隠れ家の不良美少女 177 走り出したキナコ
レコーディングが休憩となった。キナコはスタジオで鼻歌のように歌っている。
アレンジャーさんとバンドのメンバーはキナコの歌に演奏で参加し初めた。
「………何かが始まる♪………何かが始まる♪」
「キックとハイハットシンバルの音を頂戴!」アレンジャーさんが支持する。
ドラムはリズムを刻み始めた。
「シーケンスが欲しいなあ」またアレンジャーさんが支持する。
キーボードがピコピコとリズムに乗っかった。
「………何かが始まる♪うう〜………何かが始まる♪WHO〜」
「ベース参加して」アレンジャーさんの指示で厚みを増した。
「ギター、カッティング頂戴!」
『ジャキーン』ギターが心地よく響く。
キナコはみんなを見てグッと拳を上げた。
アレンジャーさんはニッコリと「はい、ここでブレイクね」演奏を止める。
「………恋が始まるよ♪………夢が始まるよ♪………全てが今、が始まるよ〜♪」
「了解!ここから転調でサビね」アレンジャーさんが支持する。
スタジオの空間を美しいメロディーと和音が満たした。
キナコは未来ちゃんをチラッと見た。
未来ちゃんはニッコリして「始まるよ〜♪」とコーラスを入れた。
キナコの曲が形になり始める。
それからもアレンジャーさんは細かい指示を出し、曲を完成へと導いた。
それを見た長谷川さんは「アルバムにもう一曲増えましたね」ニッコリそう言った。
キナコはこの一曲でバックバンドのメンバーを自分のバンドに変えた。
「キナコちゃん凄いわ」未来ちゃんは音がしそうに瞬きする。
それからのレコーディングはキナコの意見を中心に纏まり始めた。
「武道館が楽しみになってきましたね」長谷川さんも嬉しそうだ。
もはやキナコをコスプレアイドル的な目では誰も見ていない。
完全にキナコはアーティストとして走り始めたようだ。
俺は嬉しい反面、希和が少し遠くなった様な気がした。
レコーディングの間は都内のホテルに泊まることになっている。
俺はホテルの窓から広がる都内の夜景を見ていた。
希和は夜になると何もなかったように甘えてくる。
「友希さ〜ん、希和頑張ったからご褒美は?」
「そうだな、よく頑張った」
そう言って俺は希和を抱き寄せキスをした。
「えへへ………希和、幸せ」そう言って上目遣いで見てくる。
俺は思わず強く抱きしめた。