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星降る夜のセレナーデ 第93話ライバル? 

リビングは重たい空気が溜まっている。そこへ志音ちゃんが帰ってきた。

「ただいま〜、おやつ…………」由美香ちゃんを見て固まる。

「こんにちは志音ちゃん」由美香は頭を下げた。

「こんにちは……………」志音は軽く会釈すると、急いで自分の部屋へ逃げて行った。

「先生!ちょと確認してください」真人くんがスタジオから呼んだ。

「は〜い、すぐに行くよ」

「後はよろしく」そう言ってパパはスタジオへ逃げるように行ってしまった。

リビングは2人になってまたさらに重い空気が立ち込める。

「私、『潮騒のシンフォニー』を聞かせていただきました、とても素晴らしい歌ですよね」俯きながらポツリと口を開く。

「そう…………この曲はいつか志音に歌わせようってパパと話してたのよ」

「そうだったんですか、じゃあ私が歌うのは無理ですね」あきらめた表情になった。

「ただ、本人には何も聞いてないからねえ」私は志音ちゃんの部屋を見る。

「私、志音ちゃんに嫌われてるみたいなんです」由美香ちゃんも志音ちゃんの部屋の方を見た。

「そんな事は無いわよ、ただ……………」

「小池さんから聞きましたけど、志音ちゃんは真人くんが好きなんじゃ無いかと……………」

「そうね、だからライバルだと思ってるかもね」私は少しだけ笑った。

「私はライバルじゃないです、それに志音ちゃんの方が可愛いし………………」

話していると、部屋のドアがそっと開いた。

志音ちゃんは部屋のドアをそっと開けて、眉を寄せ私を見た。

「ママ〜、お腹すいたよ〜」切なそうに言った。

「こっちにいらっしゃい、おやつを一緒に食べましょう」私はニッコリした。

「うん…………」志音ちゃんは由美香ちゃんをチラチラ見ながら恐る恐る出て来る。

みんなでラスクを食べながらティータイムとなった。

「ねえ志音ちゃん、昔パパとママで作った歌があるの」私は話す事にした。

「ん………」志音は何度も瞬きしている。

「ママが再デビューするためにパパと作った曲があるのよ」

「潮騒のシンフォニーの事?」

「えっ!知ってるの志音ちゃん?」

「うん、パパの宝箱に入ってたから何度も聞いたよ、あれはとっても良い歌だよね」食べながら何度も頷く。

「そうなの、パパが教えたの?」

「ううん、聞いてたことはパパは知らないんじゃないかなあ……………」

「パパの秘密はダダ漏れね」私は笑った。

「あの曲は志音ちゃんが歌いたくなったら歌わせようって、パパと話してたんだけど」

「そうなんだ………でも志音、歌は無理だよ、ママみたいに良い声じゃないもの」

「そんな事ないわ、志音も良い声よ」

「う〜ん…………やっぱ無理かも…………」

「そう…………」私は少し考えた。

「志音はお兄ちゃんのお手伝いする方が好き」さらにラスクをもう一個取った。

「私も志音ちゃんと真人さんを応援します」由美香ちゃんがニッコリした。

「えっ……………」志音はラスクを持ったまま固まる。

「志音ちゃん、あなた小池さんの前で真人くんに甘えたでしょう?」

「えっ!…………」ラスクを持った手が少し震える。

「バレてるわよ」私は呆れた表情になった。

「そうなの…………」俯いた。

「志音ちゃん、私は志音ちゃんと真人くんを応援するわ、だってとってもお似合いだもの」ニッコリしている。

「そうなの?…………」志音ちゃんは頬をほんのり赤くする。

「志音ちゃん、私に『潮騒のシンフォニー』を歌わさせていただけませんか?」由美香ちゃんが手をついて頭を下げる。

しばらく考えていた志音は、少しニッコリすると「いいよ」と頷いた。

「ありがとうございます」由美香ちゃんは志音の手を握り嬉しそうに微笑んだ。

志音ちゃんはキョトンとした顔をしたが、徐々に笑顔となった。

「よかったわね志音ちゃん、ライバルが1人減って」私は微笑んだ。

「ママはやっぱり解ってたんだね」上目遣いで私を見る。

「あれほど真人くんへ一途になってるのを見て、分からなかったらダメでしょう」呆れ顔で言った。

「きっとこれから真人くんは有名になるかもしれないけど、何かあったらすぐに志音ちゃんへ報告するわ」由美香ちゃんはニッコリ頷く。

「本当?」志音ちゃんはニッコリすると携帯を出して由美香ちゃんと繋がった。

「えへへ…………」志音ちゃんはまるでゲームの一面をクリアしたような清々しい表情になった。

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