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星降る夜のセレナーデ 第90話 協力体制

先生にはすでに次の映画音楽の制作が待っている。吉崎修平監督は先生を気に入ったらしくまた、依頼が来ているのだ。すでに新しい作品の台本が届けられていた。
その結果、これまでの仕事は俺が引き継いで作っている。
随分慣れてきたが、やはり志音先生が必要だ。志音先生は、学校が終わると急いで帰ってくる。そしてスタジオへ入ってきた。

「モヒくん、今日はどんな曲?」

「こんな感じ………」俺は作りかけの曲を再生した。

「アニメのやつだよねえ…………もっと可愛い感じがいいんじゃない?」

「そうだねえ…………」俺は唇を噛んだ。

「おもちゃのピアノみたいな音はないの?」

「そういえば、トイピアノって言う音源があったような…………」俺は探した。

「あった、これだ!」すぐに立ち上げて音が出るようする。

「これはいいかも」志音先生はニッコリしてトイピアノを可愛らしく弾いてくれた。

曲はとてもいい感じになった。

「ありがとう志音先生」俺はペコリと頭を下げる、志音先生も嬉しそうだ。

「少し休憩したら?」志音ちゃんの提案でスタジオからリビングへ出てきた。

先生は電気ピアノの前で作曲しながら、新しい映画用の譜面を書いている。

「すみません、俺がスタジオを使いっぱなしで…………」

「真人くん、いいんだよ、おかげで私は映画の方に没頭できるんだから」そう言ってニッコリ微笑んでくれた。

「そうよ、真人くんのおかげでパパは別の仕事ができるのよ」美夜子さんも目をほそめ、微笑んでコーヒーを入れてくれる。

「志音先生のおかげで何とか仕事できてますけど…………………」俺は遠くを見る目になる。

「志音が手伝うのは嫌なの?」志音ちゃんが唇を尖らせて少し睨んだ。

「そんなことは無いけど、いつまでも1人で仕事できないのはどうなんだろう?…………」

「いいじゃん、志音が手伝いたいんだから」志音ちゃんは可愛く頬を膨らす。

「ありがとうございます」俺は志音ちゃんへ三つ指をついて頭を下げた。

「真人くん、そんなに気にしなくていいのよ、みんなで協力できるなんて素晴らしいじゃない」

美夜子さんもフォローしてくれている。俺はただただ感謝した。

デジタルの進歩はとても早い、サンプラーが登場して音源もクオリティが更にアップした。先生の希望で、サンプラー用のパソコンを数台用意することになった。
今度の映画音楽はかなり大ががりなオーケストラを再現するようだ。
先生の新たな挑戦に俺も興奮気味だ。

次の日曜にはまた秋葉原までパソコンや機材を買いに行く事になった。
もちろん小池さんも協力してくれる。
志音ちゃんも自分用のノートパソコンを買うらしく、一緒に出かけた。

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