Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第35話 秘密基地?
冬休みも終わってしまった、新学期が始まる。茉白ちゃんと会えるのは嬉しい。
教室の中は新たな年を迎えて、それぞれの想いが言葉になり咲き乱れる。僕は今一つついて行ってない気がする。
となりのそいとげが妙に懐っこく話しかけてくる。ミコトさんと話した事がよほど嬉しかったらしい。
僕は何となくやり過ごして放課後を待つ。
やっと放課後になり図書館へとやって来る。茉白ちゃんは一足先に来ていて手を振って迎えてくれた。
「おめでとう、今年もよろしくね」顔を少しだけ横にして微笑んでいる。
僕はやっと新年を迎えた気がした。
「こちらこそよろしくね」僕は満面の笑みを返す。
そこへ雪村先輩がやってきた。
「新年おめでとう、残り僅かだけどよろしくね」
「「よろしくお願いします」」茉白ちゃんと二人会釈する。
「もうあまり出て来れなくなるから引き継ぎをしたいんだよね」メガネを少し上げて僕らを見た。
「「はい」」
「知ってるかもしれないけど、この図書館の奥に小さな部屋があるんだ。そこは本のメンテナンスをする部屋なんだけどガスや水道もあるから色々使えるよ。僕はカップ麺食べたり、疲れたら昼寝とかしてたんだけどね。部屋の鍵を二人に引き継ぎたいと思ってさ」ニッコリ微笑んでいる。
「奥の部屋ですか?僕は物置かと思ってました」
「私も倉庫なのかと思ってました」
「とりあえず中に入ってごらんよ」雪村先輩は鍵の付いたキーホルダーを指先でクルクル回しながら部屋へうながしている。
部屋に入ると大きな机が一つあり数個の折りたたみ椅子がある。本棚が一つ有りメンテナンス道具が並んでいた。奥には小さいシンクがあり水道とガス台が設置してある。ガス代にはヤカンが一つ乗っている。
「へ〜、こんな風になってるんですね」僕は室内を見回す。
「本来なら亜斗夢君たちに渡そうと思ってたんだけど、あまり出て来れないので星七君と茉白ちゃんへ渡して欲しいという事なんだ。もし必要な事があったら借りに来るって言ってたよ」
「そうですか」僕は茉白ちゃんを確認して「では二人で預かります」そう答えた。
「これからたまにしか来れないけどよろしくね」そう言って先輩は図書館を出て行った。
僕と茉白ちゃんは図書館の奥の部屋で二人きりになる。
「こんな部屋があったんだね……」茉白ちゃんは部屋の中をあちこち見ている。
「ねえこのモニターって映るのかなあ?」僕は壁のモニターのスイッチを入れてみた。
モニターには図書館の中が映し出される。
「あっ映ってる、これなら図書館の状況も分かるね」
「そうだね」茉白ちゃんもモニターを見た。
僕は突然この部屋で茉白ちゃんとカップ麺を食べたい衝動にかられる。
「ねえ、茉白ちゃん、ガス台がちゃんと使えるか試して見たくない?」
「えっ?」不思議そうな顔で何度も瞬きしている。
「購買部でカップ麺買ってこようかな?」
茉白ちゃんは僕の意図を感じ取ったようでぺこりと頷いた。
僕は急いで買ってくると茉白ちゃんはすでにお湯を沸かしている。出来上がったカップ麺を二人で向き合って食べた。
「なんか悪い事してるみたいでドキドキするよ」茉白ちゃんは口角を上げる。
「そうだね、僕らだけの秘密基地みたいでドキドキするよ」僕も口角を上げる。
茉白ちゃんのメガネが少し曇っている、それもまた可愛い。僕は新たな幸せの場所ができたような気がして嬉しい。
「ねえ星七君、明日お昼をここで食べない?」
「えっ、いいの?」
「私お弁当を二人分作ってこようか?」ニッコリ微笑んでいる。
「それは……超嬉しいんですけど」何度も頷く。
「じゃあ作ってくるね」コクリと頷いた。
「この前クリスマスの時料理の話になったでしょう、あの時茉白ちゃんの手料理を食べてみたいと思ったんだけど、こんなに早く実現するなんて感動だよ」緩んだ顔がさらに緩んでいく。
「おべんというだから簡単なものだよ、あまり期待しないでね」少し不安げな表情だ。
「大丈夫、僕の作る料理に比べたら何でも高級料理だよ」
「そうなの?」
「うん、一度食べて欲しいくらいさ、どんなに酷いか」
そう言った途端ひどい料理をニコニコ食べてくれている琴音さんの顔が浮かんできた。僕は少し後ろめたい気がする。
「じゃあ、明日作ってくるね」
「お願いします」
僕は帰り道で「新学期も悪くないかも」と独り言を漏らした。
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