隠れ家の不良美少女 217 兄が来た
俺と希和は本庄早稲田駅まで兄の翔を迎えに行った。
家を建て替えるため福岡から来てもらったのだ。
改札口で迎えて車に乗った。
「兄さん、遠くまで来てもらってご悪いね」
「何言ってんだよ、キナコちゃんの家を建てるんじゃないか、どこまでだって行くさ」笑っている。
「ありがとうございま〜す」希和は嬉しそうに言った。
家に到着すると希美子さんが待っていてくれた。
「遠路はるばるありがとうございます」希美子さんは深々と頭を下げる。
「こちらこそ、お仕事をいただきまして」兄はニッコリ頭を下げた。
中に入ると兄は簡単な図面とイラストを見せる。
「友希から聞いた要望を基に作った単なる一案なので、これをもとにしっかりといい家になるように完成させましょう」
「ありがとうございます」
希美子さんはお茶を入れると図面とイラストを見た。
「塀は覗けないように少し高めにしてあります、一階は車が2台入るシャッター付きのガレージがあります、玄関を入るとリビングのような部屋があり、来客をもてなせるように小さめですがキッチンが付いています。その奥には広い洋室があり、衣装を置いたり出来るようになっています。
2階は広いリビングがあり、アイランドキッチンにはカウンターが付いていて、朝は朝食を食べられますし、夜はお酒が飲めます。その奥には洋室が3部屋ありそれぞれにクローゼットが付いてます。そしてベランダが広めにしてあるので、周りに気にせず外に出られます。2階にはお風呂があり、トイレは一階と2階にあります。2階の上には広いロフトがあるので、歌や楽器の練習も出来ます、将来は子供達が遊べる部屋にしても良いと思います」兄は一挙に説明した。
希美子さんと希和は頷きながらじっと図面とイラストを見ている。
「お母さん、すごい家だねえ」希和は目を見開く。
「そうね、夢のお城みたいだわ」希美子さんも何度も目をパチパチさせ頷いた。
「友希、お前はここで暮らすのか?」唐突に質問してくる。
「今の所そう思ってる」
「やっぱりそうか………福岡には帰らないつもりだな」
「ごめん…………二人を置いて帰ることは出来ない」
「分かった…………母さんにはそう伝えとくよ」
「すみません、希美子さんが頭を下げた」
「御免なさい…………」希和も申し訳無さそうに頭を下げた。
兄はニッコリすると二人に向かって話した。
「謝る必要は全くないですよ、友希が幸せになる方を自分で選んだんですから」
「ありがとう兄さん」俺はゆっくり頭を下げる。
「引っ越しが終わったら教えてくれ、すぐにこの家を解体するから。偶然だけど父さんの友達が近くの深谷というところで家の解体業をやってるんだ、だからちょうど良かった」
「へえ〜、そうなんだ」俺は驚いた。
家の話が終わると、お酒が用意される。
兄は幼い頃の俺の話を希美子さんや希和に面白おかしく話している。
俺は冷や汗をかきながらいつもより多くお酒を飲んだ。
兄は近くのビジネスホテルに泊まった。明日はすぐに福岡へ帰る事になっているようだ。
俺は希和の部屋で横になった。
「友希さん、この部屋ともお別れなんだね」少し寂しそうに言った。