隠れ家の不良美少女 179 ついに決定!
次の日もレコーディングは続けられた。SONEレコードのアーティストから届いた曲だ。
DJドラゴンからノリが良くてカッコいいラップがキナコに捧げられた。
キナコは数時間で自分の物にして歌い切った。
バンドのメンバーはあっけにとられる。
さらにダンスグループA &Aのリーダーから2曲ダンスナンバーが上がってきた。
キナコは難なく歌ってしまった。
オケはコンピューターから出るので、バンドのメンバーは休憩しているようだ。
歌い終わったキナコはスタジオから出てくるとメンバーに言った。
「ねえ、ラップとダンスナンバーの時はみんな一緒に踊ってくれるんでしょう?」
「え〜!踊るんですか?…………」バンドのメンバーは固まっている。
「えっ?……じゃあ突っ立てるの?」キナコが不思議そうに聞く。
「…………教えていただければ参加します…………」メンバーは断る術を持っていないようだ。
「キナコちゃんお母さんに似てきたみたい」未来ちゃんがクスクス笑った。
「希美子さん譲りのプロ意識が芽生えてきたようだね」俺も笑った。
長谷川さんと友里香さんがスタジオに入ってくる。
「皆さん、武道館は急遽3ヶ月後の10月31日に決まりました」友里香さんが報告した。
「急な話ですね」俺は驚く。
「色々と検討した結果その日が良いと思いましてね」長谷川さんも頷いた。
「レコーディングも無事に終わりそうですし、なんとかCDの発売も間に合いそうです、それに前日から準備できる日が他に見当たらなかったので」友里香さんは説明した。
「今のペースなら大丈夫でしょう」長谷川さんが太鼓判を押す。
キナコは「はーい」軽く納得した。
バンドのメンバーはごくりと息をのんだ。
未来ちゃんは「ついに来ましたねえ」頷いている。
「ヤバイ!編集で寝れない日が続きそう」奏太くんは眉を寄せる。
もう後戻りは出来ないようだ。
レコーディングはやがてリハーサル中心へ変わっていく。
スタジオも鏡のあるリハーサルスタジオへ移った。