。

「おや?あれは…………噂の……」ニヤリとしている。

奈津美は急に俺の前に立つ。

「あっ真人!頭に虫がついてる、刺すやつだからじっとして」

「え〜!どこ?」

「だからじっとしてて!」

奈津美は俺の頭を抱えるようにして虫をとっている。

「とれた、もう大丈夫よ、悪い虫は引き離したから」ニヤリとしている。

奈津美は含み笑いをすると、「またね」そう言って帰って行った。

俺はハーレーのエンジンを始動させると、行く先も決めないまま走り出した。

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志音ちゃんが帰ってきた。

「どう、真人くんに相談できた?」

「ううん、もういいの、私ロンドンに行くわ』

「そう…………」少し不思議にお思ったが、今はそれがベストな選択肢だと思えた。

志音ちゃんはすぐに準備を始た。パスポートを取り、まるで逃げるように出発する。空港まで真人くんも一緒に送って行った。

「志音はしっかり音楽の勉強をしてくるよ」そう言い残して日本を離れる。
志音が留学した事はすぐに知れ渡ったようで、週刊誌や取材も落ち着いた。

真人くんとパパは何処か寂しそうで元気がない。
しかし仕事は忙しいので2人は淡々と仕事をしている。

マリからメールが来て志音は元気で勉強しているらしい。私は胸を撫で下ろした。

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