隠れ家の不良美少女 130 会場設営
結婚式の前々日になり会場設営が始まった。
高崎アートシアターの搬入口には東京ステージプランの機材車が何台も並んでいる。
9時の開場と共に多くの機材が持ち込まれた。
コンサートができる程の機材が次々に運び込まれる。
ステージが作られ、トラスが組み立てられていく。
ステージ背後には大型スクリーンが組み込まれている。
慣れたスタッフによって照明や音響機材も設置されていく。
ステージの両サイドには会場から見えないようにパテーションが置かれ、沢山の机に所狭しとモニターが並び、映像を切り替えるスイッチャーが数多く設置された。
このシステムでリアルタイム配信が世界に向けて配信される。
またマサキの支社や関連会社からの映像も瞬時にステージのスクリーンへ映し出されるようになっている。
俺はこれ程の配信システムを見たことが無い。
舞台監督の橘さんは図面を見ながら的確な指示を送っている。
小宮さんも来てくた。
進行状況を見ながら会場を設営している。
「お疲れ、友希くん、すごいセットだねえ、結婚式とは思えないよ」少し笑った。
「お疲れ様です、ご協力ありがとうございます」
「お仕事ありがとうございます」ニッコリ会釈した。
「俺の方は全体の進行だから会場の飲食ブースを進めさせてもらうよ」
「ありがとうございます、宜しくお願いします」
ステージ前から階段を降りると豪華な新郎新婦席、少し離れて来賓用のテーブルと椅子が用意されている。
両サイドには洋食や和食、寿司屋、麺屋などが立ち並ぶ。
来賓用席の背後にはテーブルが並び立食形式でマサキの社員は自由に参加出来るようになっている。
一体どれ位の人数が入るのだろう、事前のアンケートで大まかな人数は出ているが、恐らく大幅に膨れ上がることは予想された。
上手側飲食コーナーの呼び物は『たかじょ文化祭コーナー』だ、綾乃さんが高峰女子高校時代に文化祭で最高の売り上げ記録を出した焼きそばやカレー、ホットドッグなどが食べられる。
現役の女子高生達が応援で出店してくれるのだ。
下手側の飲食コーナーの呼び物は新くんの生まれ育った田舎の『海の幸コーナー』だ。
幼い頃、新くんがとても影響を受けた漁師の叔父さんが直送してくれる海産物が食べられる。
将輝社長の友人であるお寿司屋さんが田舎料理を忠実に再現してくれる。
実家である果樹園からのデザート付きだ。
午後になって新くんがやって来た。
「お疲れさま、友希くん」
新くんは少しだけ歩き方がぎこちない様な気がした。
「お疲れ様、体は大丈夫かい?」
「ああ、もう大丈夫だよ」微笑んだ。
「歩き方が不自然じゃない?」
「これは緊張のせいだよ」
「そうなんだ」俺はクスリと笑った。
「なにしろ俺は一般人だからね、こんなステージに立つのかと思ったら足がガクガクしてるのさ」苦笑いしている。
「確かにここに立ってプレゼンテーションをすると思うと俺だって足がすくむよ」
「だろう」新くんは何度も頷く。
「しかし、頑張るしか無いよね、ここまで来ると」
「何か緊張を無くす方法は無いの?」新くんは眉を寄せて聞いた。
「う〜ん…………多分無い」
「やっぱりね」
「でもプレゼンの準備できてるんだろ?」
「家では綾乃の前でプレゼンのリハーサルをしたよ」
「綾乃さんの感想は?」
「天才だって」
「じゃあ何も心配ないね」俺は笑った。
新くんも力なく笑った。
夕方になって殆どの仕込み(セッティング)が終わった。
そして機材のチェックが始まる。
「チェック・ワンツウー」会場に音声の確認が鳴り響く。
同時に照明もシューティング(設定)が始まる。
スモークがフワッと広がりムービングライトが動き回る、色の付いた光の線が忙しそうにあちこちを照らした。
コンサートの前にはよく見る光景だか、結婚式ではまずあり得ない光景だ。
夜9時の閉館ギリギリまで作業は続いた。