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星降る夜のセレナーデ 第111話 心の穴

俺は先生とスタジオで、ただ淡々と仕事を続けた。先生は少しため息が増えたような気がする。俺も明かに笑顔が減っている。

休憩になってリビングへ出てきた。美夜子さんは少し呆れた顔で二人を見ている。

「ねえ、パパも真人くんも毎日お通夜みたい、もう少し元気を出したら?」

「そうだねえ…………志音の存在は大きかったんだなあ………………」先生はため息まじりに漏らす。

「そうですね………………」俺も頷く。

「志音は留学してるだけよ、すぐに終わって元気に帰ってくるわよ」

「そうだねえ…………3年は長いなあ……………」先生は項垂れる。

「ですよねえ…………………」俺も項垂れた。

「重症ね」美夜子さんは呆れながらもコーヒーを出してくれた。

「志音が尊敬してる『とーたん』はどこへ行ったんでしょうね、もっと志音が必要にされたい、そんなモヒくんはどこへ行ったの?」

「「えっ……………」」先生と俺はビクッとなった。

「志音が帰ってきて今のとーたんとモヒくんを見たら悲しむわよ」美夜子さんは腕を組んで口をへの字にしている。

「だよねえ…………」「ですよねえ………」先生と俺は顔を見合わせる。

「頑張りますか真人くん」

「はい、頑張りましょう」

二人はコーヒーを飲み干し空元気でスタジオへ入って行った。

志音先生がいない事で俺は楽器が上手になった。いや上手になるしか無かったのだ。先生は楽器のコツを分かりやすく教えてくれる。
そしてほとんど曲作りは自分で出来るようになってきた。
早く一人で作曲できるようになりたいと思っていたが、実際にできるようになってもそれ程嬉しくはない。志音ちゃんと作っていた頃は楽しかったなあと、改めて思う。

もし、より深く音楽の勉強をした志音ちゃんが帰ってきたらどうなるんだろう?
また一緒に作ってくれるんだろうか?
寂しさと不安が入り乱れる。そして淡々と日々が過ぎていく。

耐えきれなくなって志音ちゃんへメールした。

『元気ですか?』

しばらくすると返信された。

『元気です』

「う〜……………」俺は頭を抱え込んだ。そこに、その文字にあの可愛い、そして慕ってくれた志音ちゃんの面影は無かった。

アリサちゃんからメールが来る。

『元気にしてる?』

『元気と言う言葉を忘れそうです』そう返す。

『寂しいだろうけど、頑張ってね』

『ありがとう、なんとか頑張ってみます』

そう答えた。

俺の部屋はため息でいっぱいになった。俺の居場所が無いくらいに。

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