隠れ家の不良美少女 26 オフィスにて
風邪が治って出勤した。
「影山ちゃん、悪かったな迷惑かけて」
「一瀬さん、無事に風邪が治って良かったですね」
「ああ……」
「私、お礼は一回飲みに連れてってくれたらチャラにしますよ」笑っている。
「そうだな……それくらいは覚悟してるよ」
「やった!じゃあ早速今夜がいいです」
「えっ!病み上がりに直ぐかよ」
「だって、善は急げって言うでしょう?」
「何が善なんだよ……まあいいか」
影山未来《かげやまみらい》は俺が卒業した大学の後輩で音楽サークルで歌っている。美人だし歌も上手い。
音楽サークルはイベントの大事なスタッフバンクになっている。
昔からサークルの一人がこのオフィスでアルバイトをして、スタッフのマネージメントをしている。俺もたまにサークルに顔を出したりしている。
仕事が終わり二人で居酒屋へ行った。
しばらく飲んでいると、突然質問してくる。
「一瀬さんって、あの伝説の歌姫『桜子』さんとお付き合いしてたんですか?」
「その話はしたくないなあ」そっぽを向いた。
「なるほど……納得しました、噂が本当か気になってたんで………」
「どう納得したんだよ」
「特別な関係だったと納得しました」
「何も言ってないぜ」
「その顔で解りました」
「…………」
「ハイボールをもう一杯お願いします」
「ペース早いけど大丈夫か?」
「大丈夫です、それよりいつも行ってるガレージハウスが何処にあるのか教えてもらえませんか?」
「教えたらどうするんだよ」
「遊びに行きたいと思ってます」
「じゃあ絶対に教えない」
「どうしてですか?」
「孤独を楽しむ場所だからさ」
「孤独って楽しいですか?」
「まあそれなりに………」
「やっぱり桜子さんが忘れられないんですね?」
「何を言い出すかと思ったら、そんな事か」
「だって……彼女とか作らないのも……」
「彼女は一人居るぜ」
「えっ、彼女が居るんですか?」ハイボールを少し吹き出してこっちを見た。
「彼女(仮)だけどな」
「何ですか、その(仮)って言うのは」
「だから(仮)だよ」
「じゃあ私も彼女(仮)にしてくださいよ」
「二人もいたら大変だから勘弁してくれ」
「(仮)にもしてくれないんですか?」
「俺なんかよりもっといい人がたくさんいるだろう、未来ちゃんは美人だし性格もいいし……」
「どうして私じゃあダメなんですか?」
「俺なんかに関わらない方がいいぞ」
「やっぱり桜子さんが忘れられないんですね」
「俺はもう恋愛はしないと思う…………」
「私諦めませんから……ハイボールもう一杯!」
「飲みすぎるなよ」
「飲まずにはいられませんよ全く」
フラフラになった彼女を何とかタクシーに乗せて送り出した。